連載
» 2016年07月20日 08時00分 UPDATE

ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略:中川政七商店が考える、日本の工芸が100年先も生き残る道とは? (4/5)

[伏見学,ITmedia]

インバウンド対応に力を入れない

大薗: オンライン販売についてはどうお考えですか? 工芸品というのは手触りや微妙な色合いなどが大事だと思いますが、会社のブランドが立ってくるとオンラインでも売れるものなのでしょうか?

中川: 僕は、オンライン販売はずっと否定派で、「商品を触らずによく買うな」と思っていました。ただ実際には伸びていて客単価も高く、現在は売り上げ全体の6〜7%に当たります。ひとまず10%を目指しています。ただし、店舗があってこそ成立しているものだと思っています。

大薗: インバウンド対応についてはいかがでしょうか?

中川: 立地によっては一定の影響が出ています。ただし、基本的にインバウンド対応はするなという指示をしています。

大薗: それはなぜですか?

中川: インバウンドは瞬間的な“甘い汁”で、いつこの勢いがなくなるか分からないからです。ですから、東京五輪に向けて何かを仕込んでいるわけではないし、それほど関心はありません。

大薗: 中川政七商店の店舗に行けば日本の工芸品が買えると知れば、訪日外国人が大勢押し寄せそうな気はしますが。

中川: もちろん外国人の方々を拒否しているわけではないし、結果的に店舗にいらして買ってもらえるのは嬉しいです。けれども、インバウンドありきということはないです。メーカーの立場として思うのは、一過性のブームでどかんと売れてしまうのが一番困ります。

大薗: ブームはどの会社も苦労すると聞きます。けれども、意図せず勝手にブームになることも多いですからね。例えば、中川政七商店のコンサルティングによって成功したマルヒロが販売する波佐見焼の陶磁器ブランドも一気に売れたのでは?

中川: はい、確かに急に売れましたけど、それから5年以上も売り上げを落とさずに続いているので、もはやブームとは思っていません。

大薗: 仮にブームが来た場合、増産対応するよりは、ある程度は品切れ状態でも仕方ないという考えでしょうか?

中川: ある程度の増産はしますが、ムチャな投資はしません。ただ、長い目で見て、増産に向けた投資をしていかないと、多くの工芸メーカーは事業承継できるレベルまで達しません。今ちょっと食べられるようになったというのでは駄目なのです。

 高齢化が進み、工芸メーカーでの後継者問題が叫ばれていますが、実は成り手がいないのではなく、そもそも自分たちが食べるのがやっとなので、雇いたくても雇えない状態なのです。別に高い給料でなくても。工芸をやりたいという若者は結構いるのです。継続的に収益を上げられる経営をすれば、この問題は解決するはずです。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

ピックアップコンテンツ

- PR -
世界基準と日本品質を極める Clients First with Innovation & Japan Quality

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆