自動運転で変わるクルマの未来を「移動のプラットフォーム」でリードしたい――IDOM 執行役員 北島昇氏長谷川秀樹のIT酒場放浪記(5/5 ページ)

» 2018年04月13日 08時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
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優秀な人が力を出し切れる組織に

長谷川: 北島さん、今の会社で何社目なんですか?

北島: 僕、IDOMが1社目です。

長谷川: え? 勝手に、3社目くらいかと持ってました。

北島: 大学中退して会社を起こして、30になるまで9年は自分で会社やってました。

長谷川: そうなんですか。何系の会社?

北島: アメフトをやっていたので、周りに医者とか理学療法師とかトレーニングコーチとか、体に携わるいろんなプロがいたんです。彼らが「スポーツ業界で食いたいけど食えない」っていうから、「そんなことあるかい!」って仕事とってきてたら、それがどんどん大きくなっちゃいまして。ただ、派遣とか業務委託ばかりだと、Jリーグの仕事でも1年やったらバシッと契約切れたりしてボラティリティが激しくてしんどいので、トレーニングジムとか治療院とか接骨院とかベースになる生活基盤作ろうぜと、箱を13カ所作りました。

 最初はビジネスとは思ってなかったんですけど、そんなことをやってるうちにそこそこ成長して、28くらいのときに初めて「これもうかるじゃん」と、ビジネスっぽい考え方をするようになったんです。でも、いろいろあったのですが、大きかったのは資金繰りの拙さで苦しむようになり、最後はつぶしてしまったんです。

 こんなキャラだけど、さすがに参りましたね。ビジネスを始めて1年くらいだったら、ピボットというのもありなんですけど、9年やってつぶしたので、経営者として確実にダメなんだと落ち込みました。

 どうしようかと思っているときに、「ガリバーっていう会社があるよ」と知り合いが話を持ってきたんです。僕、就職活動って一切したことなかったので、どんな会社が良いかという判断基準もなく、なんとなくフィーリングが合ったので「もういいや」とポンと入って、今9年です。

長谷川: そうだったんですね。でも、1回自分で会社をやった人って、またやりたくなりません?

北島: 以前は「北島さんってなんで自分でやらないんですか? いつ辞めるんですか」って、よく言われてましたよ。独立して自分がやりたいことを責任持ってやる自由さと、大企業でスケールとかレバレッジをきかせてやるのとどっちがいいか、よく比較されますよね。そういう中で、僕が出した答えは両取りだったんですよ。思考と能力を磨いて、力をつけて、扱える領域を拡大して、IDOMを通して世の中を変えていこうと。

 それからはけっこうやり方を変えて、経営チームとして経営陣やリーダー陣と思考をシンクロさせながら全社を動かす上でやるべきことをやる、というのを大事にしています。それと、僕、株は大して持ってないですけど、社長とどっちがオーナーシップを持っているか、会社の将来のことを考えてるか、という部分で思考の戦いをしているつもりです。ほぼ負けるんですけど、姿勢としてはそうありたいと常に思っています(笑)

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長谷川: もう3社目くらいなのかなって、勝手に思ってました。外資系コンサル出身みたいなイメージで。

北島: ありがたいことにそう見えるみたいですけど、ITもマーケも何もかも、この会社に来て学ばせてもらいました。おこがましい言い方ですが、経験も知識も少ないけど、オーナーシップだけは強いと思っていて、ポジションに関係なく、持ってる力を出し切れるんです。5しか持ってないけど4.8ぐらい出せる。世の中には、10持ってる優秀な人はいっぱいいるんですよ。でもその人たちは、ポジションとか遠慮とか忖度によって力が出し切れていないことが多い。これが、「話せば分かる、話さなきゃ分からない」で思考がシンクロされた“一枚岩の組織”になれたら、10の人たちがもっと力を発揮できる、活躍できるようになるはずです。

 今は人事として外部の優秀な人の採用もしているので、いずれ自分がいらなくなったら勝ちだと思ってるんですよ。自分よりできる人が入ってくると、一抹の寂しさや不安は感じるんですけどね。でも、いらなくなったら自分の力がそんなもんだということなんで、仕方ない、くらいの腹決めでいます。

長谷川: いやー、大したもんですね、その割り切りは。

北島: 寂しいですけど、オーナーシップって、そういうものかなと思うんです。でも、長谷川さんだって同じじゃないですか。facebookなんか見ているとけっこうグサッととくることを書かれていて、すごく共感するし、元気をもらってます。こういう、大企業でがんばっている人達が集まって何かできないかな、といつも思ってるんですよ。一緒にやりましょうよ。

長谷川: 「みんなでやっちゃうか!」というノリ、いいですね。ぜひ、面白いことしましょう!

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IDOM 新規事業・人事・広報管掌 執行役員 北島昇さん氏プロフィール

2007年IDOM(旧ガリバーインターナショナル)に入社。

人事、経営企画、マーケティング、店舗フォーマット開発、事業提携などに従事。2015年より現職。C2C事業(クルマジロ)、サブスクリプション事業(NOREL)、コネクティッドカー事業などの新規事業開発やアクセラレータープログラムをはじめとしたオープンイノベーションの責任者を務める。

IDOMへの社名変更とともに、「クルマの売買」から「Mobility Platform」への事業変革と文化変革を推進中。


ハンズラボ CEO 長谷川秀樹氏プロフィール

1994年、アクセンチュア株式会社に入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、株式会社東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。(東急ハンズの執行役員と兼任AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。


取材・執筆:やつづかえり

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