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» 2015年11月25日 08時00分 UPDATE

ITmedia エグゼクティブセミナーリポート:ワークスタイル変革はビジョンや環境、文化の改革とIT活用で

これまで多くの企業にとって、働き方の変革は、一部の社員を対象にした在宅勤務制度のように極めて限定的な取り組みだった。しかし、もはや単なる福利厚生でなく、優れた人材の確保や生産性の向上など、企業の成長を支える「経営戦略」として取り組まれようとしている。

[山下竜大,ITmedia]

 10月20日「人と組織にもっと活力を、働くすべての人のためのワークスタイル変革」をテーマに第33回 ITmedia エグゼクティブセミナーを開催。ワークスタイル変革に取り組む先進企業から、経営戦略として取り組む新たな働き方を学ぶ。

「ワークスタイル変革」への挑戦

151125suzuta3.jpg コニカミノルタビジネスソリューションズ 取締役 マーケティング本部長 鈴田透氏

 基調講演に登場したコニカミノルタビジネスソリューションズ 取締役 マーケティング本部長の鈴田透氏は、経営戦略として取り組んでいるワークスタイル変革への挑戦について、「移転を機会とした新しいワークスタイルへの取り組み」「スパイラルアップのための継続した取り組み」「経営視点の効果と経営者の役割」の3つのパートで紹介した。

 コニカミノルタビジネスソリューションズがワークスタイル変革に取り組むきっかけとなったのが、オフィスの移転である。移転前はオフィスが11フロアに分散し、コミュニケーションに課題があった。また社員の3分の1以上が営業担当者で日中は不在のためコスト効率も悪かった。そこで2014年8月に、ワンフロアで全体の見渡せるオフィスに本社を移転した。

 新しいオフィスでは、座席数を3割削減したほか、フリーアドレスや多様な座席の配置など、ワークスタイルに応じて座る場所を選べるオープンなレイアウトになっている。鈴田氏は、「部門を越えた自由でスピーディな情報共有やムダを省いた働き方、スムーズな会議招集など、働く場は大きく変わりました」と話す。

 しかしオフィスの移転は、ワークスタイル変革の手段に過ぎない。本当のワークスタイル変革はこれからで、本来の目的である、グローバル競争に打ち勝てる労働生産性の実現であり、競争力強化にかかわる時間配分の向上である。また人材活用のために、多様な社員のニーズにも応えなければならないなど、継続した取り組みを行っている。

 この結果、オフィススペースを25%、紙資源を70%、収納庫を60%削減したほか、見せるオフィスを実現。アンケートでは、社員の86%が「お客様を積極的に招きたい」と答え、オフィスを商談の武器とすることで、2015年度は、移転前の2013年度に比べ、オフィス改革のビジネスが案件数で1.7倍、売り上げで2.5倍という成果を上げている。

 ワークスタイル変革では、経営者の役割も重要になる。

「トップからの明確なメッセージとして"オフィスの移転は手段、目的はワークスタイル変革、紙保存ゼロ、間仕切りは作らない、どこに座ってもいい"という宣言を出した。また、社員の自主性を尊重しモチベーションの向上にも配慮している。そして、自らがワークスタイル変革を推進し、会議革新もトップが集まる会議からスタート、トップを交えたワークスタイル変革に関する会議を毎週行うなど、トップがリードしている」(鈴田氏)

 鈴田氏は、「スタートして1年足らず。まだ始まったばかりだが"ワークスタイル・デザイン・カンパニー"というビジョンを掲げ、自らが生産性、創造性を高める働き方を実践し、それをお客さまに提案、提供し、感動してもらえる企業になることを目指している。ワークスタイル変革は、その一環となるもの。」と締めくくった。

社員満足度と業務効率化を両立

151125oyodu2.jpg 日本マイクロソフト エグゼクティブアドバイザー 小柳津篤氏

 日本マイクロソフト エグゼクティブアドバイザーの小柳津篤氏は、社員の満足度だけではない、「業務効率」の大幅な改善を実現する日本マイクロソフトの働き方を紹介した。日本マイクロソフトでは、2011年〜2013年に自社単独でテレワークの日を実施してきた。2013年よりこの取り組みをテレワーク週間に拡大し、さらに賛同企業を募集して、32法人が賛同。テレワーク週間の賛同企業は、2015年には651社に拡大している。

 小柳津氏は、「マイクロソフトのテレワークの日の取り組みが、約5年を経て、総務省、経済産業省、厚生労働省、国土交通省の推進する"テレワーク月間(2015年11月)の実現に貢献しています」と語る。ただし、一般的なテレワークとマイクロソフトのテレワークは、大きく異なっている。一般的なテレワークは、たとえば育児休暇のような「一部の社員」の「ある局面」を支援するために仕事を切り出して自宅で行うものである。

 一方、マイクロソフトのテレワークは、「すべての社員」が「毎日」、必要なときに、必要な人と、必要な対話・情報交換を行うものと定義されている。

「いつでも、どこでも、だれとでも、効率よく、働きやすい環境を実現するためには、オフィスの改善とモバイルの導入による"効率性・利便性"の追求はもちろん、労務管理と情報管理の確立による"安心・安全"の実現が不可欠だ」(小柳津氏)

 特に重要なのは、情報管理と労務管理でこの2つのルールが確立できてこそ、いつでも、どこでも仕事ができる。情報管理では、会社のポリシー、情報管理と保護、紛失・盗難の対処、各種監査などのルールが必要。一方、労務管理では、雇用契約、就業時間、目標・進捗管理、評価制度などのルールが必要。これらのルールは、性善説で考えず、明文化して共有することが重要になる。

 このルールに基づいて利用するシステムは、非常にシンプル。すべてのアプリケーション、データ、コミュニケーションは、クラウド上に抽象化され、社員はアプリケーションやデータの場所を意識することなく、ネットワークにつなぐだけで、仕事に必要なすべての機能を、いつでも、どこでも利用できる。またオフィス環境も、集中レベルに応じたゾーニング、多目的に使えるオープンスペースなどで、居心地の良さが重要になる。

 ワークスタイルの変革により、ワークライフバランス満足度を40%、事業生産性を26%、働きがいのある会社を7%、それぞれ向上した。一方、残業時間を5%、旅費・交通費を20%、女性の離職率を40%、紙の利用を49%、それぞれ低減している。小柳津氏は、「事業生産性の向上は重要だが、社員満足度が伴わなければ継続しない。その意味で、社員の満足度の向上や残業時間、離職率の低減にも心を配る必要がある」と話している。

クライアント仮想化で実現するワークスタイル変革

151225shinbori.jpg 新日鉄住金ソリューションズ ITインフラソリューション事業本部 事業企画推進部 プロフェッショナル 新堀徹氏

 新日鉄住金ソリューションズ ITインフラソリューション事業本部 事業企画推進部 プロフェッショナルの新堀徹氏は、大規模デスクトップ仮想化サービス「M3DaaS@absonne(エムキューブダース・アット・アブソンヌ)」を活用したワークスタイル変革の実現について講演した。

 スマートデバイスや個人の端末を業務で利用するBYOD(Bring your own device)などのデバイスの多様化、オフィスだけでなく外出先や自宅などで仕事をする利用シーンの多様化により、セキュリティ対策の複雑化、運用管理の煩雑化、コストの増加など、端末管理の問題がワークスタイル変革を阻害する要因となっている。

 そこで、守るべきものは端末ではなく、「業務システム」と「データ」であると発想を転換することで、ワークスタイルの変革は現実味を帯びてくる。新堀氏は、「これまではPC全体をセキュリティ対策する"クリーンルーム"の発想だった。これからは、作業領域のみをセキュリティ対策する"グローブボックス"の発想が必要だ」と話す。

 アプリケーションやデータをサーバー上で処理し、クライアントにデータを残さないことで、場所やデバイスに依存することなく、高いセキュリティでいつでもどこでもアクセスできワークスタイル変革が実現しやすくなる。端末環境に依存しないので端末管理の負荷を軽減し、運用管理コストを削減することもできる。

 「デスクトップ仮想化は、標的型攻撃などのセキュリティ対策や、Windows/IEのサポートポリシーの変更に対する業務アプリケーションの延命などにも応用が可能。具体的なソリューションとして提供しているM3DaaS@absonneは全日本空輸、資生堂、ローソン、丸紅で導入されている。これからはITが売り上げに直結する時代なので、情シス部門は経営戦略に近い部分の提案、支援に力を発揮してもらい、手間の掛るインフラ周り、端末の管理、運用はわれわれのようなSIerに任せてほしい」(新堀氏)

ワークスタイル変革にはスマートデバイスソリューション

151225araya2.jpg  NECキャピタルソリューション ICTサービスオペレーション部 シニアディレクター 荒谷茂伸氏

 NECキャピタルソリューション ICTサービスオペレーション部 シニアディレクターの荒谷茂伸氏は、リース会社の特長を生かしたワークスタイル変革を実現するスマートデバイスソリューションを、デモを交えて紹介した。荒谷氏は、「ワークスタイル変革を実現するためには、テクノロジーだけでなく、経営の判断が必要だ」と話す。

 ワークスタイル変革には、多くのメリットがあるが、既存のインフラ(ワークスタイル)をリプレイスできるかどうかがポイントになる。ICTの活用は不可欠だが、テクノロジーは進化するため、リプレイスを想定することも必要。所有ではなく、利用をベースに移行しやすさを考慮する。また人事・総務・IT部門が縦割りではなく、横断的に判断することも重要になる。

 クラウドサービス、ネットワーク、エンドポイントの3つの要素が重要。変革が必要なワークスペースは数多く存在するが、それぞれの領域で実績のあるソリューションをパッケージ化して提供。すでに、スマートデバイスを中心としたセキュリティ対策や業務効率化のためのソリューションを提供している。

 例えば数万台におよぶNECグループの社外持ち出し用モバイルPCに採用されている。NECグループが採用したモバイルPCは、初期キッティングサービスはもちろん、ディスク暗号化サービスや遠隔データ消去サービス、ICT資産管理、紛失時のサービスデスクなどが含まれており、外出先からでも安心、安全に利用できる。

 また、Wi-FiアクセスポイントやiPadなどで構成される運用管理サービス、シンクライアント端末を起動時に常に初期化するスマートブートサービス、スマートフォンの内線化サービスなども紹介。荒谷氏は、「1ライセンス、1カ月から提供できるのが最大の特長。今後もリース会社としての特長を生かしながら、世の中にあるさまざまなソリューションを見つけて皆さまに安くていいものを提供したい」と締めくくった。

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