定年を正しく理解し、その対応を間違わないようにビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2018年07月12日 08時35分 公開
前のページへ 1|2       
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 話を聞くと、10年近く前に、ソニーの希望退職制度を利用して退職した。就業した先の会社が、5年ほどで、経営不振になり退職した。私の会社に相談に来たのはその時で、その後自分で見つけた会社に就職した。担当の職務は新製品の開発である。60歳になったが、会社から、今の仕事を65歳まで継続してほしいと言われた。給与も仕事の内容も同じなので、それを受けることにした。あと5年は大丈夫です、ということで、お礼に来ました、と菓子折りをだされた。

 私もびっくりしたし、うれしかった。あと5年たったら、近所のスーパーで、荷さばきの仕事をしようと思っています。いつも求人していて困っているようだし、体力にはまだ自信がありますから、と話す。その後も、まだ働くつもりらしい。なぜ私のところに、お礼に来たかというと、以前私の会社に来た時にアドバイスされたことを実行したら、うまくいきました、全て郡山さんのおかげです、という。

 何を話したかは覚えていない。おそらくいつもの、自分の人生は、自分で設計して作っていきなさい。高年齢になったら、仕事は自分で探すしかない、できること、やりたいこと、をしっかり決めて、安い、辞めない、休まないを売りものにして、来てくださいというところがあったら、迷わずに飛び込む。仕事を大事にして、周りの人たちの喜ぶ顔が最大の報酬と思って、楽しく毎日を終えるようにする、いかがでしょうか、という話を、いささか人生の先輩顔でしたのかもしれない。

 これは、私は、定年後の成功例の一つだと思う。高年齢者は多様性があり、一般論にはしにくい。

 ただ、成功例には少し共通点がある。それは、過去と、完全に切れていることである。逆に失敗例の多くは、過去に振り回されている。「過去には何の価値もない。現在を未来のために使うしかない」というのは、ソニーの共同創業者、盛田昭夫の名言である。

 定年は確かに来る。それは終点ではなく、通過点である。そこまできたら、過去ではなく未来を語ろう。その未来を、楽しく、面白いものにするために、十分に準備しておこう。

 私自身は、準備をしておかなかったために、決して順調ではない、定年後を過ごした。そして今、少し定年後を理解したおかげで、定年前より幸せになっているように思われる。私の体験と意見を書いた小さな本で、少しでも、皆さんのお役に立てれば、望外の喜びに違いない。

著者プロフィール:郡山史郎

1935年生まれ。CEAFOM代表取締役社長。

一橋大学経済学部卒業後、伊藤忠商事を経て、1959年ソニー入社。73年米国のシンガー社に転職後、81年ソニーに再入社、85年取締役、90年常務取締役、95年ソニーPCL社長、2000年同社会長、02年ソニー顧問を歴任。04年、プロ経営幹部の派遣・紹介をおこなう株式会社CEAFOMを設立し、代表取締役に就任。人材紹介のプロとして、これまでに3000人以上の転職・再就職をサポート。著書に『九十歳まで働く!』(WAC)などがある。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆