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» 2016年03月15日 08時00分 UPDATE

視点:ASEAN経済共同体(AEC)の発足と存在感を増すASEANコングロマリット企業 (1/3)

1番目の目標は「単一の市場 ・ 生産拠点」 はヒト・モノ・カネがASEAN域内で自由に流通し、広域で統合された経済圏を創出することを目指している。

[山邉圭介, 石毛陽子,ITmedia]
Roland Berger

1、ASEAN経済共同体(AEC) の発足

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 ASEAN地域の成長に向けて各国が一体となった取組みとして、2003年に構想された ASEAN経済共同体構想(AEC)が、2015年12月末より発足した。 当初設定された目標の中で達成できないものも残ったが、それらは引き続き、10年後に向けた 「AECブループリント 2025」に沿って取組まれることとなる。

 AEC発足までの目標として 以下の4分野において611の達成すべき項目が設定されていたが、2015年末時点で、全体611項目の79.5%、うち主要な506項目の 92.7%を達成したとの報告がなされている。(図A参照)

 特に関税撤廃や世界経済への統合が進んだが、非関税障壁の未解決など、課題も残った。 達成率の計算方法は実態を示したものとは言い難く、AECを推進した ASEANの閣僚経験者は直近、「AECの達成状況はまだ、ABCで言うところのCである(Aが最高評価)」 と発言している。

 1番目の目標、「単一の市場 ・ 生産拠点」 はヒト・モノ・カネがASEAN域内で自由に流通し、広域で統合された経済圏を創出することを目指している。

 モノの移動について、関税の撤廃は順調に進み、2018年には後発加盟国も含め、原則0%関税となる見込みである。 但し、貿易を妨げる非関税障壁として残るものは多く、解決は進んでいない。 ASEAN域内で連携した効率的な税関 ・輸送制度の整備も途上である。

 カネの移動について、域内投資の自由化は、優先分野(注1)では進んでいるものの、投資の自由化に伴う各国の法制度改正の遅延もあり、予定より遅れている。

 ヒトの移動について、ASEAN諸国は優先8職種(注2)について、相互承認協定に署名。うち、エンジニアリングと建築分野では対象者にASEAN公認の資格を付与できるようになった。 但し、資格を得ても自動的に海外で就労できるわけではないのが実情である。 その他の職種について、例えば、タイで外国人看護師が働くにはタイ語の国家資格試験に合格する必要があるなど、完全な自由化はまだ先である。

 2番目の「競争力のある経済地域」については、輸送インフラ、エネルギー、電子商取引等における基盤整備がテーマとして挙げられている。 知的財産や消費者保護、競争政策にかかる制度の構築等、進んでいる分野もあるが、とくにインフラやエネルギー分野は、目標の達成が遅れている。

 3番目の 「衡平な経済発展」においては、中小企業への支援スキーム構築を中心に順調に進められている。 ただし、ASEAN加盟国間の経済格差は大きく、一朝一夕で効果が出るものではない。

 4番目の 「世界経済との統合」について、ASEANは周辺地域とネットワークを構築中であり、TPP (環太平洋戦略的経済連携協定)、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の早期実現に向けた調整が進んでいる。 TPPと RCEPを基盤とした貿易自由化の取組みが AECによって加速し、将来 「アジア太平洋自由貿易圏」(FTAAP)へと進展すれば、域内の事業構造が大きく変わる可能性もある。 但し、TPPにはタイ ・ インドネシア ・ フィリピン等の国は参加しておらず、今後の彼らの動向によっては、ASEANの経済発展レベルが TPP参加 ・ 不参加国間で 2分化される可能性もあり、引き続き注視する必要がある。

 2015年のAEC発足を受け、新たに2025年までを目指し、「AECブループリント 2025」 が制定された。 新ブループリントでは、今までの AEC実現において妨げとなっていた各国の規制ハードルや、公的部門の透明性の改善に踏み込んだ、より現実的な方針が示されている。 また、重点産業分野を定めて業界横断的な取組みを推進し、生産性の向上や技術革新を目的に据えるなど、より民間・産業分野の貢献が強調されたものとなっている。 今後、一層の民間対話を通じた、民間セクターからのAECの後押しを期待したい。


(注1)優先分野は、空運、e-ASEAN(電子政府)、ヘルスケア、観光、ロジスティクス

(注2)優先8職種は、エンジニアリングサービス、建築サービス、看護サービス、観光専門家、会計士、開業医、歯科医、測量技師

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