価格や性能だけの差別化は過去――問題解決型コミュニティで消費者の心をつかむ(2/2 ページ)

» 2015年03月09日 08時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 例えば、スポーツ用品メーカーのナイキでは、有名プロ選手に使ってもらうことで商品のすばらしさをアピールしている。またITを活用して一般のランナーも参加できるユーザーコミュニティーを創出し、世界中の人がどれだけ同じ体験をしているかを共有することでブランド価値を向上させている。

 企業が担ってきたコミュニケーションの一部を消費者に代行させる仕組みが「協働マーケティング」である。これまでにコミュニティの創出に取り組んだ企業も多いが、コミュニティは従業員の集まりではなく、消費者の集まりなのでコントロールが困難である。そのため対応を間違えると炎上という問題が発生する。

 「企業のコミュニケーションは、"いいでしょ!すごいでしょ!"という押しつけ的なものになってしまいがちなため反発する意見も出てしまう。意見は対立を生みやすく、質問は協調・融和を促進する。OKWaveでは、Q&Aコミュニティを運営してきた経験から、"問題解決型コミュニティ"が重要であると考えている」(佐藤氏)

サイレントカスタマーの声を生かす

 OKWaveは、会員数250万人、月間利用者数4000万人以上、Q&Aの総数は3000万件、月間アクセス数は1億1000万PVに上る。以前はほとんどがPCからのアクセスだったが、現在ではモバイルからの利用が圧倒的に多くなっている。OKWaveのアンケートでは、85%の利用者が問題を解決できたと答えている。

 佐藤氏は、「マニュアル的な回答ではなく、実際に利用している消費者が経験に基づいて回答することで問題解決率が高くなっている。1つの質問に平均3〜5つ程度の回答があるが、その中から"ベストアンサー"を選ぶことができる。5つの回答からどれをベストアンサーに選ぶのかも企業にとって大きなヒントになる」と話す。

 消費者は企業のウェブサイトを商品の確認のために見ているだけで、実際に商品を選択するためには、経験者の声を重視する。そのため消費者の本当の声を集めることは困難である。OKWaveでは、質問の内容や回答の内容、お礼・補足内容、ユーザー属性、アクセスログなど、悩みの発生から解決までを分析することでユーザーの本音を抽出できる。

 例えば子育ての悩みなどで、知り合いにはなかなか相談しにくい時がある。OKWaveであれば、親にも、友人にも相談しにくいことでも、同じ悩みを抱えている人が回答してくれる安心感があるので本音で聞きやすい特長がある。このQ&Aを分析することで、ユーザーの本音を企業に提供することができる。

 「企業のマーケティングでは、かっこいい言葉で提案をするが、この言葉はユーザーには響かない。企業コミュニケーションで使っている言葉ではなく、ユーザー同士が使っている平たく優しい言葉が必要。また企業のアンケートは、答えを誘導する質問になるために、本音を引き出すことが難しい」(佐藤氏)

作り手よりも使い手が知っている

 作り手よりも使い手が知っていることは意外に多い。例えば、「ある名曲のギターソロの音は、どのエフェクターを使えば出せるのか?」という質問があった場合、エフェクターメーカーの担当者では、設定までを答えることは難しい。しかし実際に使っている人人であれば、「私はこの設定で出している」と回答することができる。回答を想像できる分野もあるが、意外に気がつかなかった回答もあり、興味深いデータが集まってくる。

 佐藤氏は、「Q&Aコミュニティ活性化のポイントは"恩送り"である。恩返しは恩を受けた人に恩を返すものだが、恩送りは恩を受けた人が、次の人を助けようと思う気持ちである。恩送りが自然にできるコミュニティを企業サポートに活用することで、より一層の顧客満足度向上が期待できる」と話している。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆