タイプ2 叱れないリーダーあなたは大丈夫? 指示待ち人間を作るリーダー、5つのタイプ(2/2 ページ)

» 2017年11月01日 07時20分 公開
[藤田智弥ITmedia]
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 私が昨年まで勤めていたアマゾンには、明文化されたルールがたくさんあった。そして、ほぼ全てのルールに「until you know better(あなたがもっとよい方法をみつけるまでは)」という一文が添えられていた。この一文から、あなたはどのような印象を受けるだろうか?

 「もっとよい方法があれば、変えてほしい」「変えたければ、自分で考えてほしい」「常によりよい方法を模索してほしい」「自分にアイデアがないなら、従ってほしい」。要望としては、どれも含まれているように思う。ポイントは、あなたも意思決定に関わっているのだと伝えること。そして、一緒に決めている方針やルールの運用には、積極的に協力してほしいと要望することだ。

励ましているか?

 叱ると相手は嫌がる。だから、できれば叱りたくない。私もそう思っていた。しかし、4つ目の要素を加えると、相手は嫌がるどころか歓迎してくれる。

 マクドナルドの店舗研修でのこと。40代管理職の私は、大学生アルバイトのBさんに叱られた。コーヒーを注文した顧客には、砂糖とミルクの利用有無を尋ね、コンディメント(砂糖、ミルク、マドラー)をセットする。レジのオペレーションの基本だ。だがこれが、なかなかできない。他のことができるようになっても、これだけは忘れてしまう。

 「あ、またやった」と落ち込みかけたそのとき、Bさんから「藤田さん、今日が初日ですよね? もうこんなにできるようになったのですね。あとは、コンディメントができたら、完璧です!」の言葉。うれしくて、泣きそうになった。

 Bさんは、「コンディメントに課題があるよ。できるようになろうね」と要望を伝えている。できていないことを「叱れる」リーダーだ。その上で、「初日にここまでできるようになったのだから、大丈夫。コンディメントもできるようになるよ」と励ましている。励まされた私は、叱られたというよりも、褒められたくらいの気分だった。この「励まし」こそが、相手に歓迎されるための4つ目の要素だ。

観察しているか?

 「私の進捗をみてくれている。課題を理解してくれている。可能性を信じてくれている」と、相手が感じることが励ましだ。「応援しているよ」「大丈夫だよ」「きみならできる」と、声を掛けるだけでは励ませない。

 「コンディメントを忘れちゃうね。顧客に利用の有無を尋ねるのは、どうしてだと思う? コーヒーを注文する顧客にはコンディメントを徹底しよう。大丈夫、藤田さんならできるよ」。4つの要素を並べただけの叱り方だったら、泣きそうなほどうれしくはなかっただろう。

 「しまった」と思ったタイミングで、声をかけてくれたBさん。その言動から、「理解されている」と感じた。コンディメント以外はできていること。コンディメントの課題を認識し、取り組んでいること。できなくて落ち込んでいること。Bさんは全部理解してくれている。私は「見守られている」と感じ、励まされたのだ。Bさんの愛情ある観察が、それを可能にしていた。

興味と関心をもって向き合おう

 先日の世界体操で、印象的だったシーンがある。けがで棄権する内村選手が、後輩の白井選手の肩をポンとたたいて退場するシーンだ。白井選手は、「信じている。任せたよ」というメッセージを受け取ったのではないだろうか。そして彼は個人総合で銅メダルを獲得する。

 普段から、相手に興味と関心をもって向き合っていれば、言葉にしなくても伝わる。逆に、相手の状況を理解しないままにかける言葉は、白けさせるだけなので、注意が必要だ。

 指示待ち人間を作らない叱り方には、エネルギーがいる。時間的にも、体力的にも、精神的にも、叱る余裕なんてないと感じる毎日かもしれない。しかし、余裕のあるときにだけ叱っていると、「重要ではない」というメッセージになり、指示待ち人間を作ってしまう。

 指示待ち人間を作らないためには、普段から興味と関心をもってメンバーを観察し、対話し、そして一貫した姿勢で叱らなければならない。難易度が高いと思うかもしれない。でも、大丈夫。大学生にできるのだから、私たちにもできるはずだ。

 次回(第3回)のテーマは「むやみに褒めるリーダー」。指示待ち人間を作る褒め方と、主体性を育てる褒め方だ。現場のエピソードを交えながらお話ししたい。

藤田 智弥(ふじた ちひろ)

アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)にて、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)プロジェクトを中心に、コンサルタントとして5年の実務を経験後、ベンチャービジネスに転じ、2年で単年度黒字、4年で累損を一掃する100億円規模のビジネス立ち上げを経験する。

その後、ソフトバンクモバイル、ローソン、マクドナルド、アマゾンと転じ、経営層のマーケティング領域の意思決定をサポート。 孫正義氏、新浪剛史氏、原田泳幸氏の意思決定や組織運営を間近にみるなかで、ゴール設定と達成イメージの言語化、視覚化の重要性を体感する。事業会社における経験はトータル19年。現在は、従業員、ビジネスパートナー、顧客、投資家、コミュニティー、家族など、みんなが社長に力を貸したくなる経営を提案し、「社長の360°サポーター化」を推進している。

慶應義塾大学卒。ビジネス・コーチ。アンガーマネジメントコンサルタントTM。マーケティング・コンサルタント。


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