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» 2017年01月30日 07時30分 UPDATE

視点:デジタル時代の新規事業着想法――IoT/AI/Fintechを「目的」とせず「手段」と捉えよ (1/3)

デジタル新技術を活用した新規事業開発をいまやらなければ時代に取り残されると危機感を抱いている企業も多いだろう。しかし、自らの優れた経営資源を最大限活かすことを原点に着想することを決して忘れてはならない。

[五十嵐雅之(ローランド・ベルガー),ITmedia]
Roland Berger

 「IoT/AIで新しいビジネスモデルを考えろ」 「Fintechの有望ベンチャーを見つけ出せ」、そのようなトップの号令に戸惑い、迷走し、何も結果が出せずに、最後は叱責を受ける。 ここ 1〜2年、あなたの会社でも起こっている光景ではないだろうか。

 最近、新聞 ・雑誌では、IoT/AI/Fintechなどデジタル新技術を活用した取組みや提携 ・M&A発表を数多く目にする。日本を代表する大企業の経営者であったとしても、いま何かやらなければ時代に取り残されると危機感を抱くのも無理は無い。実際、三菱重工業や三井物産など、大手企業の中期経営計画では、デジタル技術を活用した新規事業開発を推進し、次なる事業の柱に育成していく方針が数多く打ち出されている。これらの動きは総論としては至極正しい。 新規事業開発を怠れば、事業の新陳代謝が進まず長期的な企業存続に危険信号が点り、デジタル技術対応を怠ることは、将来的な競争力に壊滅的な打撃をもたらすリスクを抱える。

 2つの間違った思い込みが、我が国企業のデジタル技術を活用した新規事業開発の動きを思考停止状態に追い込んでいる。1つは IoT/AI/Fintechなど技術起点で新規事業を着想しようとしがちなこと、もう1つはベンチャー成功事例のビジネスモデルを摸倣すれば何かが生み出されるのではないかといった思い込みの呪縛から逃れ切れていないことにある。

 デジタル時代の新規事業開発であっても、自らの優れた経営資源を最大限活かすことを原点に着想することを決して忘れてはならない。これに、後述するデジタル技術活用型ビジネスモデルを複合的に組合せることで、事業構想を拡げ、その実現手段として IoT/AI/Fintechなど最新のデジタル技術を活用するといった着想法を持つことが肝要だ。

1、デジタル新技術の本質的な意義

 「世の中の変化を捉え、ビジネスモデルを不断且つ柔軟に進化させていく」。 時代を問わず、普遍的な企業経営の在り方であるが、先ず、昨今話題のデジタル新技術がどのような変化なのか正しく理解する必要がある。

 変化には、段階的で連続性のある変化と突発的で非連続な変化が存在する。 後者は、蒸気機関・電気・インターネットなどの「発明」があたり、企業経営の在り方のみならず、社会構造までも大きく変える。 法規制の大幅な改正も、非連続な変化の最たる例だ。

 例えば、1997年の地球温暖化防止京都会議にて採択された京都議定書により、排出権という概念が生まれ、企業が地球温暖化対策を義務として課された結果、環境ビジネスが急成長した。 非連続な変化は、新たな事業機会を創出すると共に、産業の新陳代謝を促す。 ときに特定の産業 ・ 企業は、社会的な存在意義を失うことすらある。

 さて、昨今話題のデジタル技術は、前者の連続性のある変化と捉えるべきだ。 いますぐに何かやらなくとも壊滅的な打撃こそ無いが、長い目でみれば真綿で首を絞められるように、気付いたら手遅れるになるような代物である。

 IoTは、センサー ・無線通信の低価格化 ・高性能化に伴い、飛躍的な数のモノがネットに接続されることが前提となる。莫大なデータを収集することが可能になった結果、バリューチェーンの水平 ・垂直方向やヒトとモノを 「つなぐ」 ことで、新たな付加価値を生み出す。

 シェアリングエコノミーの台頭や独インダストリー 4.0 がその代表格だが、よくよく考えると、それらは決して目新しい事ではない。民泊仲介サービスの Airbnbは 2008年創業、自動車配車サービスの Uberは 2009年創業、更にはコマツが建機に GPSやセンサーを搭載し、遠隔で稼働状況を監視することで、アフターサービスの拡大や販売 ・生産計画の最適化などを実現してきた KOMTRAXは 2001年から標準搭載開始、と IoT成功事例は何れもかなり “古い” 取組みである。

 このことは、IoTに限らない。 Fintechは、そもそも定義が曖昧であるが、ICT技術の進展に伴う新たな金融サービスと捉えれば、インターネットバンキングもその一部であり、且つ用語自体も 2000年代前半には存在したと言われている。 AIに至っては、1940〜50年代から研究が始まり、家電製品 ・テレビゲーム ・産業用ロボットなど幅広い製品分野で実用化され、アルゴリズムの地道な改良とコンピュータの処理技術向上と共に、実用化しうる範囲が徐々に拡がって来た。

 世の中のブームに惑わされずに、性能・コスト面から実用化のハードルが下がったデジタル技術が事業競争力強化・新規事業開発の 「手段」 として活用しうる状況になってきたのか、ゼロベースでじっくり考えることが企業経営に求められる。 また、これらデジタル技術は別物と捉えることなく、必要に応じて組み合わせることで、その活用効果が高まるという点も忘れてはならない。

 IoTは広義で捉えられることもあるが、本質的な機能は「つなぐ」ことにあり、データの収集 ・蓄積 ・統合で価値を生む。 AIはそれらビッグデータの解析を効率化 ・高度化するための技術であり、Fintechは IoT/AIを駆使しながら主にデータ活用で付加価値を創出する。 (図A参照)

デジタル新技術の位置づけ
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