デジタル時代の次世代顧客接点の構築視点(1/3 ページ)

「デジタル」は、圧倒的な量と質の顧客との「直接の対話」を可能にした。成熟市場の中での、企業活動の競争力や新しい事業を生み出すきっかけになる。

» 2016年11月21日 07時21分 公開
Roland Berger

 「デジタル」は、圧倒的な量と質の顧客との「直接の対話」を可能にした。

 企業活動そのものが「真」の顧客起点での活動へと生まれ変わることを意味する。これまでの購買時の一瞬の付き合いだけでなく、使用といったシーンにも目をむけ、頻度高く、長く、顧客と繋がりを作っていくことがまず重要である。

 そして、繋がりの中で、顧客理解の解像度を上げ、顧客一人ひとりにあった“ぴったり” な商品・サービスを提供できれば、顧客の体験価値を高め、ファンを生み出すことができる。これらの活動が、成熟市場の中での、企業活動の競争力や新しい事業を生み出すきっかけになると考える。

次世代の顧客接点構築の必要性

次世代の顧客接点構築のサイクル

 多くの日本企業にとって、国内市場における顧客獲得競争は激化の一途を辿っている。国内の消費人口は減少し、限られたパイの奪い合いに頭を悩ます企業も多い。所得・年齢の二軸で捉えることができていた顧客は、価値観の多様化が進み、セグメントの細分化・再構成が進む。顧客の消費・生活行動においても、シェアリング・エコノミーやレンタル消費といった新たな消費形態が買い方や暮らし方を変革しており、消費の全体像を捉えることが益々難しくなってきている。このような状況下においては、如何に今まで以上の解像度で顧客を理解し、適切な打ち手を講じていくことができるかが企業間の競争力を左右する。

 一方、昨今のビッグデータ・IoT等の活用によるデジタル革新は、消費行動の幅を広げ、顧客に大きな利便性や新たな体験をもたらすとともに、一人ひとりの顧客の理解においても新たな機会を提供し出している。無印良品では、リアル店舗とWEBをシームレスに連携し、「購買前」「購買行動」「購買後」も含めて、個々の顧客とのゆるやかなつながりができる「MUJI passport」を構築し、顧客体験価値を最大化させている。裏側では、顧客の個人属性と購入データをビッグデータとして蓄積・分析することで、最新の売れ筋動向を反映したタイムリーな商品開発にも役立てている。

 このようにデジタルを巧く活用すれば、顧客と今まで以上に深く、頻度高く、リアルタイムに、インタラクティブに、繋がり続けることができる。また、「購買」の瞬間だけでなく、「使い方」や「選び方」といったシーンにも接点を広げ、顧客の理解を高めていくことができる。

 リアルの場に加え、デジタルを巧く活用し、顧客との関係・つながりを高め、顧客理解の解像度を上げ、一人ひとりにあった商品・サービスを提供していく次世代の顧客接点を構築していくことが求められるのである。

次世代の顧客接点構築のサイクル

 次世代の顧客接点の構築は、既存ビジネスの頑健性を担保することにつながる。顧客一人ひとりを理解し、商品・サービス全体での価値を上げれば、顧客のエンゲージメントを高め「ファン」を生み出す。新規顧客の獲得コストは既存顧客との関係を深めるよりも5.10倍かかると言われている中、ファンとなった顧客が、アンバサダーとなって顧客開拓にも貢献してくれる。そして、顧客理解が深まると、新たな事業進化・機会を生み出していくことにもつながってくる。

 では、次世代の顧客接点はどのように構築するのか。それには、大きく3 つのステップが存在する。

(1)頻度高く・長く、日常を通した「顧客との繋がりの構築・強化」

(2)顧客との繋がりを通じて得た情報を活用し、気づきを生む「個客単位の見える化」

(3)一人ひとりの顧客ニーズ・タイミングに応じた「顧客にとっての"ぴったり"の提供」

 そして、このサイクルを何度も回し、スパイラルアップさせていくことが、顧客との関係を太いものにし、ファンを増やし企業活動を成長・進化させていくのである。(図A、B参照)

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