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» 2018年11月28日 08時08分 公開

「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記:「ライブ」は唯一無二だがIT活用で広がる「エンターテインメント」の世界は無限 (1/2)

「はじめに遊びがあった」という精神に基づいて、事業を展開するぴあ。遊びから生まれるエンターテインメントにより、全ての人に「感動」を与えることを目指している。

[聞き手:重富俊二(ガートナー ジャパン)、文:山下竜大,ITmedia]
ぴあ システム局長 兼 システム戦略室長 兼 チケッティングサービス ディレクター 兼 2019プロジェクト ディレクター 兼 事業統括推進室 エグゼクティブプロデューサー 兼 戦略企画室 川端俊宏氏

 ぴあは、1972年の創業以来、音楽やスポーツ、演劇、映画などのチケット販売、エンターテインメント領域における情報誌の刊行およびWebサイトの運営、コンサートやイベントの企画、制作、運営など、エンターテインメント関連事業を通じ、「感動のライフライン」の実現を目指している。

 ぴあ システム局長 兼 システム戦略室長 兼 チケッティングサービス ディレクター 兼 2019プロジェクト ディレクター 兼 事業統括推進室 エグゼクティブプロデューサー 兼 戦略企画室の川端俊宏氏に、ぴあに入社した経緯やITとの関わり、エンターテインメントへの思いなどについて話を聞いた。

「エリートになりたい」と思っていた大学時代

――Webサイトに「感動のライフラインの実現を目指します」という、矢内廣社長の言葉があります。この言葉に込められた、ぴあという会社の思いや方向性について聞かせてもらえますか。

 一般的にライフラインと聞くと、電気、ガス、水道という生活に不可欠なインフラですが、今の時代には、日々の生活をより生き生きと、豊かにする「感動」というライフラインが必要です。そのための商品やサービスを開発し、提供することがぴあの使命です。これが「ひとりひとりが生き生きと」というぴあの企業理念にもつながっています。「世の中を幸せにする」「感動であふれさせていく」ことを目指し、それに向かって常に挑戦し続けるのがぴあという会社です。

――感動は人それぞれ。ラグビーが好きな人もいれば、音楽が好きな人もいる、全てを満足させるサービスを提供する会社ということですね。

 その通りです。ぴあに入社していなければ知らなかったイベントもたくさんありました。自分が知らなかったイベントでも、参加するたびに新しい感動があります。そのイベントの主役はもちろん、舞台裏を支えている人たちと話をしても感動があります。ぴあに入社して、身をもって体感しています。いろいろな人の人生に、影響を与えることができるのが、エンターテインメントの醍醐味(だいごみ)です。それを仕事にしている責任感も感じています。

――ぴあに入社した経緯を聞かせても得ますか。

 新卒でぴあに入社したのですが、大学のときには、何をしたいかを探しながらの就職活動でした。「エリートになりたい」と思っていたので、商社、メーカー、マスコミ、コンサル、銀行、鉄道など有名な企業の就職試験を受けて、内定もいくつかもらっていました。

 ぴあもその1社でしたが、ぴあという会社だけは、心の中で何かが引っ掛かっていました。先輩に相談してみると「5年後、10年後に何をしていたいの」と言われました。考えてみると、自分はサッカーが好きで、サッカーで経験してきたことが、糧となり、自分の考えや生き方の原点になっているので、サッカーに関わる仕事がしたいと気付きました。

 ぴあに入社したのは1997年ですが、当時は2002年にサッカーの国際大会が日本で開催されることが決まり、盛り上がっていました。サッカー関連の仕事をするのであれば、ぴあがもっとも近いだろうと、入社を決めました。

 面接で、同じようなことを話したのですが、そのとき社長の矢内が、「うちに来れば、あなたがやりたいことが全てできるよ!」と言われたことも、ぴあに入社を決めた理由でした。いまは社長の言葉に感謝しています。友人たちも「ぴあだと思うよ」と言ってくれたことも入社を決めた理由の一つでした。

2002年開催のワールドカップサッカー大会の組織委員会に出向

――ぴあでの最初の仕事は何でしたか。

 最初の仕事は、情報システム部門のヘルプデスク担当でした。大学で経営システム工学科を専攻していたことが配属の理由のひとつだと聞いています。システムに関しては専門ではなかったのですが、日々勉強しながら与えられた仕事をまっとうしていました。

――システムの仕事は面白かったですか。

 面白かったです。システムは「0」か「1」かで、何らかの答えが出ます。自分が間違えればシステムも間違えるし、正しければ正しく動く。社内システムの開発に携わり、実際のコーディングも行っていましたが、システムが形になっていく面白さがありました。

 一番、楽しかったのは、実はヘルプデスク業務でした。「PCが使えない」とか、「アプリが動かない」とか連絡が来ると、「新人、行って来い」と言われ、おかげで社内のさまざまな人と会話をする貴重な機会が得られました。

――サッカーの仕事には携わったのですか。

 2000年に、ワールドカップサッカー大会の組織委員会のチケッティング部門にぴあから出向して、初めてインターナショナルビジネスに参画することになりました。最初に参加した会議で、上司から「チケット販売システムの会議があるから韓国に行ってきて」と言われて韓国に行き、あまり得意ではない英語でオブザーバーとして参加しました。

 チケット販売システムは、海外の会社より提供を受けることが決められていました。当初はバグだらけでしたが、現地で一緒に仕事をすることで、なんとか稼働までこぎつけました。この時は、言語と文化の違いにかなり参りましたが、サッカービジネスに関わりたいという夢がかなっただけでなく、仕事を進めるにつれ、日本中の皆さんの思いの実現には全力を尽くすしかないと感じるようになり、執念で乗り切りました。サッカー以外の大会だったら、あんなに頑張れなかったかもしれません(笑)。仕事は、好きだったり、思い入れがあったりすると踏ん張れるものだなあと実感ました。

 どんなに困難なことでもやるべきことをやっていれば、一緒に成功させようという人がどんどん集まって、最終的にはいい方向に進むという経験は貴重でした。また、日本中の期待を背負っていたので、各分野のエキスパートが集まっていたことも、非常にいい刺激でした。必要であれば、法律まで作ってしまうパワーは圧巻でした。日本にも、こんなすごい人がいるんだと、まさに感動の毎日でした。国が違えば、やり方も考え方も違うことも学びました。アナログからデジタルへの移行期間を体感できたこともいい経験でした。

 自分自身はサッカー中心で生きてきた人間なので、ぴあに入社していなければ、サッカーしか知りませんでした。でも、ぴあに入社したことで、さまざまなジャンルのエンターテインメントに触れ、感動の幅が半強制的に広げられましたが、これはこれでよかったと感じています。好きなことに特化するだけが、感動のライフラインの実現ではないことにも気付きました。

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