特集
» 2018年09月10日 07時00分 公開

【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜:「起業家を目指していた」エンジニアが一転、京王電鉄でIT事業を立ち上げるまで (3/3)

[高木理紗,ITmedia]
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沿線の企業に、都心と同じレベルのサービスを

 その大きな狙いは「沿線の価値向上」だ。

 「当時、企業用の通信網は非常に高価で、利用できる地域も限られていました。今でこそ100Mbpsの回線は当たり前ですが、そのころはNTTやKDDIなどの大手通信キャリアでさえも『広域イーサネット』を東京23区内の一部地域で始めたばかり。一方、東京23区外まで伸びている京王電鉄の光ファイバーには、通信設備として余力がありました。これを活用すれば同レベルの通信環境を、当時あったATM回線の10分の1以下の価格で、新宿と多摩地区に拠点を置く企業が使えるようになる。特に高速回線を必要とする企業からのニーズは十分あると考えました」(虻川さん)

photo 現在、京王電鉄のIT管理部が実施する「光ファイバ賃貸」のマップ(画像提供:京王電鉄)

 こうして、「沿線の企業に都心と同じレベルの通信サービスを提供する」をコンセプトに、京王ネットワークコミュニケーションズが誕生。当時、虻川さんは経営企画部に所属していたが、“第一種通信事業者”に必要な国家資格の取得からネットワーク設計、顧客のもとに光ファイバーを引く業務にまで関わった。夜中にトラブルがあれば自分の携帯電話が鳴る“多忙”な生活へと戻ったが、不思議と苦痛ではなかったという。

 「昔から、仕事が全く苦痛じゃないんですが(笑)、ITを使ってお金を生み出せるようになったことが楽しかったのかもしれません。お客さまが喜んで使ってくれるサービスを提供した結果、それが新しい収入につながったということなので」(虻川さん)

多彩なキャリア――エンジニアたちのコミュニティーが原動力に

photo 「必要な情報を集めるためには、積極的に外のコミュニティーに出ていくべき」と語る虻川さん

 その後、2011年に京王ネットワークコミュニケーションズは「社会的な役目を終えた」という理由でクローズした。

 自分が起業するまでの勉強期間と考えていたはずが、気が付いたら京王グループで新会社に参画するまでになっていた虻川さん。「上司や若手に協力してもらい、いろいろなことをやらせてもらった」と本人は語る。その原動力となったのは、エンジニアのコミュニティーだったという。

 「平日夜や土日に集まっていたエンジニアたちのコミュニティーから情報を得て、京王電鉄が弱い部分や、自分が『これから来る』と確信した分野を先取りして勉強していました。今は、必要な情報を自分で取りに行く姿勢が、IT活用で大きな差を生むと考えています。最新の情報を持っていなければ、本来買わなくてもいい製品や、一世代前の製品を高値で買ってしまう可能性があるわけですし」(虻川さん)

 事業をクローズした虻川さんは、ようやく一息……と思いきや「新たなチャレンジをしたい」という自らの希望もあり、グループ会社の京王バスに異動になった。そこでまた“化石”のようなシステムと出会うことになるが、このシステム刷新が自身にとって「大きなターニングポイント」になるのだった(後編に続く)。

特集:Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜

 ビジネスのデジタル化が急速に進む今、事業や企業そのものを変えるために、これまでと異なる考え方や人材が必要になっています。

 システム企画と実装、業務部門とIT部門など、異なる部署や仕事の境界に立ち、それを飛び越えてつないでいく――そんな「越境」を通じて、さまざまな視点や考え方を得ることで、初めて変革を導くことができるのではないでしょうか。

 本特集では、越境に成功したり、挑戦したりする人間にスポットを当て、彼らが歩んできたキャリアやITに対する考え方に迫っていきます。

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