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» 2017年07月10日 07時00分 UPDATE

飛躍:自動車産業で今後起こるDisruptiveな革新とシンガポールのポテンシャル――モビリティ・自動運転・デジタル化・EVの潮流 (4/4)

[山邉圭介, 石毛陽子,ITmedia]
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▼2.2.6 自動車業界の動き:各地域でMADEのトレンドが進展

 ・Mobility:現在、モビリティ関連産業には世界で4万人以上が従事している。中でもシェアードサービスはアジアを中心に拡大。特にUber、Grab、Ola、Didiなどが展開するライドシェアが中国やシンガポール、インドに急速に普及している。

 ・Autonomous:自動運転には主要OEM、サプライヤー、ベンチャー他、あらゆるプレイヤーが積極的に取り組んでいる。主要OEMは自動運転の実現ロードマップを示す中で、レベル4プロダクトを2021年に市場投入することを目指している。

 ・Digital:特にイギリスでオンラインの自動車販売チャネルが拡大しており、同国ではOEM6社が自社サイトでクルマをオンライン販売している。また、OEMによる人工知能やテレマティクス技術への研究資金の投入・提携の動きも活発化している。

 ・Electrified:グローバルにおけるEVシェアは12%となった。特に伸びが大きいのは、ドイツ(2015年の9%から、2016年に16%へ)、中国(2015年の7%から、2016年の10%へ)である。さらにOEMの製品ロードマップでは、今後全ての地域でEVの製造・販売が強化されていく見込みである。

3.シンガポールのポテンシャル

▼3.1 Automotive Disruption Radarから見えたシンガポールの先進性

 欧米を含めた10カ国調査の中でも、シンガポールの総合スコアはオランダに次ぐ2位。特にポイントが高かったのは、消費者の新しいトレンドに対する受容性、およびシェアードサービスの普及度である。

 シェアードサービスが普及した理由の一つに、シンガポールは所得の割に自動車普及率が低いことがあげられる(国民1千人あたり車両台数は約150台)。政府が渋滞を防ぐため、クルマの購入時に非常に高い車両購入権(COE)を課しており、その他登録料などを含めると本体価格の2〜3倍を支払うことになる。加えて、同国の消費者は非常に合理的な消費マインドを持っており、新しいモビリティや自動運転サービスが経済的にお得であれば、自家用車は買わなくてもよいと考えている人も多い。また、新しいサービスも便利であれば積極的に取り入れる先進性がある。

 実際、シンガポールにおいてUber・Grabが提供しているライドシェア・サービスの利用者は近年急拡大しており、国内のタクシー約2.7万台に対し、ライドシェアを提供する車は1.5万台以上に達している。ライドシェアはタクシーより価格が安いため、今までタクシーを使わずに電車やバスを使っていた人々も、ライドシェアを使うようになった。

▼3.2 シンガポール政府の積極的な支援

 政府は自国が抱える課題を解決し、また、アジアの技術拠点としてグローバルで生き残っていくため、積極的に自動車産業における技術革新、新しい事業モデルの導入を支援している。

 特に政府は、国土面積が限られる中、渋滞により生産性が低下するのを防ぐため、クルマの台数を減らすことができるカーシェア、ライドシェア、ロボットタクシー等などの新しいモビリティサービスの導入に積極的であり、法やインフラの整備、研究補助金の提供などの観点で手厚く支援している。

▼3.3 「Living Lab」としてのシンガポール

 シンガポールは自国を「Living Lab=生きた研究室」と呼んでいる。国土面積720平方キロ、人口550万人の小規模な都市国家は新しいことを試すのに適し、企業はトライ&エラーを繰り返しながら自社の技術やビジネスモデルをブラッシュアップすることができるからである。シンガポールのLibving Labでは、政府の支援と先進的・合理的な国民性を背景に、産官学の機能や知見を融合した新しい取り組みを行うことができるエコシステムが構築されている。

▼3.4 日本企業におけるシンガポールの活用

 シンガポールのエコシステムを活用することは、日本企業にとっても、先端技術へのアクセス、新しい技術やビジネスモデルの実証実験、有効なパートナーシップの構築、金銭的サポートの獲得など多くのメリットをもたらす。ASEANという成長市場への足がかりにもなる一方、グローバルに展開する先進技術をいち早く試すという活用の仕方も有効である。

 Automotive Disruption Radarは今後も継続的に測定し、発表していく。本稿が技術革新や消費者の変化による産業界全体の変革をいち早くつかみ、先手を打つための支援となれば幸いである。

著者プロフィール

▼山邉圭介(Keisuke Yamabe)

ローランド・ベルガー アジアジャパンデスク統括 シニア パートナー

一橋大学商学部卒業後、国内系コンサルティング・ファームを経て、ローランド・ベルガーに参画。

自動車、部品、建設・住宅、航空、消費財、など幅広い業界において、営業・マーケティング戦略、ブランド戦略、グローバル戦略、事業再生戦略の立案・実行支援に豊富な経験を持つ。

近年は、新興国戦略の分野で数多くのプロジェクトを手がける。


著者プロフィール

▼石毛陽子(Yoko Ishige)

ローランド・ベルガー シンガポール・ジャパンデスク プロジェクトマネージャー

東京大学文学部卒業後、日系証券会社に入社。日本・シンガポールにて経営企画・投資銀行業務に従事した後、ローランド・ベルガーに参画。

金融、商社、メーカーなど幅広いクライアントを対象に、成長戦略、市場参入戦略、技術戦略、営業・マーケティング戦略のプロジェクト経験を多数有する。2015年より、シンガポール・ジャパン・デスク在籍


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