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» 2016年04月20日 08時00分 UPDATE

経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意:残された人の思いをかたちにする、これまでにない葬儀の在り方とは (2/2)

[聞き手:井上敬一、文:牧田真富果,ITmedia]
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その葬儀は命を繋ぐことになっているか

1604202.jpg 中川社長(右)と聞き手の井上氏(左)

井上 最初はサプライズで行っていたことが、たくさんの人たちに受け入れられ、広がっていったんですね。改めて、中川さんが理想としている葬儀の在り方とはどのようなものでしょうか。

中川 故人の人生と、その周りの方々の人生を伝え、故人の人生を振り返るような空間作り、時間作りをしたいと思っています。一方で、葬儀は単なるイベントではないので、お経をあげるなどの慣習も大切なことだと考えています。われわれは今までの葬儀の在り方を否定しているわけではなく、現代の方々が満たされるために必要なものをこれまでの葬儀に付け加えることを目指しています。それが、亡くなった人の人生をきちんと振り返ることだと考えているんです。

井上 葬儀が単なるイベントにならないために意識されていることは何ですか。

中川 「その人らしさ」をお葬式に取り入れるとしても、お葬式は人の命を扱う儀式・儀礼であることに変わりはありません。宗教や地域の慣習を重んじることが重要だと考えています。宗教や慣習は、人々の心の不安から生まれているものです。そういった意味で、私たちの仕事は、物理的なものよりも「心」を大切になければならない仕事です。お葬式は儀式・儀礼であるからこそ意味をなすので、宗教儀礼がしっかりとできるような場作りをすることが私たちの役割でもあります。

井上 感動を生む葬儀を作り上げることは簡単なことではないと思います。残された人々にとっての葬儀の意味合いを深いところまで理解していないと実現できることではないですよね。

中川 そうなんです。私たちは「命を繋ぐこと」をテーマにお葬式を提供しています。プロデュースするときには、本当に命を繋ぐことになっているかを常に考え、お客さまにも認識してもらうようにしています。葬儀の目的に気付いてもらうために、遺族をサポートしていくことも私たちの仕事だと思っています。

 ケーキが好きだったから、ケーキを用意しましょうというような短絡的なものではだめなんです。そのことが本当に亡くなった方のことを振り返ることになっているかを考えなければなりません。そこをきちんと理解していないと、他人が余計なお世話をしているだけになってしまいます。

遺族の手に葬儀を戻すことを目指し、葬儀本来の在り方に立ち返る

井上 今後の葬儀の在り方として、新たに提案したいことはありますか。

中川 お葬式を葬儀社から家族のもとへ返したいと考えています。葬儀は、故人のご家族や周りの方のためのものです。本来は、私たち葬儀社ではなく、ご家族や周りの方々でやるべきものだと思います。

 創業当初は、従来の考え方に一石を投じ、壁を壊すためにサプライズという手法を取ってきましたが、現在では、私たちで仕掛けるサプライズは行っていません。人々の認識が変わり、亡くなった人のために何かしてあげたいという思いを持つ方が増えてきたこともあり、自分たちでやりたいことはどんどんやってくださいという流れになっています。私たちはあくまでその手伝いをしています。思いを引き出し、提案をして、ご遺族の皆さん自身にやってもらうというスタンスに変わってきました。

井上 自分たちで作る葬儀とは、具体的にはどのようなものでしょうか。

中川 通常は、葬儀社の者が司会をしますが、長男が司会をしたらどうかと提案したことがあります。祭壇を花で飾るため、お花屋さんと一緒にデザインをして、空間デザインをしてもらったこともありました。自分たちでお葬式を組み立てる、プロデュースをするということをやってほしいのです。葬儀は大変です。でも、大変だからこそ、自分たちの手で組み立て、お葬式を挙げたときには、送り出せたという思いは強まると思います。そのサポートを私たちがやりたいのです。

 みんなの手で送る、みんなの心で送る、葬儀本来の在り方、向き合い方をもう一度問い直していきたいですね。

対談を終えて

通常であれば顧客ニーズに応えてサービスを施すのが顧客満足になる。しかし葬儀業界の顧客に於いては自分のニーズが分からない状態である。また、たとえ潜在ニーズが分かったとしても、そのサービスを本当に実現しても良いか、提供する側もされる側も疑問であるのが葬儀というもの。そんな中、今回の対談を通してサプライズの感動葬儀を提供する姿勢は「スゴい!」の一言に尽きる。そこには葬儀を単なるイベントで終わらせるのではなく【命を繋げる】儀式として執り行いたいという中川氏の強い覚悟を感じました。

これはもう顧客満足を超えた顧客進化だと考えます。対談を通して葬儀の本来の意味合いを教えてもらい、そして命というものに対して深く考えさせられ、気が付くと涙が溢れるのを堪えながら取材した、私にとっての初めての日になりました。

プロフィール

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井上敬一

ブランディングコミュニケーションデザイナー

株式会社FiBlink代表取締役

兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み1カ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1600万円の売り上げを達成。業界の革命児として、関西最大規模のホストクラブグループの経営業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。また、WEBセミナー「プレジデントキャンパス」により、中小企業経営者の学びの場をもっと身近なものにして日本経済を牽引する役割を目指す。

圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルをわかりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。これまで数多くのメディアに取り上げられ、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で8年にわたり密着取材され、シリーズ第6弾まで放映されている。

 主な著書に、「ゴールデンハート」(フジテレビ出版)、「人に好かれる方法」(エイチエス株式会社)などがある。


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葬儀 | 家族 | 人生 | 顧客満足


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