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» 2015年01月27日 08時00分 公開

海外進出企業に学ぶこれからの戦い方:恐竜は環境変化に適応できるか?――鉄鋼業界の雄、新日鐵住金のグローバル対応 (2/3)

[井上浩二、小林知巳(シンスター),ITmedia]

 しかし、新日鐵の主要顧客である自動車メーカーが、鋼板の現地調達を加速させた結果、顧客ニーズへの対応を通じてアジアにも品質面で力を付ける企業が出現してきた。今や宝鋼集団やポスコは、自動車製造で多く使用されるハイテン(注4)でも日本勢と変わらない品質を実現しているのである。その中でも、ポスコは侮れない存在となっており、新日鐵住金もベンチマークの対象として強く意識しているようである。

 2013年度の営業利益率と純利益額では、新日鐵住金がそれぞれ5.4%、2427億円と、ポスコの4.8%、1355億円を上回るものの、鉄鋼事業での稼ぐ力を示す「鉄1トン当たり利益」では5900円とポスコの6400円を下回る。負債資本倍率や格付けでもポスコの方が優位にある(注5)。さらに、自動車業界の主戦場である北・南米の生産拠点として注視されるメキシコにおいて、ポスコは新日鐵住金の牙城である日系自動車メーカーを攻略し始めている。同社は、日系自動車メーカーの工場近くにいち早く鋼板倉庫まで設置して供給ルートを築き、マツダのメキシコ工場で使用する鋼板の6割を獲得し、日産自動車の現地工場からも最重要パートナーと見なされる地位を築いている(注6)。

 このような市場・競合の環境変化が新日鐵住金の重い腰を上げさせ、本格的なグローバル展開へと背中を押しているのである。

現地に人材を投入して技術を移転する「ハンズオン」スタイルへの転換

 最近の新日鐵住金の海外展開形態は、明らかに過去の「合弁会社」形式とは異なってきている。それは、本社の社員が現地の経営や人材育成に深く関与する「ハンズオン」スタイルをとっている点だ。まず、以前から合弁会社でビジネスを展開しているアジア地域を見てみると、最近になって新たな生産拠点の展開を加速し始めていることが分かる。

 そこでは、自社の中核技術を現地拠点に浸透させるための技術支援チームを組み、現地の技術者を一から育てる取り組みを開始している。例えば、タイ南部の工場では、日本のベテラン社員が実際の生産設備を使った作業手順や工程管理といった基礎的な知識ばかりでなく、トラブルへの対処手法などまで、現地技術者に対して実地訓練を施している。さらに、現地技術者は日本国内の製鉄所に一定期間派遣され、高品質な鋼板の生産ノウハウを体得する場まで用意している(注7)。

 強みであった品質において競合の追い上げを受ける新日鐵住金は、経験豊富な人材を海外に派遣し、合弁パートナー任せではなく自社のコントロールの元で海外展開を加速する戦略に切り替えたのである。次に、ポスコに後れを取り始めていた北・南米を見てみると、更に大胆な手を打っていることが分かる。

 リーマンショック以前には最大の脅威と目されていたアルセロール・ミッタル社と共同で、約15億ドルを投じて独のティッセン・クルップ社から米国アラバマ州の工場を買収した。昨日の敵を今日のパートナーとし、メキシコへの製品供給でも連携するという、思い切った打ち手で巻き返しに出たのである。この共同買収した工場でも、ドイツ仕様の工場を新日鐵住金流の最新鋭工場に作り替えるために、工場長経験者と部長級を合わせて15人も送り込むという異例の体制を敷き、「ハンズオン」スタイルの展開を図っている(注8)。このような取り組みは、同社の海外事業への本格的なコミットメントの表れであり、これまでとは明らかに異なるグローバル戦略に舵を切り始めたことの一端と言えるだろう。

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