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» 2016年12月21日 07時21分 UPDATE

「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記:IT活用で最大限の「おもてなし」――そのためにはシステム部門は良きユーザー部門であれ (1/3)

2020年に向けビジネスの拡大が見込める観光業界。その一方では、人手不足という課題も抱えている。少数精鋭で最大限の「おもてなし」を提供するためには、ITの活用が不可欠になる。

[聞き手:重富俊二(ガートナー ジャパン)、文:山下竜大,ITmedia]

 1869年に藤田伝三郎氏が大阪で創業した藤田伝三郎商社をルーツとし、1955年に藤田家の邸宅や庭園などを譲り受けることで設立された藤田観光。「健全な憩いの場と温かいサービスを提供することによって、潤いのある豊かな社会の実現に貢献したい」という創業の精神に基づき、ホテル業でなく「観光業」を本業としている強みを生かすことで、観光立国におけるリーディングカンパニーを目指している。

 主な事業としては、「ワシントンホテル」と「ホテルグレイスリー」の2つのホテルを運営するWHG事業、「箱根ホテル小涌園」や「箱根小涌園ユネッサン」などのリゾートホテルおよびレジャー施設を運営するリゾート事業、「ホテル椿山荘東京」や「太閤園」などの婚礼・宴会施設やラグジュアリーホテル、ゴルフ場などを運営するラグジュアリー&バンケット事業の3つを展開している。

経理部門と情報システム部門の両方で手腕を発揮し、現在は藤田観光の執行役員 企画グループ 情報システム室長を務める藁科卓也氏に、藤田観光における観光業の現状と未来、それに関わるIT戦略について聞いた。

観光客の増加に沸く一方で人手不足が深刻に

――2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックや観光立国に向けた各種政策により、国内外の観光客増加が見込まれ、客室数が足りなくなるといった懸念など、観光業を取り巻くビジネス環境は大きく動いている。こうした変化を、藤田観光ではどのように見ているのか。

藤田観光 執行役員 企画グループ 情報システム室長 藁科卓也氏

 東京オリンピック・パラリンピックの開催は、ホテル業界にとっては追い風であり、観光客は年々増加している。特に円安傾向が続いていることから、海外からの観光客が増えている状況だ。政府観光局の調べでは、2015年に初めて海外からの観光客が2000万人を超え、2016年は現時点で2000万人を超えている。

 2012年以降は前年比2桁パーセントの増加が続いており、ホテル業界も積極的に投資できる状況になっている。ただ、2020年までは、右肩上がりの増加が予測できるが、2020年以降に向けて他社との競争力を確保しておかなければならない。

 リーマンショックや震災時には、ホテル業界全体が価格競争に陥り、稼働を増やし売上を確保した時期があったが、今は、接客や施設の質が重要になってきている。ホテルの数を増やしていくのはもちろんだが、それ以上にサービス品質の向上を目指している。

 最大の課題となるのが、労働人口の減少に伴う人手不足だ。首都圏はまだよい方だが、地方は労働力の確保が難しくなってきている。そこで、業務を自動化したり、コミュニケーションを取りやすくする工夫したり、より一層のIT活用が不可欠と考えている。

――働き方改革を推進していると聞いたが、どのようなことに取り組んでいるのか。

 働き方改革は、中期経営計画(2015〜19)の人材戦略「多様な人材の育成と働きがいのある職場作り」を実現するために取り組んでいる。

 具体的には、労働時間の見直し(長時間労働の撲滅)、ジョブリターン制度などの永く働ける仕組みの強化とともに、ICT、IoTの利活用の推進をテーマに挙げており、「いつでも、どこでも、安全」なリモートワークの環境整備や、自動化処理・重複処理の排除などを進めている。

 また、ホテルの客室の清掃のスタッフは、短時間で働く人が多く、特に外国人が多い。そこでITを活用するなど、より良いコミュニケーションができる仕組みの構築を目指している。

 まだすべてがシステム化されているわけではないが、現在は便利なツールがたくさんあるので、それらを組み合わせることで対応している。先進的な例としては、客室に設置されているテレビのVOD(ビデオ・オン・デマンド)機能を利用して、清掃が終了したというチェックができるようになっている。タブレット端末やコミュニケーションツールを、作業負荷の軽減や人材育成に活用することも考えている。

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