<新連載>なぜ今、「イノベーション」が必要なのか?日本式イノベーションの起こし方(2/2 ページ)

» 2015年11月10日 08時00分 公開
[井上功ITmedia]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

日本式のイノベーション創出、4つのポイント

(1)イノベーターはエリート社員ではなく、「ヨソ者」「バカ者」「若者」。

 先ず必要なのは、イノベーターです。イノベーターは決してエリート社員ではありません。「ヨソ者」、「バカ者」、「若者」はイノベーターのキーワードです。彼らに共通して見られるのが、おどろおどろしい「情念」と「行動」です。イノベーションを起こすとき、さまざまな局面で有形無形の抵抗や圧力に遭遇します。そんなとき、自分が思いつき考え抜いたイノベーションを、誰に何を言われようとやる、徹底して前に進める、最後は関係者を根負けさせる、といった情念と行動がイノベーターには不可欠です。

(2)部下のイノベーションを成功に導く、「ノリ」「盛り上げる」」上司が必要。

 イノベーションはイノベーターの個人的で独善的な思いや行動から始まることがほとんどです。「どうしても必要」「あったらいいな」「困っている人を救える」・・・。イノベーションの基点となる「不」は人々に根ざしていて、それに気づくのはあくまでも個人です。しかし、個人の頭脳の中で「不」の解消を磨き切ったとしても、イノベーションはおきません。異なる観点やものの見方をする人たちが、アイデアに「ノリ」、「共感」し、ときには現実を突きつけることが求められます。イノベーションをマネジメントする人です。このマネージャの力を借りて、イノベーションが磨かれ、社会に普及・波及していくのです。

(3)イノベーションを起こす組織のポイントは、「プロセス」「資源」「認知・称賛」。

 「情念」で「行動」するイノベーターと、彼らに「ノリ」「盛り上げる」マネージャが、イノベーションを興すために、組織側がしなければいけないことがあります。イノベーションが湧きおこり磨かれる「プロセス」をつくり、「資源」を投下し、イノベーションに対して「認知・称賛」を続けることです。「プロセス」とは、場と解釈しても構いません。通常の事業推進とは異なる場を用意し、そこに「資源」すなわち経営資源を投入します。イノベーションが少しでも前に進んだら、「認知・称賛」を絶やさない。それには、組織の力が必要です。手当てし、補強し、支援する。人事制度などで社員の行動を促すのもいいでしょう。

(4)経営者は「慣行の外」に出る

 締めは経営者です。組織の中からイノベーションを起こすためには、事業の最終責任者である経営者が「慣行の外」に出なければいけません。「慣行」とは、企業の事業推進に関わる全てのことです。具体的には理念やビジョン、戦略や方針、意志決定の基準や人事制度、情報システムなどの仕組み、それらに基づく行動、関係するお客さまやパートナー企業、工場や販売拠点・代理店、コミュニケーション自体、そして商品やサービスそのものも慣行といえます。つまり、事業そのものが慣行なのです。経営者自らがさまざまな「慣行の外」に出て、イノベーターやマネージャを支援することが必要なのです。

 実はわれわれも驚いたのですが、これらはジョブズ自身と、彼がつくりあげたアップルにあてはまることばかりなのです。「イノベーションが次々に湧き起こるアップルのような組織は、ジョブズなくてもつくれる。しかも日本式で」こう主張したいところです。次回以降、上記(1)〜(4)を、順を追って考察していきます。自ら変化を創りだし、ビジネスのブレークスルーを生み出し、組織の中からイノベーションを起こそうではありませんか。

著者プロフィール:井上 功(こう)

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ エグゼクティブプランナー

1986年リクルート入社、企業の採用支援、組織活性化業務に従事。2001年、HCソリューショングループの立ち上げを実施。以来11年間、リクルートで人と組織の領域のコンサルティングに携わる。2012年より現職。イノベーション支援領域では、イノベーション人材の可視化、人材開発、組織開発、経営指標づくり、組織文化の可視化などに取り組む。

著書:「リクルートの現場力」、「なぜエリート社員がリーダーになると、イノベーションは失敗するのか」(ダイヤモンド社)


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆