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» 2018年03月26日 07時23分 公開

ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート:企業、役員を対象とする日本版司法取引――「攻め」と「守り」が制度の肝 (2/2)

[山下竜大,ITmedia]
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 その後、捜査機関から、弁護人に対して、供述や証拠の提供が要請される。捜査機関は、聴取した供述や提出された証拠の内容について、合理性や信用性などを吟味し、他人の犯罪の有罪立証ができる、役立つと判断すれば、弁護人に対し、刑事処分の軽減などを提示する。これでお互いの利害が一致すれば合意が成立し、一致しなければ不成立となる。

 「合意不成立となった場合、捜査機関は協議で示された供述や証拠をその後の捜査で使うことはできない。ただし、当局が、他の人から同じような供述を得たり、同様の証拠を入手したりすることは妨げられない。一方、合意が成立した場合、検察官は、他人の裁判において、合意の内容を明らかにしなければならない」(熊田氏)

想定事例1:一企業内における不祥事の場合

 A社で不祥事が発生し、社員が逮捕された。早速、会社がその社員から聴取したところ、自分の不正だけでなく、会社のトップの不正についても話をした。会社のトップの不正について、当局は関知していなかった。このときA社としては、どのように対応すべきなのだろうか。

 「A社としては、まずは、その不祥事が日本版司法取引の対象となる犯罪かどうかを判断することが必要になる。その社員の不正行為はどのようなものか、トップの行為・関与はどのようなものか、それにより会社も処罰されるのかなどを明確にしなければならない」(熊田氏)


想定事例2:複数企業における不祥事の場合

 B社、C社、D社の幹部らが価格カルテルを行っていた最中、C社が別件で捜査を受けた。そこで、B社が内部調査を行ったところ、ある支店長と社員が価格カルテルに関与していることが判明した。このように複数の企業が関与している不祥事の場合、B社はどのように対処すべきなのだろうか。

 一つには、B社として、他社よりも早く罪を認め、司法取引により会社に対する刑事処分の軽減ないし免除を求めることが考えられる。このとき、B社の支店長や社員も、個人として罪を認め、他社の犯罪行為を含めた全容を供述することで、刑事処分の軽減などを求めることができる。熊田氏は、「こうした事案は、すでに発生している」と語る。

 「会社の信用や価値をできるだけ損なうことなく難局を乗り切るにはどうしたらいいか、刑事処罰を免れるために何をすべきかを第1に考え、時として、厳しい判断を下すことが必要になる。ただし、司法取引が成立するには、想像以上に高いハードルがある。相当の協力をしない限り、恩恵を受けることはできないことを理解しておくべきである」(熊田氏)


他人・他社に引っ張り込まれる危険性もある

 日本版司法取引は、対象犯罪が幅広く、立件が比較的容易な犯罪もあるので、捜査当局としては使い勝手のよい制度である。他方、企業にとっても、司法取引の使い方として、いろいろな場面が考えられ、受けられる恩恵もさまざまである。熊田氏は、「“攻め”と“守り”が日本版司法取引の肝であり、難しさでもある」と語る。

 この点、他人や他社に引っ張り込まれる危険性もあるので、防御することも考えておかなければならない。会社として、役員などの個人を守るのか、糾弾するのか、どのような判断を下すかも重要なポイントである。そのためには、早期かつ迅速な調査により全容を把握することが必要不可欠となる。また、弁護士への依頼体制を確立しておくことも大切である。

 「日本版司法取引は、初めて導入される未知の制度であり、当局側も手探りの状態である。従って、今後どのような事例で適用されるか予測がつかないところもあるが、役員個人として、あるいは会社として、不祥事が起きた際には、司法取引に巻き込まれていくことがある、状況によっては有効に活用することも考えなければならないということを、まずはしっかり理解しておくことが必要である」(熊田氏)

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