日本型インダストリー4.0+α お客様起点の付加価値創出への道筋視点(3/3 ページ)

» 2016年04月11日 08時00分 公開
[長島 聡ITmedia]
Roland Berger
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サービスで潤いを演出して対価を取る

 付加価値が高められた製品を、お客様の価値や満足の最大化へとつなげるのがサービスの役割だ。「先読み」や「引き寄せ」といった接点の厚みを作るための活動も、広義にはサービスと捉えることもできるが、最も重要なのは製品を選んだり、利用したり、保有したりする楽しみを最大限に高めることだ。

 例えば、その道のプロの使い方を教えたり、傍でプロの技を体験したりするのもワクワクする。たくさんの選択肢から自らの最も気にいるものを選ぶのも嬉しいはずだ。メーカーの開発プロセスや生産プロセスに参加する体験も忘れられない。みんなと一緒になって競ったり楽しんだりすることも一人では得られない喜びがある。周辺の製品やサービスを含めてその場面全体をコーディネートしていくアドバイスをもらえたら生活の潤いを感じることができるだろう。また、使い終わった製品の廃棄までもが社会の役に立つ仕組みも準備されたら、ちょっとした社会貢献意欲も満たされる。(図C参照)

 こうしたサービスは、人のセンスや温かみをベースに生み出していくという特徴もあることから、対価は比較的高いものになる。そこで、そうしたサービスのニーズを高めるためにも、お客様のお財布の紐を緩める工夫が有効だ。そのために、自らが使っていない時間に製品を第三者に貸して対価を得る、日々の体験で蓄積したデータで製品開発に貢献することで対価を得るなど、様々なアプローチで対価を生み出していくべきだ。

 そしてその対価をなるべく多く生活の潤いにつながるサービスに使ってもらうのだ。潤いのアップグレードだ。もちろん、現場の立居振舞いも含めて、こうした一連のサービスが、訴求したいブランド価値と一貫性のある形で展開されていくべきなのは言うまでもない。

収益を再投資する

 こうした道筋で、製品やサービスを提供し続け、常に新しい付加価値を届けながら、よりお客様のマインドシェアを上げていく。そして、結果としてより多くの収益を獲得する。ただし、獲得した収益は、常に次なる付加価値提供のための原資として大部分を活用していくことが重要だ。

 ブランドが思い描く"お客様に持って欲しい心持ち"において、不足していること、ズレていること、新たに刺激できることを、デジタル空間上に貯めてきた個人別の体験記録などを使いながら、貪欲に見つけていく。そのために必要なモジュールや標準作業の更新、材料の刷新、加工・組み立て方式の革新、リードタイムの短縮など要素技術を新たな付加価値に合わせて磨き上げるのだ。デジタルシミュレーションを活用すれば、これまでにない性能を手戻り無しに生み出していくことも可能なはずだ。

 更なる生産性向上を実現するために、人工知能への投資も必須だ。人工知能を、考える枠組みの拡大や同時に扱う情報の増大に利用したり、雑多な集計や繰り返し作業の代替に活用したりすれば、これまで以上に一人の人が担える業務の範囲、管理スパンが拡大して、生産性を高めることができる。ただ、単に効率化できるからといって、躊躇なく様々な領域で人工知能による人の代替を進めると、人が価値を生み出すプロセスに対して手触りを持てないという状況に陥いる。そうならないためには、自社が追い求めたい付加価値、言い換えるとブランド価値を生み出していくために何が必要で、その中の何を人が担うべきかを見極める必要があるのだ。デジタルの使い方次第で、中長期的な人の競争力が大きく左右されるのは間違いない。(図D参照)

人口知能(AI)の正しい使い方

終わりに

 デジタル技術を駆使して人を強化、人と人、自社と他社を繋ぐ。自社の「ありたい姿」に向けて、一丸となって現在とのギャップを素早く埋めていく。可能な限り、お客様との接点を厚く持ち、その中で付加価値を継続して届け、お客様のロイヤルティを高めていく。そして、お客様に一番最初に思い出してもらえるブランドとなり、その状態を維持する努力を続ける。

 お客様との対話の中で、ニーズを「先読み」して、お客様の嗜好を「引き寄せ」ていく。組み合わせで多様な価値を生み出せるモジュールや標準業務を「構え」として整え、お客様を待たせずに付加価値を届ける。人工知能やロボットは自らの手足として活用する道具だ。人、現場力で、お客様に寄り添い、温もりをもって、感性に訴える対話を続けていく。そんなデジタル時代にこそ貴重な+αの感覚を持ってお客様起点の付加価値創出を組み立ててみてはどうだろうか。

著者プロフィール

長島聡(Satoshi Nagashima)

代表取締役社長

早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手、各務記念材料技術研究所助手を経て、ローランド・ベルガーに参画。工学博士。

自動車、石油、化学、エネルギーなどの業界を中心として、R&D戦略、営業・マーケティング戦略、ロジスティック戦略、事業・組織戦略など数多くのプロジェクトを手がける。現場を含む関係者全員の腹に落ちる戦略の実現を信条に「地に足が着いた」コンサルティングを志向。


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