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» 2015年07月29日 08時00分 UPDATE

「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記:大切なのはブレないことと成し遂げる信念――フジテレビの「LIFE IS LIVE」を支える (1/2)

「LIFE IS LIVE」をテーマに、テレビの命である「いまを伝えること(LIVE)」で、視聴者とともに生きていくこと(LIFE)を目指すフジテレビ。新しいフジテレビの舞台裏を支えるITシステムへの挑戦をIT Leaderが語る。

[聞き手:重富俊二(ガートナー ジャパン)、文:山下竜大,ITmedia]

 近年、放送業界はインターネットメディアの出現により大きく変革している。テレビ局の使命は「よいコンテンツを創る」ことに変わりはないが、今後さまざまな形態で放送が変化する中、ITの力でフジテレビジョン(フジテレビ)のみならず、FNS(フジネットワーク)系列として、全国の視聴者に常に新しい形の番組を届けるために貢献していかなければならない。そのためには、新しいデジタル時代のテレビ業界を担う、"デジタル・テレビパーソン"の育成が急務といえる。

 フジテレビへの入社から約30年、技術の現場を歩き続け、2011年6月より情報システム局長、2014年に執行役員を務める吉本治氏に、制作現場の経験しかないIT Leaderが、いかにフジテレビのIT戦略を考え、悩み、そして"フジテレビらしく"楽しみながらIT化を推進しているのか話を聞いた。

楽しそうだからフジテレビに入社

――まずは、なぜフジテレビに入社したのか。

150729yoshimoto.jpg フジテレビ 執行役員 情報システム局長 吉本治氏

 昔から音楽が好きで、学生時代にバンドをはじめた。当時はニューミュージックの出はじめの時期で、女性ボーカルを中心にした編成でスタート。音楽メーカーが主催するコンテストの神奈川県代表になった時に、コンテストを中継していたのがフジテレビだった。当時テレビ番組の制作現場を見て「これでお金がもらえるのだったら楽しい」と思ったのがフジテレビに応募したきっかけだった。

――フジテレビでのキャリアについてうかがいたい。

 フジテレビには、一般採用、技術採用、アナウンス、美術採用の4種類の職種の採用があるが、技術採用で入社した。1982年の入社以来、2011年6月に情報システム局に異動するまでは技術の現場を歩いてきた。特に30代、40代は、フジテレビが3大スポーツと呼んでいる、オリンピック、ワールドカップ、F1グランプリの海外中継を数多く担当した。中でもF1グランプリの中継は最も長く、年に16戦程度、約15年担当した。

 当初、F1グランプリの中継で、何がたいへんだったかといえば時差の問題である。1987年より、日本の鈴鹿サーキットで開催されるF1日本グランプリを含む全戦をフジテレビが中継するようになったが、当時の連絡手段といえば電話だけで、一部でFAXを利用する程度だった。いまのように携帯電話もなく、時差で連絡が取れない、離席で電話に出られないなど、とにかく連絡を取るのに苦労した。

 そのためF1グランプリを担当していた15年間のITの進化には、相当に助けられている。携帯電話の普及はもちろんだが、特に電子メールには助けられた。当初は英国のエンジニアが電子メールの存在を教えてくれたが、設定が非常に複雑で難しかった。いまのようにWi-Fiなどなかったので、モデムでPCをネットワークに接続するのが出張の最初の仕事だった。

 行く先々で事件やトラブルが起きるので、F1グランプリを経験した何年かで、ほとんどのアクシデントに対応できる図太さが身についた。何か起きたときに10通り程度の解決策は思いつく。それからとりあえず、ビールを1杯飲んでから考えようかと……(笑)。

 例えばある年のフランスグランプリでは、ストライキをやっているために空港からサーキットまでの道が封鎖されていた。その日のうちにサーキットに着かなければ中継が間に合わない。そこで、民間の救急車を貸し切って機材をサーキットに運んだこともあった。翌日の新聞に日本のテレビ局が救急車で放送機材を運んだという記事が話題になったが、時にはこのような判断が必要な現場だった。

入社30年で門外漢のITの世界へ

――情報システム局に異動した経緯は

 入社から約30年の現場生活で、このまま最後まで現場で終わると思っていた。しかし2011年6月の人事異動で、突然、情報システム局への異動を命じられた。それまで、社内に情報システム局があるということは知っていたが、具体的に何をしているところかはよく知らなかった。

 なぜ情報システム局に異動になったのか、その理由はよく分からないが、情報システム局は中途入社のIT専門家が多く、専門知識の固まりのようなところだった。そこの責任者に、自分が抜擢されたことには、何らかの意味があるだろうとは考え、まずは全社員に情報システムという便利な道具があることを知らしめるのを仕事にしようと切り替えた。

――情報システム局内の反応はどうだったのか?

 制作現場から異動してきたのは知っているので、戦々恐々の人もいれば、テレビ局っぽい人が来たと歓迎する人もいた。もちろん、こちらも気をつかった。まずは「会社の便利化プロジェクト」の実施だ。会社の便利化プロジェクトは、目に見えるものから分かりやすく変えていこうという取り組みだ。

 情報システム局は、社内のイントラネットを通じフジテレビ全社員に毎日アピールするチャンスがある局なのだから、身近な仕組みのデザインから機能まですべてを変更することにした。全社員に向いた情報システム局を作ることが最初の使命だと考えた。

 最初にやりたかったのは、社内メールの切り替えである。第1歩として、オフィスでも、家でも、メールが使えて、仕事ができる環境の実現を目指した。セキュリティの問題もあるが、それを解決し、使いやすさを優先して、スマートフォンなどからも使えるようにした。

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