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» 2018年07月04日 07時07分 公開

VUCA時代の必須ツール「シナリオ思考法」:組織におけるシナリオプランニングの実践方法――ベースシナリオとシナリオマトリクス (1/2)

環境要因を選び、その両極を考えるステップでは、思い込みにとらわれずどんどんいろいろなアイデアを出していく。

[新井宏征,ITmedia]

 前回の記事では、シナリオ作成の一般的なプロセス(図1)のうち、外部環境分析を紹介しました。

 今回は外部環境分析の結果を元にして、いよいよ複数のシナリオを作成するステップ、図1の3番目「ベースシナリオ分析」と4番目「シナリオマトリクス作成」を解説します。

図1:シナリオ作成の一般的なプロセス

 ベースシナリオ分析もシナリオマトリクス作成も、前回紹介した不確実性マトリクスを使って分類した外部環境要因を使って作成します。そこで、まず前回紹介した不確実性マトリクスを復習した上で、マトリクスの各象限の意味を紹介します。

不確実性マトリクスの各象限の意味

 不確実性マトリクスは、横軸に「不確実性」、縦軸に「影響度」を軸にしたマトリクスでした。横軸の「不確実性」という軸は、収集した外部環境要因が起きる(現実になる)可能性がどれだけ不確実かで分類を考えます。

 左側には「不確実性」が低い、つまり「ほぼ確実に起きるといえる」(確実性が高い)要因を置き、右側には「不確実性」が高い、つまり「起きるかどうか現時点では決めきれない」(確実性が低い)要因を置きました。縦軸の「影響度」の軸では、外部環境要因が起きた(現実のものになった)場合、テーマに与える影響の大小で分類します。影響が大きいと考えられる要因は上、小さいと考えられる要因は下に置きます。

 次にマトリクスの各象限の意味を見ていきます(図2)。

図2:不確実性マトリクスの各象限の意味

 「影響度」小に分類される下の2つの象限は、原則としてシナリオプランニングのワークショップでは取り扱いません。特に、左下は「その要因がほぼ確実に起きるが、テーマにとって影響は小さい」と判断したものが含まれていますので、ここは検討対象から除外します。

 右下も影響度が小さいので同じように除外しても差し支えはありませんが、不確実性が高い、つまり今の段階では起きるかどうかは決めきれない要因が含まれています。そのため、慎重に進める場合は、ここに該当する要因はモニタリング対象とし、定点観測を行います。定点観測を続けるうちに、その要因がテーマに与える影響が大きくなってきた場合は、上の象限に移動させ、次にシナリオを検討する機会等に考慮します。

 シナリオを作成する際に主に考慮するのは不確実性マトリクス上の2つの象限です。

 まず左上は「不確実性が低く、影響が大きい」と判断した要因を置く象限です。言い換えれば、今後、どのような変化が起きようとも、ここに該当する要因は、ほぼ確実に起きて、起きた場合にテーマに対する影響の大きいものが入っています。そのため、ここに含まれる要因は日常的に注視する必要があります。

 そして、不確実性マトリクスの右上には「不確実性が高く、影響が大きい」要因が含まれています。ここには「起きるか起きないかは現時点では決めきれないが、実際に起きてしまったらテーマに対する影響が大きい」要因が置かれています。

 この象限に入っている外部環境要因は、普段はあまり意識していない、見落としがちな要因が含まれています。シナリオプランニングでは、ここに割り振った要因を使って2軸を作り、シナリオマトリクス(後ほど詳しく説明)を作成します。そうすることで、普段は目を向けていないものの、長期的に見れば意識しておかなければいけない要因と、それがもたらす影響に目を向けることができるのです。

ベースシナリオ分析

 ここからは、上の2つの象限に含まれている要因を使って、シナリオを作成する方法を紹介します。まずは左上の象限に含まれている要因を活用して行うベースシナリオ分析について解説します。

 左上の象限に該当する要因は、この後に紹介するシナリオマトリクスのうちどのシナリオでも共通して起きる要因であり、全てのシナリオのベースとなるものと考えます。そのため、この左上の象限に含まれている要因をまとめたものを「ベースシナリオ」と呼びます。

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