未来を予測し、仕事のムダを減らす「スケジュール術」ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2018年02月22日 07時22分 公開
[新井健一ITmedia]
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 ちなみに、細かさのレベルは、なるべく気合を入れなくても作業に取り掛かれるか否かが目安になる。

スケジュールは積み重ねではなく、逆算で考える

 なぜ特に重要な仕事に関するスケジュールを組む前に、なるべく気合を入れなくても取り掛かれる作業レベルにまで、分解する必要があるのか? ちなみに、ここでは「仕事」と「作業」を使い分けている。

  • 仕事:あらかじめ段取りやスケジュールの検討および管理が必要な作業のまとまり(≒成果)
  • 作業:段取りに時間をかけずに、悩まずに取り掛かれるレベルにまで分解された処理行為や活動仕事

 ここで作業は、おおよそただ手を動かせばよいが、仕事は取り掛かる前に段取りやらスケジュールやらを考えなければならない。人間は頭を働かせるより身体を動かす方が楽だ。一説には、頭を働かせる方が身体を動かすより、6倍の労力がかかると聞いた。私にも苦い経験がたくさんあるが、おおよそ誰もが重たい仕事を、何かと後回しにしてしまう理由はここにある。

 本来最も厳密にスケジュールを管理しなければならないのは、先述した(2)の仕事であるはずなのだが、それを後回しにして、(3)や(4)の仕事を優先してしまうのだ。残業を断固としてやめる、しない決意をすれば、本来なら「断ること、捨てること」に含まれるような仕事や頼まれごともあるはずだ。

 だが、重要な(重要な仕事には重たいものも多い)仕事に手を付けることをちゅうちょしている間に、本来なら断ってもいいはずのちょっとした頼まれごとを引き受けてしまう。

 そしてさらに悪いのは「手を伸ばしていい仕事、いけない仕事」のうち、本来計画的に進めなければいけない「手を伸ばしていい仕事」に目をつぶり、「手を伸ばしてはいけない仕事」に取り掛かってしまうことである。それが(3)緊急度は高く重要度は低い仕事、例えばメール対応やファイルの整理、片付け、その他の身体を動かす作業なのである。

 だからこそ、目の前の仕事が重ければ重いほど、引き受けた段階で、細かい作業に分解し、以降極力考えずに着手できるようにしておくべきなのだ。

 だが、それでも考える作業がなくなることはない。ある意味で憂鬱な「頭を働かせる」作業を優先させ、スケジュール管理を適切に行っていくために、時間の使い方を工夫する必要がある。それが「朝昼夕の時間の使い方」だ。実は朝(出勤後)と昼(昼食後)と夕(退勤前)はつながっているし、つなげて考え生産性を高めていかなければならない。

 その際には、脳のメカニズムにも働きかける必要がある。まず出勤後はなるべく「頭を働かせる」作業、またはアウトプット中心の作業に当てること。私も執筆や資料作成など頭を使う作業は朝のうちに済ませてしまう。だが、それだけでは並みの生産性にしかならない。実は、もっと生産性を上げるための策がある。

 それは、前日の夕方(退勤前)に翌日の作業に必要なインプットをしておくことなのだ。ただし、インプットといっても、関連する資料の読み込みや、ネットを使った情報収集とはちょっと違う。

 例えば、執筆や資料作成であれば、出版予定の本のタイトルや目次をながめておくこと。ただそれだけでいい。そうしておくことで、頭は(特に左脳は)、右脳に蓄積されている膨大なインプットから、タイトルや目次に関連する情報を集め始めるのだ。そして次の日に出勤してデスクに向かうと、脳はアウトプットに必要な準備を終えていることが多い。

 必要なことは、明日「こんなアウトプットをするための作業をするから、よろしく」と脳に予告して、あとはしばらく放っておく時間が必要だ。その時間の長さだが、私の経験では、前の日の夕方(インプット)と次の朝(アウトプット)くらいの間隔が、ベストだと考えている。

 では昼(昼食後)はどう使うか?昼は集中的に作業をやる時間だ。たまったメールへの返信、慣れた作業(ルーティーン作業も含む)など、とにかく頭を使わずにできる作業に充てる。また、会議や商談なども、単純に個人の生産性を上げるという観点からすると、昼が望ましいので、自分で決められるなら昼にする。

 そして夕方は、明日のアウトプットにつながる資料や情報を「眺める」ことに充ててほしい。実はそれこそが、最もアウトプットの生産性を高める「先まわり」なのである。

 なお最後に、ビジネスパーソンとしてのキャリアや成長を加速するさらなる「先まわり」のためには、朝昼夕のほかに「夜」の使い方も重要になってくるのだが、これについてもぜひ拙著新刊でご確認いただきたい。

著者プロフィール:新井 健一

経営コンサルタント、アジア・ひと・しくみ研究所代表取締役。

1972年生まれ。早稲田大学 政治経済学部政治学科卒業後、大手重機械メーカー、アーサーアンダーセン/朝日監査法人(現 KPMG/あずさ監査法人)、同ビジネススクール責任者、医療・ITベンチャー企業役員を経て独立。大手企業向けの経営人事コンサルティングから起業支援までコンサルティング・セミナーを展開。テレビ東京・BSジャパン「人生が変わる人事の話」(毎週金曜日夜11:00)に人事の専門家としてレギュラー出演(2017年3月終了)。

芸能プロダクション a:cura Entertainment(株式会社アクラ)所属

著書に「いらない課長、すごい課長」(日本経済新聞出版社)などがある。


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