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» 2018年07月30日 08時26分 公開

視点:日本企業に必要な「自発的変革力」 (1/3)

他力を活用した新たな柱の構築、さらには事業モデルの転換を図る方策とは?

[渡部 高士(ローランド・ベルガー),ITmedia]
Roland Berger

 2017年度の各社業績が続々と発表されているが、アベノミクスに代表される経済政策、円安・原材料価格の低下といった市況による追い風もあり、多くの企業において、営業利益額は大幅に向上している。

 しかしながら、2010〜16年度の国内上場企業3291社の分析を行ったところ、売り上げ成長と営業利益率を両立させた企業は、国内全上場企業のうち24%の804社にとどまっている。ある意味、新たな事業の創出による営業利益額の増大というよりは、構造改革が進んだ日本企業において、為替などの外的要因により業績が押し上げられている、といえる。一方で、構造改革を推し進める中で、各企業における事業ポートフォリオは成熟化する傾向にあり、有望な次の柱が育っていない、もしくは将来を支えきれない状況にある企業が多いように思う。

 本稿においては、現状の好況の中で、次の柱をどのように構築するべきかについて、取り組み事例からそのヒントを紹介する。中でも、他力を活用した新たな柱の構築、さらには事業モデルの転換を図る方策について触れていきたい。

1、国内企業の業績回復は本物か

国内企業の業績推移

 現在、2017年度決算の発表が続々と進んでいる時期であるが、多くの企業にとって最新期である2016年度までの業績を元に分析を行っていきたい。国内企業においては、アベノミクスに代表される経済政策、円安・原材料価格の低下といった市況の追い風により多くの企業において営業利益は大幅に増加し、株価も大きく回復している。(図A参照)

 一方で2010年度と比較した場合に、各社営業利益率は大幅に増加しているものの、個社別に見ると、どのような特徴があるだろうか。Bは、国内上場企業3291社の2010年度と2016年度の業績変化を捉えたグラフである。(図B参照)

 縦軸は、2016年度の営業利益率が2010年度を上回っている企業と、下回っている企業を示したものであり、約6割に当たる1762社が営業利益率で上昇していることが分かる。一方で、横軸は、2016年度の売上額が2010年度を上回っている企業と、下回っている企業を示したものであり、約半数の1374社が売上額で2010年度から成長していることが分かる。

 これらを組み合わせると、事業が成長し、営業利益も拡大した企業は約2割である804社にとどまっており、売上が縮小しているにもかかわらず多くは市況による追い風などにより営業利益率が向上している企業が958社存在していることが分かる。また、売上成長率の伸びが低いことから、大型のM&Aによる売り上げ拡大も限定的であることが見て取れる。

 国内企業が不採算事業を整理し、利益率を向上させる構造改革がうまく進み、企業として稼ぐ力が増した中で市況に恵まれた、ともいえるが一方で未来に向けて持続的な成長を実現する観点からは、課題を抱えているといえよう。

 さらに、2016年度売上高を1000億円以上の上場企業921社に絞りこんだ場合、売上、営業利益率ともに拡大した企業は約2割(182社)にとどまり、売り上げは成長していないものの営業利益を拡大した企業(300社)がそれを上回っている。(図C参照)営業利益が拡大している企業は先ほどと同様に約6割(482社)占めているが、売り上げが成長できていない企業が多く存在していることが見て取れる。

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