連載
» 2017年09月12日 07時15分 公開

視点:「2027年の消費者」〜多様化×音声・対話AIが及ぼすインパクト (2/3)

[福田稔,ITmedia]
Roland Berger

 このような中で企業として重要なことは、ビジネスモデルおよびマーケティングを変化に対応させることである。日本の消費財企業の多くが、これまでテレビ広告を中心としたマスマーケティングと営業・チャネル戦略を武器に事業展開してきたが、フォロアー層の消滅を受け、今後は本格的にSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を明確にした戦略とデジタルマーケティングが重要となる。

 10年後の2027年は、団塊の世代が80歳となり、ミレニアル世代が30〜40代となり市場の中心となるタイミングである。ミレニアル世代はマスコミなどで一口に語られることが多いが、実態は複数の消費者セグメントに分かれている。弊社の8つのセグメントに従えば、ミレニアル世代には、ライフスタイル志向層、先進・革新志向層、快楽主義層、社会志向層が多い。これら4つのセグメントは、価値観、消費行動、利用するメディア、デジタルの使い方も異なるので、一億総中流と一くくりに捉えることができた団塊世代のフォロアー層と同じような感覚でミレニアル世代を捉えようとすると失敗する。実務上は、価値観のセグメンテーションをベースに、年代・居住地域・収入などのデモグラフィック情報も掛け合わせて、さらに細かいメッシュで消費者を捉えることが必要である。なぜなら、価値観が同じ先進・革新志向層の中でも、例えばSNSの利用では30代はFacebookが多いのに対し10代はSnapchatが多い(米国)など、デモグラフィックの差異により細かな違いが存在するからである。

デジタルライフにおける音声革命

 今後10年間を占う上で、これまでと変わらず重要な因子としてデジタル化があるが、中でも最もインパクトのあるドライバーは音声・対話AIの進化と普及である。アマゾンが開発した音声認証インタフェースのアレクサは、既に家庭用スピーカーのアマゾンエコーに搭載され全米を席巻している。アレクサは2つの側面で人々のデジタルライフを革新する。

 1つ目は「音声」を入力インタフェースとしている点だ。過去スマートフォンがネット人口を爆発的に増やした背景は、タッチパネルという入力インタフェースがキーボードよりも使いやすく日常生活にフィットしていたからである。その点「音声」はタッチパネルを超える可能性を持っている。高齢者だけでなくほとんどの人に優しいし、何よりも“ながら操作”や家電への入力インタフェースとして相性が良い。アレクサ対応のIoT家電は今後次々と登場し、家庭でのデジタルライフを大きく変えるだろう。

 例えば、多くの主婦が家庭でのネット利用をスマートフォンに頼っているが、スマートフォンは両手がふさがっている状態では使えないし、長時間使っていると目が疲れるというデメリットがある。ここにアレクサ搭載家電が登場すると、例えば料理のレシピはアマゾンエコーが声で丁寧に解説してくれる(「次は何を入れれば良いの、アレクサ?」と聞くと「塩小さじ一杯とごま油を少々ね」と教えてくれるように)、また掃除をしながら「明日の天気は?」と聞くと、アレクサ対応のテレビが画面に天気予報を表示してくれるといった具合にである。

 アレクサの第2の特徴は、「スキル」という機能にある。この機能は名称と指示内容を組み合わせてアレクサを操作する機能であり、アプリのように自由に開発できアレクサに実装できる。例えば、「お風呂を21時に沸かして」といった指示内容をスキルとして開発すれば、アレクサは指示を理解・実行できるようになる。アマゾンはアレクサの仕様そしてスキルの開発をオープンプラットフォームとして展開しているため、現在スキルを開発する企業は急増しており、直近1年間で数千のスキルが開発されている。この状況はオープンソースが普及しWebアプリケーション・サービスの開発が進展した2000年代前半、スマートフォンが普及しスマホアプリ開発が進展した2010年代前半と大変よく似た状況である。

 さて、この「音声・対話AI」と「スキル」を実装したIoT家電やデバイスが普及すると、我々の消費行動にどのようなインパクトをもたらすのだろうか。

 まず第1に、ネット購買のユーザー体験が劇的に進化し、消費行動におけるEC化率が一段と高まることがある。音声認識可能なIoT端末が普及すると、あらゆる日用品の使用・在庫状況は随時モニタリングされるようになる。冷蔵庫の卵が無くなりそうになれば、アレクサ対応の冷蔵庫はその旨を家主に知らせ、ネットスーパーがすぐに自宅に届けるという具合だ。ユーザーが能動的にいつでもWebで買えるという現在のECでも十分に便利だが、これからは「いつものあれ買っておいて、アレクサ」で全て済んでしまう世の中になる。まさにコンシェルジェがコモディティ化し普及する時代が目の前に来ているのだ。

 また、日用品の購買に限らず、ファッションなどの嗜好(しこう)品の分野においても、音声入力を利用した購買は爆発的に増えると思われる。音声・対話AIの普及は、ECにおける「視認性」「提案力」「エンターテインメント性」を高め、ユーザー体験を革新するからである。例えば、アレクサに「私にあう今シーズン流行のコートを教えて」と頼めば、アレクサ対応のテレビやディスプレイに、スマートフォンよりもはるかに見やすい大きさやビジュアルで商品が紹介されるようになる。アパレルECのボトルネックになりがちな、検索の手間やビジュアル・サイズ表示の限界も、スマホに比べて格段に改善される。これにVRも合わせれば、家で実際の利用シーンに合わせて試すような仮想試着をすることも可能となる。また、アメリカや中国では、友人や職場仲間で集まって気になるファッションアイテムを大量にECで注文して、みなでわいわい試着大会を楽しみ買わないものは返品するといったような新しい消費行動が出てきている。このような友人や家族とのホームファッションショーのような消費行動は、音声・対話AI、IoT家電との相性がよい。アマゾンは2017年4月に、カメラ付きのアマゾンエコー「エコールック」を発表し、ユーザーの自撮りとAIを活用したファッションアドバイザーサービスを開始しているが、今後このようなファッションテックによる新しい楽しさの提案、ユーザ体験の革新はますます進展するだろう。

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