2016年、「異文化理解力」で違いの分かる日本人になる――他者理解は自己理解からビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2016年01月21日 08時00分 公開
[田岡恵ITmedia]
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 8つの物差しの中でも、グローバルで仕事をする日本のビジネスパーソンにとっての最大のチャレンジは、ハイコンテクストなコミュニケーションスタイルではないでしょうか。「あ・うんの呼吸」を尊ぶ嗜好が日本の経営者の間に根強い一方で、この本を読み返しながらあらためて確信したことは、ローコンテクストの文化で育った人に対して、見えないもの、聞こえないものを「見ろ、聞け」と要求することは非常に酷な話であり、多様性を生かす上で最も大切となるインクルージョンとは真逆の、排他的行為にあたるということです。

 急速に多様性が増しているこの世の中で、相手に自分のコンテクスト(文脈)のみを押し付けることは、非現実的かつ非人道的ですらあり、その結果、他の文化の人々から心理的距離を置かれ、恨みを買ってしまう危険すらあります。多くの日本企業にとっては、自分たちの意思決定の背景にある文脈を、多様なステークホルダーに対し謙虚かつ根気よく明示していく努力を怠らないことが、組織としての異文化力を醸成する上での大きな第一歩ではないでしょうか。

 また、上からのプレッシャーが厳然と存在する中、意思決定はあえてみなの合議、ボトムアップというスタイルを好む日本の企業文化は、外国人社員のみならず、若い日本人社員たちにとっても矛盾と戸惑いに満ちたものであることも忘れてはならないでしょう。多くの会議が議論の場としては形骸化し、事前の根回しに疲弊する人々を生んでしまう背景には、こういった根深い文化的な矛盾が存在します。グローバル・ビジネスの命運が、自由闊達(かったつ)な議論から生まれる革新的イノベーションにかかっていることを考えれば、日本企業が抱えるこの文化的矛盾の負のインパクトを侮ることはできません。

 文化というものの本質、そこから生まれるチャレンジをシンプルに理解するために、ここで本書に引用されている、ある有名な話を紹介します。

二匹の若い金魚が、向こうから泳いできた年寄りの金魚とすれ違う。年寄りの金魚は彼らに挨拶して言う。「おはよう、坊やたち、水の調子はどうだ?」―― すると若い金魚の片方がもう片方に聞く。「おい、水ってなんだ?」

 著者も指摘するように、私たちは自分の文化の中にいるとき、その文化を見ることはしばしば難しく、不可能な時すらあります。しかし、他者から見れば、その文化と文脈は、異質のものとして歴然と存在するものなのです。

 「カルチャー・マップ」が私たちに教えてくれること、それは、「自己の物差しで他者を見る」ことではなく、「他者の物差しで自己を見る」ことの大切さではないかと、私は考えています。グローバル化が今後もますます加速する中、多文化の環境で私たちが力を発揮する上で肝要となるのが、「客観的な自己認識」です。他者を相対的に理解するためには、自分自身に対する冷徹な理解が欠かせません。そういう意味では、「異文化理解力」は、深い「自己理解力」を起点としていると言っても過言ではないでしょう。

 2016年、ダイナミックなグローバル化、多様化に身を置くにあたり、より多くのビジネスパーソンが、この『異文化理解力』からの学びを自身の味方につけて、ますますのご活躍の一助としていただけることを切に願っています。

著者プロフィール:田岡 恵(Megumi Taoka)

グロービス経営大学院経営研究科教授、同大学院英語MBAプログラム研究科長室ディレクター。慶應義塾大学文学部卒業、筑波大学大学院国際経営修士(MBA in International Business)。海外での企業会計プロフェッショナル職を経て、現職。グロービス経営大学院では、会計および異文化マネジメント関連の講義を担当。共著に『グロービスMBAマネジメント・ブック?』。

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