尊厳ある人生を享受するために――病から自分を守る予防術とはITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

» 2016年05月10日 08時00分 公開
[山下竜大ITmedia]
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 予防方法としては、緑黄色野菜を豊富に食べる、脱水を避ける、減塩、動物性たんぱく質に偏らない、腹八分、間食をしない、終身3時間前には食事をしない、抗酸化サプリメントを利用する、十分な睡眠、ウォーキング、ストレスの回避などである。

 早期発見を目的に、高血圧、糖尿病、脂質異常評価、胸部X線などの検査を毎年受け、脳のMRI/MRAを3年に1度行うことを勧めている。

ポイント5

  • 心臓や脳の血管トラブルは前兆なく突然発症する。
  • 背景には動脈硬化と血栓症がある。
  • 動脈硬化や血栓症のリスク管理を行えば、血管トラブルは未然に防げる。

 認知症の原因は、以前は脳血管性認知症が多かったが、現在は約半数がアルツハイマー型認知症となっている。認知症の発症リスクは、高血圧、喫煙、糖尿病などである。予防方法としては、定期的な運動、地中海型の食事、社会的参加、認知訓練、適度な飲酒などが挙げられる。

ポイント6

  • アルツハイマー型の認知症が増えている。
  • 原因は不明だが、食事や運動など、生活習慣の見直しが予防につながる。
  • 社会活動や精神活動に積極的に取り組み、脳を活性化させることで予防が期待できる。

 がんや動脈硬化性疾患、認知症などを予防する医療のひとつにアンチエイジング医療がある。アンチエイジング医療は、キレーション療法や高濃度ビタミンC療法、サプリメンテーションなどで、病気の発症を予防するだけでなく、加齢による生理機能の低下を遅らせたり、回復させたりすることで、より健康で質の高い生活を目指す医療。内科や皮膚科、形成外科、精神科など、複数の専門医の連携が重要になる。

ポイント7

  • アンチエイジング医療は、加齢による疾患の発症予防や生理機能の改善により加齢を遅らせる医療の考え方である。
  • 臓器別ではなく、体全体をとらえる医学的取り組みだが、エビデンスが十分ではなく、標準医療を支える代替医療、補完医療の位置づけである。

健康管理にどのように取り組むか

 日本人の寿命は延びているが健康寿命は延びていない。阿保氏は、「がんの延命治療で苦しみながら長生きするより、ピンピンコロリがよいという見解もあります。しかし、なかなかそのとおりにならないのが現実です。ただ長寿か否かに関わらず、幸せや喜びを感じている人は健康であるという調査報告があります。生活の質を重視して健康管理に取り組むことが大切です」と語る。

 感情が健康に与える影響に関する研究では、患者の気分がすぐれないと医療行為でトラブルが生じやすいといいう報告がある。また激しく怒ると2時間後に心臓発作を起こすリスクが8.5倍に増える、畏敬の念を抱くと糖尿病や関節炎の炎症物質が減少する、加齢を否定的に感じている人ほどアルツハイマー病を発症しやすくなるなどの報告もある。

ポイント8

  • 医療行為による長生きだけでなく、尊厳を保つ人生、高い生活の質の維持が重要。
  • 常識にとらわれず、豊かな人生を提供することを医療のエンドポイントとする。

 具体的には、どのように健康管理に取り組めばよいのだろうか。

 オススメの健康管理法として、食事・嗜好では禁煙や緑黄色野菜の摂取、減塩など、運動・管理では血圧測定、体重測定、睡眠、運動などが効果的だ。また指を使う作業、豊かな表情などの知的活動・精神ケア、高血圧や糖尿病のコントロール、キレーションなどの疾患コントロール・アンチエイジングも有効である。

 「肥満の予防には、たまにジムで激しい運動をするよりも、日常的な掃除の方が効果的です。ただし、すでに肥満の人が減量するためには、食べたカロリー以上のエネルギーを消費することが必要であり、ジム通いも有効になります。また、定期的に各種検査を受けることも重要なポイントです」(阿保氏)。

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