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» 2016年07月22日 08時00分 UPDATE

知っておきたい医療のこと:血管病の治療と予防のポイント (1/2)

定期的な検査を行い、生活習慣病を予防するような心がけをしていたとしても、それだけで克服できるとは限らない。もし、「急変」に至った場合には、どうしたらよいのか。

[阿保義久,ITmedia]

心筋梗塞や脳卒中が発症しても回復できるタイミングがある

 心筋梗塞や脳梗塞の発症数は、年間30万人に上ると言われています。前回の連載では、こうした命にかかわる血管病であるこれらの疾患が、動脈硬化を背景として発生することについて解説しました。また、つい先ほどまで、何ら健康に問題のみられなかった方が、忽然と発症しあれよという間に死にいたる「急変」には、血栓症が関与していることについても説明しました。

 血栓症という急性疾患を起こす主な原因には、動脈硬化という生活習病に基づいた慢性疾患が潜んでいるわけですから、理論上は、日頃から動脈硬化を予防することで、心筋梗塞や脳梗塞を完全に根絶できることになります。しかしながら、現実はそんなに単純ではありません。

 定期的な検査を行い、生活習慣病を予防するような心がけをしていたとしても、現代社会にはさまざまなストレスがあり、食生活や定期的な運動などの生活習慣の改善についても、本人の心掛けだけで克服できるとは限りません。

 また、これ以外にも、遺伝的素因や、各個人それぞれの体質などもあります。それでは、もし、動脈硬化から血栓症となり、「急変」に至った場合には、どうしたらよいのでしょうか。非常に重篤な心筋梗塞や脳梗塞が突然発症し、手がつけられないまま、あっという間に「突然死」となってしまうこともありえます。

 しかしながら、通常、これらの疾患では発症してから、治療が奏功し生還できる時間帯が存在しています。つまり、速やかにしかるべき医療機関を受診して適切な検査・治療を受けることができれば、こうした状態に陥る前の状態に回復することが可能なのです。

 血栓症によって規定される病態には、治療が奏功する時間が極めて限られており、タイムリミットがあります。その期を逃さず、可及的速やかにアクションを起こせば、死亡や重篤な後遺症を回避できるのみならず、今までと何の遜色もない生活を取り戻すことが可能となるのです。

心筋梗塞から身を守るために

 例えば、心筋梗塞には、不安定狭心症と呼ばれる前駆症状があることが知られています。このレベルでカテーテル治療など適切な血行改善治療をすれば心筋梗塞を発症することなく健康な状態に復することができます。

 ところで、そもそも狭心症と心筋梗塞の違いは何でしょうか。どちらも心臓を養う冠動脈の血行が悪くなって心臓に酸素がいきわたらなくなる病態としては共通していますが、血管の閉塞の程度に違いがあります。

 狭心症は、血管に細い部分が生じているものの完全に閉塞していないので、一時的に症状がおさまることがあるのに対して、心筋梗塞は、血管が完全に閉塞して症状は進行していき、一般的には不可逆的に死に至ります。

 そして、狭心症の中でも、安定狭心症と呼ばれるタイプは引き続いて心筋梗塞になることはまずありませんが、不安定狭心症は治療をせずに放置しているといずれ心筋梗塞に進展してしまいます。安定狭心症と不安定狭心症の違いは、背景に血栓症が存在しているかどうかにあります。

 不安定狭心症は、心臓を養う冠動脈の中のプラークが破裂して血管の中に突如血栓が発生し血流を妨げてしまうことにより発症します。しかし、まだ血管が完全閉塞していないので、そこを流れる血流は届くべき心臓の組織にどうにか行き着いて、酸素が届きます。完全に血流すなわち酸素が遮断されて組織が壊死に陥る心筋梗塞の状態にはまだ至っていないわけです。

 このタイミングで治療が可能な医療機関を受診して、速やかに適切な治療を受ければ、ほとんど問題なく回復することが期待できます。ところが、不安定狭心症は、一旦症状が和らぐこともありますが、放置していると、早晩2回目、3回目とプラーク破裂が繰り返され、結果として血栓が血管を完全に閉塞してしまい、心筋梗塞が完成してしまうのです。

 安定狭心症は血栓症が背景にないため一時的に血行不良になっても時間が経つと回復するので問題ないのですが、狭心症や心筋梗塞の症状は基本的には同じで、安定狭心症か不安定狭心症かの区別は容易ではないことが多いので、これらに見られる典型的な症状が発生したら、軽いものであっても、また、一旦症状が消失しても、放置せずにできるだけ早く対応可能な医療機関を受診する必要があります。

狭心症、心筋梗塞の典型的な症状

 ここで、典型的な狭心症、心筋梗塞の症状を確認しておきましょう。典型的な症状は胸痛ですが、心臓由来の症状と考えにくいものに、みぞおちの痛みや、左肩から左腕にかけての痛みがあります。前者は胃の痛み、後者は首由来の痛みと考えて、発見が遅れることがあります。また、痛みが顎や右肩、背部にまで放散することもあるので注意が必要です。

 ただし、それらの症状が全て狭心症や心筋梗塞を引き起こすわけではありません。いずれの症状であっても、冷や汗や顔面蒼白などの切迫症状があるか、突然発症したものであるか、などが見分けるポイントになります。しかし、糖尿病や高齢の方は、実際心筋梗塞が発症しているのに無症状で診断が遅れる場合があるので、重症感がなくても怪しいと感じたら躊躇なく医療機関の門戸を叩くべきでしょう。

心筋梗塞発症後に回復が見込める許容時間

 極端に治療開始時期が遅くならなければ、カテーテル治療や血栓溶解薬の投与などの負担の少ない治療で回復が見込めます。一般的に、心筋梗塞の死亡例のほとんどは発症後3〜4時間以内に生じる致死的不整脈が死因になります。たとえ心筋梗塞になっていたとしても、発症後2時間以内に適切な治療が開始できれば究命が可能です。そして、適切な治療をして48時間を乗り越えれば回復が期待できます。

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