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» 2017年10月04日 07時04分 公開

あなたは大丈夫? 指示待ち人間を作るリーダー、5つのタイプ:タイプ1 聞き手の能力に頼りすぎるリーダー (2/2)

[藤田智弥,ITmedia]
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 “すみません”と声がかかる前に、先回りしてサービスをする。この指針を提示したら、「グラスが空く前にワインを注ぐ」「空いた皿は下げる」「メニューを閉じたら、オーダーを取りに行く」など、自分たちで考えて行動することができるようになったという

 この指針の素晴らしさは、“すみません”と声が掛かった数で、目指す目的が達成されたかどうかを確認することができる点にある。自分たちのやっていることが結果につながっているかどうかをリアルタイムで確認できると、やる気につながる。

質問できる雰囲気か?

 指針をどこまで具体的に表現するかは、メンバーと共有できているコンテクストの量に依存する。こんな仕事をしている私でも、具体的なレベルが一発OKになることのほうが珍しい。対話をしながら、すり合わせる必要があるのだ。

 以前勤めていた会社のOBOG会を開催することになり、集客をボランティアで手伝うことになった。サポートしてくれる幹事を募るにあたり、「集客」ではざっくりしているので、「声がけと勧誘」という表現にして募集した。ところが、「どんな役割が期待されているのか?」という問い合わせが複数きた。「声がけと勧誘」では、まだまだざっくりしすぎだったのだ。

 そこで、「知らなくて行けなかったという同期を、限りなくゼロにする。迷っている同期に、一緒に行こうと誘う」と具体的な表現にしてみた。すると、質問した人たちも快く引き受けてくれるようになった。

 ここで特筆したいのは、質問したのが全員先輩だったという点だ。後輩からは1つも質問がなかった。先輩とは共有コンテクストが少なくて、後輩とは共有コンテクストが多かったわけではあるまい。後輩にとっては、先輩である私に質問し難い雰囲気があったのだと思う。

 これは、気軽に質問できる関係が成立していないと、すり合わせの対話が成立しないことを示唆している。「質問はあるか?」と聞いたところで、「やってみないと分からない」くらいの回答しか得られないだろう。

確認しているか?

 では、どうしたら対話が成立するのだろうか? まずは、リーダーが積極的にメンバーの理解度を確認する「質問」を投げかけることから始めてほしい。「“すみません”と声がかかる前に、先回りしてサービスをするために、◯◯さんだったら何をする?」と問いかける。

 簡単そうに聞こえるだろう。しかし、これが結構な確率で、「分からない」とあっさり言われる。「人を増やす」などと期待とは違う答えが返ってくる。かなりがっかりするだろう。「この人には無理なんじゃないか」と能力を疑いたくなることもある。だが、メンバーの回答が自分の期待するレベルでないのなら、指針をより具体的にするしかない。

 どのくらい具体的な指針が適しているのかを見いだすのは、リーダーの質問力にかかっている。相手のレベルに合わせた質問ができれば、期待するような回答が得られる。具体的な指針へのヒントも得られる。ところがこれは、簡単ではない。質問することを仕事とする私も、悪戦苦闘の毎日だ。詳説したいところだが、質問力については本連載で改めて取り上げることにする。

 指針を気分次第でコロコロ変えるのはよくない。「コロコロと変わる指針など、重要であるはずがない」という印象をメンバーに与える。しかし、チームやメンバーが成熟してくると、共有するコンテクストも増えてくる。そうしたら、指針を少しずつざっくりさせていくことも重要だ。適正レベルよりも具体的すぎる指針だと、メンバーにとっては自分の裁量で判断できることが少なすぎて、面白くない。

初心者として向き合おう

 指示待ち人間は、超がつくほど簡単に作ることができる。聞き手の能力に頼りすぎるリーダーは、日々知らず知らずに指示待ち人間を量産しているのだ。まずはこの事実と向き合ってほしい。

 現代のリーダーたちは、私も含めて、組織における共有コンテクストが豊富な時代に育った。だから、聞き手の能力に依存できたのだ。プレゼンやロジカルシンキングの研修は受けても、話し手のスキルアップを目指した研修などあるはずもなかった。話し手としての能力を開発する機会のないままにリーダーになったとしても、不思議ではない。話し手としては初心者なのだ。上手にできなくても、失敗しても仕方がない。まだまだ私も、いろいろ試しながらの修行中だ。

 「他人は変えられない、自分が変わるしかない」という人がいる。そうは言われても、メンバーの成長を促すことはリーダーの仕事だ。自分だけ変わって、周りが変わらないというのでは困る。それが本音だろう。しかし、もし自分に原因があるのであれば、変えられない他人に働きかける必要はない。自分のことは自分次第だ。自分のやり方を工夫すればいいだけだと考えれば、気が楽になるだろう。

 次回(第2回)のテーマは「叱れないリーダー」。ルール(指針)に反したメンバーに対して、リーダーはどう対処すべきか。現場のエピソードを交えながらお話ししたい。

藤田智弥(ふじた ちひろ)

アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)にて、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)プロジェクトを中心に、コンサルタントとして5年の実務を経験後、ベンチャービジネスに転じ、2年で単年度黒字、4年で累損を一掃する100億円規模のビジネス立ち上げを経験する。

その後、ソフトバンクモバイル、ローソン、マクドナルド、アマゾンと転じ、経営層のマーケティング領域の意思決定をサポート。 孫正義氏、新浪剛史氏、原田泳幸氏の意思決定や組織運営を間近にみるなかで、ゴール設定と達成イメージの言語化、視覚化の重要性を体感する。事業会社における経験はトータル19年。現在は、従業員、ビジネスパートナー、顧客、投資家、コミュニティー、家族など、みんなが社長に力を貸したくなる経営を提案し、「社長の360°サポーター化」を推進している。

慶應義塾大学卒。ビジネス・コーチ。アンガーマネジメントコンサルタントTM。マーケティング・コンサルタント。


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