自由な着想と先端テクノロジーの融合によるイノベーションが、デジタル時代に打ち勝つカギNTT DATA Innovation Conference 2016リポート(1/2 ページ)

ITの発展によってこれまでの制約が無意味になり、異業種でも新たなビジネスに参入することが可能な時代が到来した。従来のビジネスモデルも通じなくなる時代だからこそ、イノベーションをいかに生み出すかが重要である。

» 2016年02月29日 08時00分 公開
[山下竜大ITmedia]

不確実性が高まる時代には発想の転換が必要

NTTデータ 代表取締役社長 岩本敏男氏

 「NTT DATA Innovation Conference 2016」の主催者講演に、NTTデータ 代表取締役社長の岩本敏男氏が登場。「Technology×Foresight×Global ――デジタル時代を創るITのチカラ」をテーマに講演した。岩本氏は、「日本の株価の急激な下落が連日ニュースで取り上げられているが、世界に目を向けるとサウジアラビアとイランの対立、世界各国に飛び火したISILとその支援者によるテロ攻撃など、世界は激動し、不確実性が高まっている」と話し、講演をスタートした。

 イノベーションという言葉を生み出した経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターを例に「あらゆる人、もの、すべてが緊密に連結し合い、反応する。競争の不確実性が高まる時代には、発想の転換が必要である」と説明。

 発想の転換で成功した企業としては、デルタ航空が製油所を1億5000万ドルで購入し燃料の安定供給と燃料費の削減を実現したほか、「空港は工場である」と位置づけ、14億ドルを投資して空港に自動パスポートマシンを設置し、待ち時間を短縮した例をあげた。

 また、2009年にサンフランシスコで創業したUberは、一般ドライバーが運転する自家用車と乗客をスマートフォンでマッチングすることで、車を1台も所有せず配車サービスを実現。すでに60カ国、300都市以上でサービスを展開している。現在は、エリア内のレストランからランチやディナーを配達する「Uber EATS」など、配車サービス以外の領域にも拡大している。

 さらに金融業界では、テクノロジーを武器に金融サービスに参入するベンチャー企業や異業種の企業が増えている。「Finance」と「Technology」を融合させた新しい分野で「FinTech」と呼ばれている。2014年以降、急速に市場が拡大しFinTech企業への投資額は、2013年に比べ約3倍になっている。この流れは、製造業やサービス業など、あらゆる業種で起きており、保険業界では「Insurance」と「Technology」を融合した「InsTech」が登場している。InsTechの例としては、車の走行情報に基づき、保険料を決定する自動車保険「テレマティクス保険」がある。

デジタルの定義はSMAC×IoTのインパクト

 急速な技術の進歩により、これまでの常識が意味をなさなくなる。その背景にあるのが、指数関数的な技術の発展である。技術とは、CPU、ストレージ、ネットワークというITの「3大要素技術」だ。この20年間で、CPUは500倍、ストレージは5000倍、ネットワークは50000倍と指数関数的に発展している。さらにデバイス(インタフェース)の進化も見逃せない技術である。

 このような技術の進歩を背景にデジタル時代が到来した。ここでいう「デジタル」とは、「アナログ」の対義語ではない。2014年までの潮流であった「SMAC(Social、Mobile、Analytics、Cloud)」にIoT(モノのインターネット)のインパクトがかけ合わされたものである。IoTの本質的なインパクトとは、デバイスのインテリジェント化であり、これまでモニタリングを目的としていたセンサーに、CPUやメモリ、ネットワーク機能が搭載されることで、デバイスが自律的に動くようになる。

 現在、インテリジェント化した機器では、クルマの自動運転やウェアラブルデバイスなどが注目されている。さらに新しいマーケティング手法である「オムニチャネル」など、デジタルのインパクトによる予測がつかない時代が到来しようとしている。

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