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» 2016年03月31日 08時00分 UPDATE

ITmedia エグゼクティブセミナーリポート:ASEAN市場でプレゼンスの高い日本企業――成功のための経営戦略とIT戦略を学ぶ

巨大市場となるASEAN。文化も経済状況も異なる国の集合体で、日本企業が成功するためには、どのような経営戦略とIT戦略が求められているのだろうか。

[山下竜大,ITmedia]

 2015年の経済統合により、約6億4000万人の巨大市場が誕生するASEAN市場。文化も経済状況も異なる国の集合体であるASEAN市場で、日本企業が成功するためには、どのような経営戦略とIT戦略が求められているのだろうか。

アジアからITの標準化を推進する積水化学

terashima.jpg 積水化学工業 経営管理部 情報システムグループ長 寺嶋一郎氏

 「絶対に負けられないASEAN市場、日本企業はどう攻略すべきか」をテーマに開催された「第34回 ITmediaエグゼクティブセミナー」の基調講演に、積水化学工業 経営管理部 情報システムグループ長の寺嶋一郎氏が登場。「先ずはアジア市場から、ITの標準化を推進する積水化学グループ」と題した講演で、積水化学のグローバルIT戦略を紹介した。

 積水化学グループの海外進出の歴史は古く、1962年に米国と独国に拠点を開設し、1963年にはシンガポールに拠点を開設した。さらに2002年には、中国へも進出。多くはM&A(企業合併買収)による進出だが、一部で販売・製造会社も設立している。現在、生産拠点・販売拠点は合計で130を超え、約30ヶ国に広がり、売上は全体の25%に上る。

 グローバルIT構築の背景として、当初は地産地消のグローバル展開が多く、拠点と日本の間のやり取りは、インターネットVPN経由の電子メールで十分だったが、中期経営計画で積極的な海外戦略が打ち出されたこと、原油や為替の変動でグローバル経営管理のニーズが急増したこと、IFRS対応が必要になったことなど、グローバル経営の見える化が急務になった。

 寺嶋氏は、「M&Aが加速したことで、グローバルIT戦略とグローバルIT標準が必要になると認識した。またM&A案件において、IT部門の早期の参加が求められている。さらに、グループ企業の連結経営を支える3つの柱である、経営の見える化、経営リスクの削減、全体最適の追求を支える国内IT基盤の整備が必要だった」(寺嶋氏)

 連結経営を支える国内IT基盤の整備では、ネットワークやBCPなどのインフラ基盤の整備、Smileと呼ばれるオープンソースをベースとした情報共有基盤の整備、会計・デリバリを中心とした基幹システムのグループ会社への展開、セキュリティ・標準化・人材などのITガバナンスの確立という4つのIT施策を工夫しながら実施している。

 4つのIT施策をいかに海外に展開すればよいのか。グローバルなネットワーク敷設はコストが高いので、暗号化した電子メールを活用し経営情報の収集を行い、情報共有に関してはSmileをクラウド基盤に移行し、海外からもインターネットで利用できるようにしたほか、アジア拠点向けの基幹システムは日本のデータセンターからクラウドでERPを共通利用することで、業務の標準化を実現した。

 今後は、基幹システムだけでなく、グローバルSCMを実現するための基盤としてERPを活用していく計画。またグローバルITガバナンスの取り組みでは、IT主導での業務プロセス標準化を推進するとともに、アジア、北米、欧州におけるグローバルIT体制を整備する。一方、セキュリティの見える化とIT関連機器の標準化や集中購買は今後の課題である。

 グローバルITの展開で学んだことを寺嶋氏は、「アジアは日本主導でうまくいくが、欧米ではそうはいかない。特に欧米では、口で言うのではなく文書化が必要で、ベンダーとの付き合い方も工夫が必要だ。またERPの導入は目的ではなく手段。目的は、業務の見直しや標準化である。そして当然のことだが、英語によるコミュニケーションはすぐには難しいので、ITを知ったうえで現地での通訳ができるパートナー選びが重要になる」と話している。

ASEANの日本企業を支援するローランド・ベルガー

yamabe.jpg ローランド・ベルガー シニアパートナー アジアジャパンデスク統括 山邉圭介氏

 特別講演には、ローランド・ベルガー シニアパートナー アジアジャパンデスク統括の山邉圭介氏が登場。「ASEAN市場の魅力と勝てる戦略」をテーマに、魅力にあふれる市場である一方、グローバル競争が激しく、変化のスピードも速く、文化や経済状況も異なる国の集合体であるASEANで、日本企業がどのように戦っていくかを紹介した。

 ASEANを1つの経済圏としてみれば、BRICsと同レベルの成長率で、米国、欧州、中国、日本、インドに次ぐ経済規模に拡大している。山邉氏は、「日本はいち早くASEAN市場に進出しておりプレゼンスは高い。しかし現在、多くの国がASEANを成長市場としてとらえており、日本企業としては"絶対に負けられない"重要な市場といえる」と話す。

 一方、ASEAN諸国は、文化や宗教、経済規模など、それぞれに異なった顔を持っており、ひとくくりでとらえるには難しい市場である。ASEANは成長が見込めるが、市場は細分化されており、「総取り」は難しい。また将来の不確実性の高さも特長のひとつ。市場の複雑性や競合の脅威にいかに立ち向かうか、戦略の質が問われる。

 これまで日本企業は、顧客のニーズを掘り下げ、最適にカスタマイズされた製品を投入することで、インドネシア市場を獲得してきた。山邉氏は、「ASEANで"勝てる戦略"を構築するには、現地現物での"市場の見える化"と"先読み"によるシナリオプランニングが欠かせない」と言う。

 例えばシーメンスは、インダストリー4.0により複数の工場をスマート化し、コスト削減やローカルニーズへの迅速な対応を実現、製品の迅速な市場投入を可能にした。またインドネシアのスタートアップ企業であるGo-Jekは、ITを活用することで、人、モノ、サービスの総合運搬マッチングサービスの実現を目指している。

 ASEANでは、歴史的に各国のコングロマリット(財閥)が産業の大部分を担ってきた。そのためコングロマリットとの付き合い方も、ASEAN市場における成功の重要な鍵になる。日本企業がASEANのコングロマリットとの連携を成功させるためのポイントは、適切な相手を選び、シナジー効果を生み出すビジネスモデルを構築し、確実に利益を享受できる仕組みを作り、事業戦略をタイムリーに見直すことだ。

 山邉氏は、「ASEANは、競争戦略上おもしろい市場であり、戦略構築には"市場の見える化"と"先読み"が重要になる。また、コングロマリットとの付き合い方が重要な鍵。複雑で厳しいASEAN市場で勝ち抜くためには、市場の深い理解に基づく"合理的かつしたたかな戦略"が不可欠であり、戦略の質が勝負を分けることになる」と締めくくった。

出力環境の最適化を目指すコニカミノルタ

yamauchi.jpg コニカミノルタ ジャパンMA統括部 OPS&PP推進室 室長兼OPSシニアコンサルタント 山内浩氏

 セッション1には、コニカミノルタ ジャパンMA統括部 OPS&PP推進室 室長兼OPSシニアコンサルタントの山内浩氏が登場。「グローバル企業の出力環境インフラストラクチャーの最適化」をテーマに、コニカミノルタがグローバルにビジネスを展開する企業に提供する出力最適化サービスについて紹介した。

 コニカミノルタは、情報機器事業を中核に、材料・機器事業、ヘルスケア事業などを、日本をはじめ、北米、欧州、アジア地域で展開している。またビジネスイノベーションセンターにより、市場のニーズと技術シーズを特定したり、顧客の価値検証を通じて新しい商材やサービスを開発したり、新たな企業文化の醸成や人材育成にも取り組んでいる。

 「コニカミノルタでは、企業の出力環境インフラを、海外・国内拠点のオフィスで印刷を行う出力環境にかかわる全般と定義している。具体的には、複合機やプリンタ、スキャナ、FAXなどのハードウェアやプリントドライバーや認証機能などのソフトウェア、調達、資産管理、消耗品管理、インシデント把握などの付帯・管理業務で構成される」(山内氏)

 グローバル企業における出力環境インフラでは、コスト管理や利便性の向上はもちろん、運用ルールの徹底や情報漏えいリスクの低減などの管理・統制が重要な課題となる。この課題を解決するためのコニカミノルタのサービスが、グローバル出力環境インフラ最適化プログラム「Optimized Print Services」である。

 山内氏は、「Optimized Print Servicesでは、機器や運用、管理の標準化からサービスデスクや認証基盤の統合、業務やデータの一元化までをグローバルレベルで実現し、継続的にフィードバックできる仕組みを構築することで、出力環境の管理・統制を可能にする。すべての出力データは、グローバルビジネスポータルで可視化できる」と話している。

世界で"勝つ"基盤を提供するインフォア

sato.jpg インフォアジャパン ビジネスコンサルティング本部 執行役員 JOCビジネス開発担当 本部長 佐藤幸樹氏

 セッション2には、インフォアジャパン ビジネスコンサルティング本部 執行役員 JOCビジネス開発担当 本部長の佐藤幸樹氏が登場。「"メイド・イン・ジャパンの底力"を活かす! グローバルで勝つための"土台"としての情報基盤」をテーマに、インフォアの取り組みについて事例を交えて紹介した。

 現在、多くの海外拠点では、現地にあわせてバラバラの仕組みを導入しているのが実態である。そのため情報が分断されてしまい、現場力を活かすことができないために、品質や業務効率の低下、法令違反などの問題が発生する危険性が高くなる。それでは、現場力を活かすためには何が必要になるのか。

 「Infor Factory Trackを採用することで、従業員の出退勤から製造現場実績、倉庫管理までのシステム化が可能。紙ベースの管理をなくし、作業のムダを排除できる。また現場のIoTを、経営管理に活かすこともできる。さらに、Infor CloudSuiteを採用することで、海外拠点を短期に立ち上げ、迅速なビジネスの拡大を実現できる」(佐藤氏)

 自動車部品の製造販売をグローバルに展開するTHKリズムでは、タイ、中国(常州、広州)、メキシコの4拠点にInfor SyteLineを導入し、グローバルでの競争力を強化した。最大のポイントは、コア業務を共通化し、それ以外は現地のルールで標準化したこと。これにより短期導入を実現した。今後は、マレーシア、米国、日本への展開も計画している。

 佐藤氏は、「海外拠点で勝つためには情報基盤が必要。バラバラの仕組みを現場の工夫で使い続けるよりも、経営と業務、システムを融合することで、より一層の効果が期待できる。例えばダイエットを実現するには運動を定着化させ、体重などの指標を見える化し、健康診断で定期的な改善に取り組むことが必要。業務改善も同じだ」と話している。

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