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» 2017年02月20日 10時00分 UPDATE

NTT DATA Innovation Conference 2017レポート:生物がミトコンドリアを内蔵して進化したようにビジネスはITを組み込んで進化する (1/2)

カンブリア紀の生物は、ミトコンドリアを内蔵することで、急速に進化してきた。同じ状況が現在の企業組織にも起こっている。企業組織にITが組み込まれることで、市場革新が指数関数的に加速している。こうした状況下において、企業は何をすべきなのか。

[山下竜大,ITmedia]

生物多様化のエンジン「ミトコンドリア革命」

 「NTT DATA Innovation Conference 2017」の主催者講演に、NTTデータ 代表取締役社長の岩本敏男氏が登場した。今年のテーマは、「テクノロジーがもたらす混沌と革新」である。生物の誕生から進化までの絶え間なく変化が起きる時代と、進化し続けるIT業界を重ね合わせ、テクノロジーがいかに市場に混沌と革新を与えているのか、またNTTデータはどのような価値をもたらすことができるのかを講演した。

NTTデータ 代表取締役社長 岩本敏男氏

 「原始的な生物は、ミトコンドリアを"内蔵"することで、時間的、空間的制限を超越した。ミトコンドリアが、生命領域を押し広げたのである。そして現在、カンブリア紀の生物がミトコンドリアというエンジンを内蔵して進化したように、企業組織のあらゆるプロセスにITがエンジンとして組み込まれている。自覚している以上の"内的変化"が起きているのである」(岩本氏)

 生物の誕生は、約40億年前にさかのぼる。最初の生物は、単細胞で原始的なものだった。当初は数十種類に満たなかった生物が、爆発的に多様化し、現在ある動植物の原点となるものが出そろったのが約5億年前のカンブリア大爆発である。この背景にあるのが海水温の上昇により、海中に光合成をする生物が大量発生したことが挙げられる。これにより、窒素中心だった大気に酸素が混ざることになる。

 このとき、生物多様化のエンジンとなった重要な進化がある。「ミトコンドリア革命」である。酸素がない時代に生きていた生物は、細胞内に酸素が入ると、酸化により体内の成分が分化されてしまう嫌気性という特使があった。そこで、酸素を使いこなす細菌であるミトコンドリアを細胞内に取り込んだ。ミトコンドリアは、酸素からエネルギーを生成できる唯一の存在であり、生物の進化の「enabler」となった。

 「数十種類だった生物が、爆発的に多様化した結果、現在からは想像もつかない生物が誕生したが、誕生した生物の多くが淘汰され、一部の生物のみが進化を遂げた。まさに、"生き残る種とは、もっとも強いものではなく、もっとも知的なものでもない。それは、変化にもっともよく適応したものである"という、ダーウィンの進化論そのものであり、同じことが現在のIT分野にも起きている」(岩本氏)

ビジネスはどのように進化してきたのか

 企業組織にITが組み込まれることで、ビジネスはどのように進化しているのだろうか。岩本氏は、「変化には、"3つの競争の型"がある」と言う。「IO(Industrial Organization)型」「チェンバレン型」「シュンペーター型」の3つである。IO型とは、参入障壁が高く、新規企業が参加しにくい寡占状態である。例えば、GM、クライスラー、フォードの3社「ビッグ3」と呼ばれる米国の自動車業界である。

 次にチェンバレン型とは、複数企業が差別化を図りながら競争が激化する状態である。トヨタ、日産、ホンダ、マツダなどがしのぎを削る1980年代の日本の自動車業界である。最後にシュンペーター型とは、競争環境の不確実性が高い状態で、自動車業界であれば、ビッグ3や日本の自動車メーカーに加え、電気自動車メーカーであるテスラモーターズなどの新興勢力が競争を繰り広げている状況である。

 シュンペーター型の競争で重要なのは、技術革新が速いこと、顧客ニーズに変化が起きやすいこと、参入障壁が低いことなど。デジタル時代の市場革新は、指数関数的に加速しており、ITや自動車業界を超えて、あらゆる業界や分野に波及している。この状態が「X-Tech」と呼ばれる状況である。岩本氏は、「ITを内蔵したミトコンドリア企業が、多様なビジネスを展開している」と話す。

 X-Techの「X」は、さまざまな業界を意味している。例えば、マーケティングとITの融合は「MarTech」、法務とITの融合は「LegalTech」、医療とITの融合は「MediTech」、小売りとITの融合は「RetailTech」、人事とITの融合は「HRTech」、スポーツとITの融合は「SportTech」などである。こうした新たな競争環境により、ビジネスのルールは大きく変化する。

 「源義経は、なぜ強かったのか。答えは、"ルールを壊したから"である。義経は壇ノ浦の合戦で、"漕ぎ手は撃たず"というこれまでの戦のルールを壊すことで平家に勝利した。同じように、業務とITの融合により、ビジネスの"基本ルール"が大きく変化することになる」(岩本氏)

ITで攻め続けるGE、Amazon、Google

 変化をとらえ、変わり続ける企業の取り組みとして、まずは米国ゼネラル・エレクトリック(GE)が紹介された。GEでは、2015年に金融部門であるGEキャピタルを売却することで、事業の原点回帰へと急激に事業をシフトした。

 「GEキャピタルは、縮小傾向にあったものの、売上全体の3割を占める最大の事業ドメイン。また、2014年の利益は、全体の42%を占めていた。しかし、原点回帰という方針に基づき、製造分野とシナジー効果の高い分野だけを残し、その他の資産を売却することを決定した」(岩本氏)

 これによりGEでは、デジタル・インダストリアル・カンパニーへの変革を目指し、具体的には航空機サービス分野やデジタル鉄道システム、デジタル風力発電などに注力している。新しいGEの機構改革は、全社員がテクノロジーへの深い理解を持ち、進めている。

 次に、Amazonを紹介。Amazonでは、新たな顧客への提供価値を生み出すことで事業を拡大している。書籍のネット販売から事業を拡大したAmazonでは、デリバリーや実店舗、Amazon Goなど、バーチャルからリアルに事業を拡大。小売業のビジネスを次々と変革している。

 また、Dash/Dash ButtonやEchoなど、顧客のスムーズな消費を実現する専用デバイスを開発。さらに、全米40箇所に大規模配送センターや自社専用の貨物航空機など、小売業から物流業へも事業を拡大している。その他、決済サービスやクラウドシステム基盤、Amazon Payments、Amazon Web Servicesなども提供する。

 「Amazonでは、自社のサービスから生まれた機能を切り出して、顧客にサービスとして提供している。こうした取り組みにより、創立から18年で売上規模10兆円に事業を拡大した」(岩本氏)

 GoogleはYouTubeを買収することで、事業を大きく拡大した。買収したときのYouTubeの広告収入は1500万ドルで、16億5000万ドルという高額な買収額に見合わないといわれていた。しかし現在の広告収入は40億ドルに拡大しており、Googleは大きな利益を生み出している。

 「実は、NTTデータも国際決済分野の企業のM&Aにより、事業を大きく拡大している。現在は、海外送金も当たり前の時代である。この海外送金を下支えしているのは、SWIFTと呼ばれる国際標準仕様である。NTTデータでは、さかのぼること10年前の2007年2月に、ジェトロニクス日本法人をグループ傘下にした」(岩本氏)

 SWIFT認定のビジネスパートナーは、世界でも限られており、NTTデータでは、ジェトロニクス日本法人を傘下にすることで、SWIFTとの連携を強化することができた。一方、ジェトロニクス日本法人は、NTTデータのシステム構築技術を手に入れることができた。SWIFTを中核に、両社はシナジー効果を創出した。

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