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» 2016年08月17日 07時17分 UPDATE

経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意:星空に新たな価値を (1/2)

月は肉眼でみると平面の円にしか見えないが、天体望遠鏡では立体的な球体に見える。いつもみんなの頭上にある、星のおもしろさに触れ、感動してほしい。

[聞き手:井上敬一、文:牧田真富果,ITmedia]

 ビクセンは1949年創業の天体望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡を中心とする総合光学機器メーカーだ。「宙ガール」というコンセプトを打ち出し、女性向けの星のイベントを開催するなど、星空に新たな価値を生み出している。企画・協力しているイベントは年間約200件。天体望遠鏡を使って星空を楽しんでもらうことで、幅広い層への楽しみ方を提案し、新たなファンを増やしている。星を見せる会社ビクセンの、新妻和重社長に話を聞いた。

あらゆるイベントへ参加し、コンシューマーの声を拾い上げる

ビクセン新妻和重社長

井上 会計事務所勤務からビクセンの代表取締役社長に就任された当時の話を聞かせてください。

新妻 大学を出てからは会計事務所で働いていたのですが、当時ビクセンの社長だった父に声をかけられて、社長に就任しました。私がビクセンに来た当時は、マーケティング力が不足している会社でした。営業部が情報を持ってくるB to Bの分野は得意でしたが、コンシューマーとのコミュニケーションができていませんでした。営業部が収集した小売店からの情報では、すでに顕在化したニーズしか読み取ることができず、潜在的なニーズを拾い上げることはできていませんでした。自分たちで新しい市場を作り上げていくためには、コンシューマーの声に耳を傾け、潜在的なニーズを拾い上げることが重要だと考えました。

井上 コンシューマーの声を拾い上げるため、具体的にはどのようなことから始めたのですか。

新妻 一般消費者とのコミュニケーションの機会を増やすため、積極的にイベントに出展するようになりました。現在では、年間約200以上のイベントに参加しています。以前から、星好きの人が集まるイベントへは参加していたのですが、そこには、もとから星が好きなコアな層しかいません。

 新たなファン層の獲得のためには星とは直接関係のない分野、例えば夏フェスやアウトドアイベントなどに参加する必要がありました。星が見たいとか、星が好きだという意識を持っていない人たちがいる場所へ出向いて行くようにしたんです。そういう人たちに星を見てもらい、星の楽しみ方を知ってもらえるように、さまざまな活動に取組み始めました。

星好きであるのに、星の知識は必要ない

井上 実際にイベントに参加してみて、お客様の反応はいかがでしたか。

新妻 もともと、星が嫌いだという人は、ほぼいないですよね。子どもの頃、天体望遠鏡に憧れを持っていた人も多いと思います。星はいつも近くにあり、興味をもってもらいやすい存在です。月は肉眼でみると平面の円にしか見えませんが、双眼鏡や天体望遠鏡では立体的な球体に見えるんです。イベントでの体験を通して、星のおもしろさに触れ、感動してくれる人がたくさんいました。

 問題は、嫌いじゃないけれど、星が好きだといえるようになるまでには大きな隔たりがあることです。「星が好き」というと、星に詳しくなければならないという固定概念がありますよ。そういった概念が邪魔をして、星が好きだとなかなかいってもらえない状況がありました。

井上 確かに、「天体望遠鏡」や「天体観測」というと、一般の人たちにとっては、少し遠い世界のようなイメージがありますよね。

新妻 そうなんです。そういった固定概念を打ち破ろうと提案したのが、「スターパーティ」です。星空を見るというと、遠くへ行って天体望遠鏡で見る、というイメージが真っ先に浮かぶと思います。でも、実際は、星はいつもみなさんの頭上にあり、いつでもどこでも星を楽しむことはできるんです。そのことに気付いていない人が多いんですよね。

 家のベランダからでも、木星や土星、火星などを見ることは可能です。天体望遠鏡でなくても、双眼鏡でも見ることができます。「スターパーティ」には、もっと手軽に、みんなで星空を楽しみましょうという思いを込めました。星好きであることに、星の知識は必要ないということを伝えたかったんです。

井上 御社が提案している「宙ガール」も、今話題になっていますよね。

新妻 星の知識は関係なく、"星"を題材に、"星"で気軽に遊ぶスタイルの提案が「スターパーティ」だとすると、「宙ガール」は積極的に天文情報にふれて楽しんでもらっています。

 もともと、天体望遠鏡市場は大きな市場ではありません。何も施策をしないでいると、ニッチな市場になってしまいます。市場拡大のためには、男性だけではなく、女性にも星空の素晴らしさに触れてもらうことが必要です。そういった考えのもと、「宙ガール」という一種のアイコンのようなものを弊社の企画部が作りました。定義を厳密にしているわけではなく、女性が星空を楽しむ「スタイル」を提案しています。

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