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» 2016年05月26日 18時00分 UPDATE

新たな勝ち組企業の条件 デジタルビジネスへの挑戦と企業変革:PayPalやトヨタが挑むデジタル化による企業変革とは? 老舗も危機感を募らせる創造的破壊とデジタル変革

「変化」が常態化する中、デジタルテクノロジーを活用して常にビジネスを変革していく力が、新たな勝ち組企業の条件となりつつある。FinTechの「老舗」ともいえるPayPalやトヨタ自動車では、デジタル化によってより良い顧客体験を提供し、新たな企業価値を生み出す挑戦が始まっている。

[PR/ITmedia]
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 「VUCA」ワールド、という言葉をお聞きになったことはあるだろうか。不安定性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、そして曖昧模糊(Ambiguity)という4つの言葉の頭文字を取ったもので、元々は軍事用語らしい。

 今、企業を取り巻く環境は、「変化」が常態化したVUCAワールドそのものだ。言い換えれば、常に「乱気流」の中にいるといえる。例えば、デジタルテクノロジーを武器にしたUberやAirbnbは、1台のタクシーも保有しないのに、1軒のホテルも保有しないのに世界最大の事業者へと成長している。既存の事業者にとっては、たまったものではないが、ゲームのルールも変れば、勝者も変わる。これまでに経験したことのないVUCAワールドを企業はどのような舵取りで乗り切ればいいのか。

危機意識が不断の変革へと突き動かす

 いわゆる「デジタル化」の影響を最も受けやすいビジネスの筆頭は金融だろう。金融は既にITが根幹となっているからだ。デジタルテクノロジーによって、金融サービスはどのように姿を変えていくのだろうか。

PayPalのダン・シュルマンCEO(左)とMicrosoftでビジネスデベロップメントを統括するペギー・ジョンソン執行副社長

 「金融業界には、過去30年から40年かけて経験した変化を遥かに超える変化がこの5年でやってくる。マネーは急速にデジタル化しつつあり、気がついたときには手遅れになる」── PayPalのダン・シュルマンCEOはこの4月、ルイジアナ州ニューオリンズで開催された「Microsoft Envision 2016」の基調講演に招かれ、そう話した。

 200カ国で金融サービスを展開し、1億8000万のユーザーが年間3000億ドルを取引するPayPalは、1998年に創業した、いわばFinTechの「老舗」だが、今も積極的なM&Aを展開し、デジタル決済の変革をリードし続けている。

 「デジタル化とモバイルデバイスの普及は、金融サービスの"窓口"を変え、コマースの在り方も変えようとしている。われわれは、こうした変化を機会として捉え、次世代の金融サービスとコマースをリードしたい」とシュルマン氏。

 同社は昨年夏、スマホやPCを利用した国際送金サービス会社の「Xoom」(ズーム)を買収すると発表したばかりだ。4.99ドルという手数料の安さが米国で働く移民や出稼ぎの人たちに人気だという。メキシコ、インド、フィリピン、中国などに拠点を置くのもそのためで、ユーザーは130万人、年間の取扱高は70億ドルを超える規模に成長している。

 個人間送金の「Venmo」(ベンモ)も、スマホアプリの使い勝手の良さとソーシャル機能によってミレニアム世代の人気を集めている。レストランやペイテレビの割り勘などに幅広く利用され、月間の取引高が10億ドルを突破するまでに急成長している。このVenmoも数年前、PayPalは買収によって傘下に収めているからいいようなものの、「送金取引をソーシャル体験に変えた」とシュルマン氏が表現するVenmoの変革は、親会社のビジネスをも破壊しかねない勢いだ。

 いずれもデジタル化とモバイルデバイスの普及が、これまで銀行が取り扱ってきた個人間の送金サービスを破壊している象徴的な例だが、PayPalは、こうした新しいFinTechサービスを取り込み、同社のサービスと連携させ、例えば、XoomやVenmoのユーザーがPayPal経由で小売店や業者に支払いできるようにする構想だ。

 「われわれのミッションは、金融サービスの民主化。より迅速に、より簡単に、より安全で、そして、より安く金融サービスを提供することだ。そのために、コンシューマーに対してはさまざまなFinTechアプリを介して、例えば、店舗でレジに並ばず、支払いが済ませられるような体験を提供し、マーチャントにはさまざまなデジタル決済の手段をワンストップで提供するオープンな"プラットフォーム"として拡充していきたい」とシュルマン氏は話す。

イタリアのコープが描くスーパーマーケットの未来

 金融は最もデジタルテクノロジーの影響を受けやすい業界だが、ほかの業界にもIoTの波が確実に押し寄せている。モノをつくり、仕入れ、販売する、という伝統的なビジネスの世界でも、デジタル化が進もうとしている。

Microsoftのサティア・ナデラCEO

 「ビジネスのデジタル化が進めば、いかに素早く顧客のニーズを把握し、それに応えるかが成功のカギになる。みなさんもデジタル企業のように会社を運営することを考え始めてほしい」── Microsoftのサティア・ナデラCEOは、Envision 2016に詰め掛けた顧客やパートナーらに訴える。

 「デジタルテクノロジーは、膨大なデータからインテリジェンスを引き出すことによって、顧客とより良い関係を築き、社員の力も最大限に引き出し、オペレーションを最適化し、製品やサービスも変革してくれる。伝統的な企業においても新たな企業価値を生み出す。これこそがデジタルテクノロジーによるビジネス変革だ」とナデラ氏は話す。

 アーネスト・N・メモリアル・コンベンションセンターの展示フロアでは、イタリア最大の生活協同組合、Coop Italiaが、スーパーマーケットの「未来像」を描いてみせた。

スーパーマーケットの「未来像」

 ブースにはスーパーの棚が実際の売り場のように設置され、食品が並べられている。カンファレンスの参加者が訪れるとマイクロソフトのKinectモーションセンシングカメラがそれを認識し、食材を手に取ると、産地や成分、相性のいいワインなどの情報が目の前の大きなディスプレイに表示される仕掛けだ。食品のトレーサビリティが重要視され、健康意識の高まりが購買を左右する時代だ。どんな肥料や飼料で育てられたかはもちろん知りたいし、できるだけ「地産地消」がいい。地球環境の保全という視点でも、手許に届けられるまでに排出されるCO2の量を知りたい消費者もいるだろう。

 Coop Italiaが進める未来のスーパーマーケットは、食に関する情報を求める新たな顧客層の心をつかみ、彼らとより親密な関係を構築できるようにしてくれるだけでなく、お店としても人気の食品が分かり、仕入れや陳列を最適化できる。しかも、その体験はとても自然なものだ。

人に優しい次世代カーを目指すトヨタ

 デジタルテクノロジーは、これまでにないユーザー体験や異次元の最適化をもたらしてくれるだけでなく、常にネットワークに接続され、膨大なデータを生かした、全く新しい製品づくりも可能としてくれる。その最先端を走るのが、高度な自動運転車や、より安全性と利便性を高める「コネクテッドカー」だ。既存の自動車メーカーはもちろん、Googleのようなデジタル企業も多くの資源を投入し、研究開発にしのぎを削る。

安全性と利便性を高める「コネクテッドカー」

 Envisionカンファレンスの展示フロアに実物のクルマを持ち込んだのは、ベルリンに本社を置くIAVだ。あまり名前は知られていないが、自動車業界で30年以上の歴史を誇るエンジニアリング企業だ。グローバルで約6000人が働き、VolkswagenやBMWのような自動車メーカーやContinentalのような部品メーカーに開発支援を行っている。自動運転技術では、既に7万kmもの公道実験を重ね、実用段階に近づいている。

 IAVが次のステップとしてMicrosoftと共同で開発を進めているのが、「Vehicle to X」(V2X)、つまりコネクテッドカーだ。例えば、歩行者の急な飛び出しをどう回避すればいいのかは、市街地における、より安全な自動運転の実現には、克服しなければいけない課題だ。人をカメラで認識する技術を進化させるアプローチもあるだろうが、IAVではウェアラブル端末を身に着けた歩行者の位置をクラウド経由で把握し、予測に基づいて事故を回避する技術の開発に取り組む。MicrosoftのAzure IoT Suiteと機械学習によって膨大なデータを解析するCortana Analytics Suiteが大きな役割を演じることになる。

 Envisionの基調講演では、MicrosoftのナデラCEOがトヨタ自動車との合弁会社「Toyota Connected」の設立を誇らしげに披露した。

 テキサス州に本社を置く新会社では、クルマから得られる膨大なデータを一連のAzureクラウドサービスで解析し、人に優しい、人の心をつかむドライバー体験の提供に向け、研究開発を進めていくという。さまざまな車載サービスはもちろん、クルマと家を接続したり、ハンドルに取り付けられたセンサーがドライバーの健康を管理したりと、その事業アイデアは広がる。

 同社が公開したデモ動画では、空港に向かう途中で搭乗ゲートの変更をダッシュボードで把握できたり、駐車場でどこに空きがあるかを表示してくれる便利なサービスが紹介されている。

 急速に進むAIや自動運転では、人の想像を超えるテクノロジーの進化に対して、懸念や拒絶反応もあるが、トヨタが目指す人に優しい、人の心をつかむドライバー体験は、クルマの未来をより魅力的なものにしてくれるに違いない。何より既存の自動車メーカーにはそうしたクルマ文化、クルマ社会を形づくってきた知見があり、デジタルテクノロジーを活用してビジネスを変革していく力は、既存の事業者にこそある。

 Envisionを受けて、この秋、東京でも同様のカンファレンスが開催されるという。ビジネスのデジタル化を進めるためのさまざまな気づきが得られる機会となるに違いない。

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