タイプ5 れんがを積むだけのリーダーあなたは大丈夫? 指示待ち人間を作るリーダー、5つのタイプ(2/2 ページ)

» 2018年02月07日 07時07分 公開
[藤田智弥ITmedia]
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 リーダーの課題とメンバーの課題は、不思議なくらいに一致する。メンバーはリーダーの背中を見て手本にするため、当たり前といえば当たり前だ。メンバーは、あなたの鏡になる。メンバーが指示待ち人間の場合、残念ながらリーダーであるあなたも指示待ち人間の可能性が高い。

仕事は楽しいか?

 指示待ち人間になっているかどうかを確認する方法を、もう1つ紹介しよう。「仕事は楽しいか?」と自問してみることだ。

 炎天下でれんがを積む3人の職人のうち、最も仕事を楽しんでいるのは誰だろうか? 「教会を建てて、人々を幸せにする」と答えた3人目の職人だろう。人のために役立ちたい、社会に貢献したいという利他欲求が満たされている。

 「命令されて、れんがを積んでいる」、「壁を作って、家族を養っている」と答えた職人は、罰せられたり、家族を養えなくなったりする恐怖から仕事をしている。マズローの欲求5段階説(タイプ3 むやみに褒めるリーダー参照)でいうと、低次の安全欲求しか満たされていない。

 仕事が楽しくないと感じたら、「学びたい、成長したい(自己実現欲求)」「人のために役立ちたい、社会に貢献したい(利他欲求)」という高次の欲求が満たされていない可能性が大きい。

 個人の欲求と企業の目的が完全に一致することはないだろう。だが、優秀なリーダーは2つの重なりを見つけたり、作ったりして自分の高次欲求を満たす工夫をする。れんが積みという仕事にも、「人々の心を救う」という高次欲求との重なりを見いだせるのだ。

 一方、指示待ち人間のリーダーは仕事を楽しんでいない。個人の欲求と企業の目的に、重なりを見いだせないのだ。「仕事は仕事。楽しくても楽しくなくても、やるのが当たり前」そう言うあなたは「壁を作って、家族を養っている」職人に近い存在だ。あなたの下に、「人々の心を救う」という目的意識を持った職人は、なかなか育たないだろう。

出来上がった指示待ち人間は、どう扱うか?

 ここまで、指示待ち人間を作るリーダーをタイプ別に紹介してきた。聞き手の能力に頼りすぎるリーダー、叱れないリーダー、むやみに褒めるリーダー、任せきれないリーダー、れんがを積むだけのリーダーの5タイプだ。

 どのタイプにも当てはまらないのに、あなたは指示待ち人間に悩まされているのかもしれない。新たな部署に着任したら、待っていたのは指示待ち人間の集団だった。新メンバーを迎え入れたら、もうすっかり指示待ち人間だった。ついついため息も出るだろう。こういう場合は、いったい何から手を付ければいいのだろうか?

 新たに仕事をすることになったメンバー全員と、できるだけ早いタイミングで1対1の面談を設定することをお勧めしたい。そして、メンバーがどんな価値観を持ち、何に喜びを見つけ、どんな目的を持って人生を過ごしたいのかを理解してほしい。

 「仕事は楽しいか?」「どんなときに楽しいか?」「仕事をする上で、大切にしていることは?」「5年後、10年度、どんな自分になっていたら幸せだと思うか?」などの質問が、手掛かりをくれるはずだ。

 メンバーがなりたい自分になれるように、どんな学びや成長の機会を与えられるのか? メンバーの価値観にあった他者への貢献ができるように、どんな機会を与えられるのか? リーダーには、この2つの問いへの答えを探してもらいたい。

 次に、「この仕事(役割)を通じて、会社が何を達成しようとしているのか?」を議論する。れんがを積むことが、企業理念にどうつながっていくのかを明確にすることが重要だ。ただし、企業理念に共感できないと言うのであれば、共感できる企業理念を他に探してもらうしかない。

 最後に、この仕事や役割が、メンバーがなりたい自分になることや、人や社会に役立つことに、どう貢献できるかを議論する。重なりが見つからなければ、新しい仕事や役割を作る必要があるかもしれない。

共感されるゴールを目指そう

 誰もがリーダー。一人一人がリーダーの自覚を持ち、指示待ち人間を作らないリーダーシップを目指そう。誰もがサポーター。リーダーとサポーターがダイナミックに入れ替わるフラットな横の関係を築いて、お互いがお互いのサポーターになろう。5回の連載を通じて、こう提案させてもらった。

 最後に、ある読者からの質問に答えて、この連載を終わらせたい。質問は、「どうすれば、相手からもサポートを得られるのか?」だ。

 いろいろなテクニックや方法があるだろう。だが、1つだけ選べと言われたら、私は「共感されるゴールを、あなたが本気で目指すこと」と答える。

 稼ぎたい、認められたい、一番になりたい、腕を磨きたい、新しいことをやりたい。こんなあなたの欲求を満たすために、誰がサポートしてくれるだろうか? あなたの成功から、恩恵を得たいと思っている人だけだ。

 金を稼ぐことは、悪いことではない。新しいことにチャレンジするのも、素晴らしいことだ。だが、金を稼いで何がしたいのか? 新しいことにチャレンジして何がしたいのか? その先に「人のため、社会のため」という利他のゴールが見えると、より多くの人が共感しやすい。

 これまで私は、多くのリーダーがゴールを語る言葉に耳を傾け、語る表情や身体の動きを観察してきた。残念ながら、本気度は伝わる。うわべだけの「人のため、社会のため」には、利己的な欲求が透けて見える。

 ぜひとも、本気で目指したい「利他」のゴールを見つけてほしい。そして、あなたの日々の行動が、あなたの言葉を裏切らないことも重要だ。自戒の念を込めて。

藤田 智弥(ふじた ちひろ)

アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)にて、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)プロジェクトを中心に、コンサルタントとして5年の実務を経験後、ベンチャービジネスに転じ、2年で単年度黒字、4年で累損を一掃する100億円規模のビジネス立ち上げを経験する。

その後、ソフトバンクモバイル、ローソン、マクドナルド、アマゾンと転じ、経営層のマーケティング領域の意思決定をサポート。 孫正義氏、新浪剛史氏、原田泳幸氏の意思決定や組織運営を間近に見る中で、ゴール設定と達成イメージの言語化、視覚化の重要性を体感する。事業会社における経験はトータル19年。現在は、従業員、ビジネスパートナー、顧客、投資家、コミュニティー、家族など、みんなが社長に力を貸したくなる経営を提案し、「社長の360度サポーター化」を推進している。

慶應義塾大学卒。ビジネスコーチ。アンガーマネジメントコンサルタントTM。マーケティング・コンサルタント。


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