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» 2017年08月28日 07時28分 公開

ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート:PRのポイントは「買う理由」をつくる――中身は同じでも包みの工夫で商品は売れる! (2/2)

[山下竜大,ITmedia]
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「買う理由」をつくり出す6つの法則

(1)おおやけ:「社会性」の担保

 社会問題をPRにつなげる事例として、P&Gがグローバルで展開している洗剤ブランド「アリエール」のインドでの取り組みがある。インドでは、父親が家事をしないことが社会的問題になっていた。そこで、P&Gでは、数年前より父親の家事参画をテーマにしたキャンペーンを実施している。父親に「洗濯ぐらいやります」と言わせるためのキャンペーンである。

 本田氏は、「このキャンペーンにより、初年度だけで数十万人のお父さんがキャンペーンサイトで『洗濯参加宣言』をした。実際に洗剤を購入するのはお母さんだが、お父さんに宣言させることが、アリエールを"買う理由"につながる。男女共同参画という社会問題をPRに利用することで、洗剤の効力をPRする以上の効果を上げた」と話す。

(2)ばったり:「偶然性」の演出

 SNSの登場と定着により、偶然性の演出の重要性が増している。アドテクノロジーやターゲティングテクノロジーなどの言葉を耳にしたことがあると思うが、SNSを利用していると、簡単にターゲティングされ、興味のありそうな情報がSNS上に表示される。Amazon.comなどのレコメンド機能も同じ仕組みである。

 利用者の関心事を察知して、関係のありそうな情報を狙って提供するテクノロジーとしては、かなり精度が向上している。余計な検索が不要なのでありがたい反面、あまりにも狙われ過ぎると、心理的に嫌悪を感じてしまうので注意が必要になる。

(3)おすみつき:「信頼性」の確保

 インフルエンサーマーケティング、あるいはアンバサダーという言葉がある。言い換えれば「第3者発信」である。メーカー自らが情報発信しても、消費者に信用してもらえない、そもそも影響力がないといった場合、インフルエンサーと呼ばれる人たちを戦略的に活用することが有効になる。この場合のインフルエンサーには、2つの種類がある。

 1つは「事実系のインフルエンサー」であり、もう1つは「共感系のインフルエンサー」である。事実系のインフルエンサーは、特定の分野において、専門家に実証してもらった結果を発信する。一方、共感系のインフルエンサーは、ユーチューバーやインスタグラマーなどのフォロワーに共感してもらえる情報を発信する。

 例えば、共感系のインフルエンサーの成功事例に、ユニクロの「UT Picks(ユーティー ピックス)」がある。UT Picksは、Tシャツのデザインではなく、デザインした「人」で選ぶ新たな買い方の提案である。Tシャツの購入者は、届いたTシャツをSNSに公開するので、さらに広まるという仕掛けになっている。

(4)そもそも:「普遍性」の視座

 PR戦略では、斬新なアイデアが必要と思いがちだが、あえて普遍的なテーマを利用した方が有効なときもある。P&Gが生理用品ブランド「オールウェイズ」で実施した「ライク・ア・ガール」キャンペーンでは、10代の女の子と8歳以下の女の子に、それぞれカメラの前で「走ってください、投げてください」とリクエストし、その動画を公開した。

 動画では、10代の女の子が、いわゆる女の子らしく、走ったり、投げたりするのに対し、8歳以下の女の子は、男の子顔負けで走ったり、投げたりする。本田氏は、「この差は、社会が暗黙のうちに"女の子らしさ"とはこういうことであると教え込んでいるため。これに気が付きましょうというのが、このキャンペーンのポイントである」と話す。

 「女の子らしさってなんだろう?」という「そもそも論」を世に問うキャンペーンとして大いに支持され、ブランド好意度も向上した。普遍的な問題を世に問うことも、時と場合によっては有効になる。原点回帰的な発信もPRの1つである。

(5)しみじみ:「当事者性」の醸成

 「"ストーリーテリング"という言葉があるが、感情に訴えかけないと人は動かない。ただし、どのような場合でも、"お涙ちょうだい"でよいかといえばそうではない。最大のポイントは、情報に接している人に感情移入させ、自分ゴト化させることである」と本田氏は語る。

 例えばフィリップスのキャンペーンでは、呼吸器疾患を抱える歌うことが好きな患者を約20人集め、英国のカリスマ指揮者が2週間、歌のトレーニングを実施して、米国のアポロシアターで歌うところまでを動画で公開した。このチャレンジを、フィリップスの呼吸器がサポートしている。

 このキャンペーンは、医療分野におけるブランディングの一環として大成功を果たした。うまい役者に演じさせるよりも、リアルな人たちに行動で語ってもらう方が、PR効果が期待できることもある。

(6)かけてとく:「機知性」の発揮

 「かけてとく」とは、日本で言えば「とんち」である。高い教養とユーモアセンスが求められ、機知が必要とされる。本田氏は、「ソーシャルメディア時代には、世の中で起きたことを、数日間ほったらかしにしたり、1カ月後にリアクションしたりするのでは遅すぎる。企業の広報対応は、数日〜1カ月程度かかることもあるが、現在のPRは、リアルタイム性が求められ、さらに“とんち”が求められる」と語る。

 例えば、LGBTの聖地であるサンフランシスコのバーガーキングで、LGBTの象徴である虹色のパッケージに包まれた「プラウドワッパー」という新製品を販売した。パッケージの裏側に「中身はみんな同じ」と書いてあり、実はパッケージが違うだけで通常販売している「ワッパー」だった。これは「外見はいろいろでも人間はみんな中身は一緒」というメッセージを届け、「なるほど」と思わせたキャンペーンであった。

 本田氏は、「バーガーキングのような、“やられた!”とか、“一本取られた!”ととか思わせるPRは、間違えると炎上することもあるが、人々の印象に残り、ソーシャルでも拡散されるなど非常に高い効果が期待できる」と話す。

ソーシャルメディア時代の危機管理

 攻めのPRである6つのルールを紹介してきた。これは大事なのだが、日本のPRでは最近炎上することが多く、守りも忘れてはいけない。ただし成功している事例もあるので紹介する。

 P&Gの消臭剤「ファブリーズ」は、「ファブリーズ対くさや」というCMで炎上した。すぐにくさやの生産者と対話し、CM放送を取りやめたことで炎上は鎮火した。その後、P&Gでは、公式にくさやの生産者と協力して、ファブリーズとくさやがどちらもPRできる動画を作成して公開した。

 本田氏は、「この動画により、P&Gはピンチをチャンスに変えることに成功した。日本の企業は、製品もサービスも優れているが、PRを上手に活用できていない企業が多く、日本全体で、PR力を底上げしていかなければならない。ただし倫理観を養うことも必要であり、攻めと守りのバランスが重要になる」と締めくくった。

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