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» 2018年01月16日 07時21分 公開

ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート:容赦なく襲い掛かるAI化、オートメーション化――EC、通販事業は無視できない存在に (2/2)

[山下竜大,ITmedia]
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 「人間には模様のイラスト画像にしか見えないものが、AIには“ヒトデ”“野球のボール”“ギター”などと、首をかしげるような人間ではありえない間違いをすことがある。こうした驚くべき誤認をするのだが、人間を超える正答率は今後さらに向上し、ほとんどの作業はAIで置き換えられることに合理性があるのは避けられない。しかし、人間でないと難しいハイタッチコミュニケーションの領域は残されることも間違いない」(川部氏)

リピートで成り立つEC、通販ビジネス

 EC、通販ビジネスは、基本的にはリピートビジネスである。魅力的な商品やサービスにより、顧客から高い満足度を得て、リピート化し、長期にわたり継続的に利用してもらうことで収益を増やすことができる。EC、通販ビジネスのリピートモデルには、「単品リピート型」「クロスセルリピート型」「ショップリピート型」の3つがある。

 単品リピート型は、気に入ったサプリメントや化粧品を繰り返し購入するモデル。クロスセルリピート型は、ある化粧品が気に入った場合、他のラインアップの商品も合わせて購入するモデル。ショップリピート型は、商品そのものではなく、顧客の目利きとしての魅力度、満足度を高めて購入するモデルである。

 基本的にリピートビジネスは、初期投資コストでマイナス利益からのスタートになるが、リピート売り上げにより利益が積み上がり、損益分岐点を経てプラス転換となる。例えば、マキアレイベルの美容液ファンデーションは、20〜80代まで幅広い顧客に利用されている。美容液ファンデーションの分野では、13年連続で売り上げナンバーワンを誇る。

 「この美容液ファンデーションは、定価が4000円程度だが、初回購入時に限り1980円で販売している。これは入口商品であり、1度購入してもらっただけでは赤字である。しかし、初回購入者がリピート購入してくれて、さらに定期購入をしてもらえれば、ある時点で損益分岐点を超えることができる」(川部氏)

 売り上げを向上させるアプローチは、たくさん買う(Up Selling)、何度も買う(Repeat Selling)、高いものを買う(Up Grading)、他にも買う(Cross Selling)、他の人も買う(Referral Selling)の5つ。また、単品通販事業の収益モデルは、新規集客効率、リピート引き上げ効率、リピート定着効率の3つに集約される。

 「新規集客効率では、まずは商品に興味を持ってもらい、その興味が購入条件を超えるように設計する。また、リピート引き上げ効率では、商品への理解が完全ではない顧客を正しい方向に誘導し、継続の意向を醸成する。リピート定着効率では、一定の理解と継続の意向を確立した顧客の関心を維持し、ロイヤリティーの強化を目指す」(川部氏)。

 商品を購入した顧客はきめ細かなフォローをしなければ、自分の解釈で商品を使うため、商品のポテンシャルを引き出せないこともある。すると、「この商品は効果がない」と評価されてしまう。そこでCRMを活用し、正しい使い方で商品のポテンシャルを引き出し、正しい評価に導き、リピート継続率を最大限に向上させることが必要になる。

 商品の同梱(どうこん)や別送のDM、受注時のインバウンド、後日のアウトバウンドなど、最適な手段とタイミングで効果的に機能する一連のフローを設計することが必要になる。特に、継続の意向を醸成するためには、商品のポテンシャルを引き出すための最善のコミュニケーションを考えることが必要になる。

 「商品を使った瞬間に効果を感じることができるのか、翌日に違いが分かるのか、継続して利用することで効果を実感するのか、自分だけでなく他の人も感じる効果なのかなど、商品ならではの効果的なタイミングを見極めたコミュニケーションを設計することが最大のポイントになる」(川部氏)

顧客の属性で広告メディアを変更

 2014年の総務省の調査では、平日にテレビを見る人は約85%、ネットを使う人が約70%、新聞を読む人は約30%である、この結果から、情報を得るのは新聞ではなくネットであるという論調になる。ただ年代別で見ると、10代、20代はネットが多く、新聞はほとんど読んでいない。一方、60代以上になると、ネットが少なく、新聞が多くなる。

 「面白いのは、60代未満は、年々ネットの利用率が増えるのに対し、60代以上はネットと新聞の割合がほとんど変わらないこと。ネットと新聞のどちらを信じるかも、40代以下はネットを信じるが、60代以上は新聞やテレビなどを信じる傾向にある。つまり、商品を誰に売りたいかで、取り扱うメディアを変える必要がある」(川部氏)

 また、オンライン広告も大きく変化しており、昔のような純広告は減少している。川部氏は、「興味深いのがFacebookの類似オーディエンス広告である。類似オーディエンス広告は、Facebook上のあらゆる行動、つながりから、設定したターゲットと類似したオーディエンスにアプローチする機能である。これまでのセグメント広告では、実際のマッチング精度は3割程度といわれているが、類似オーディエンス広告は精度が非常に高く、一説では7割程度のマッチング精度はあるのではないか」と言う。

 広告による新規獲得からリピート引き上げ効率までは、一連のコミュニケーションフローに集約される。例えば、顧客がWebサイトに1分以上滞在したら、広告メールを配信し、メールを開封したら、チャットツールを立ち上げて、その旨を営業担当者に通知する。この一連の流れを自動化するのがマーケティングオートメーション(MA)である。

 現在、さまざまなMAツールが提供されているが、MAツールがコンダクターのようになり、企業システムとコミュニケーションツールをAPIで連携できる。例えばLINEでも、開封確認によるMAのトリガー起動やコミュニケーションフローの出し分けが可能。ただし、利用負担コストは随分下がっては来たものの、まだまだ大手企業しか利用しにくい状況である。

 川部氏は、「英語圏では、無料に近いコストで利用できるサービスが多数登場している。MAツールはじめ、オートメーション化は、すでに限られた人たちのものではなくなりつつある。日本でも、事業の全体像を把握している人と、技術を把握している人がチームを作り、実用レベルのサービスを開発したいと願っている」と話し講演を終えた。

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