あなたの属するチームは真に機能しているか――実質的な死に体チームが多過ぎる:生き残れない経営(1/2 ページ)
どのようにチーム創りをすべきか、その中でリーダーシップやメンバーシップの醸成をどう行えばよいのか。
企業の中であなたの属している組織は十分に機能しているか、チームは有効に機能しているか、実質的に死に体同然になっていないか、一度真剣に自問自答してみたらよい。
なぜなら、一般的に日常稼働している組織やチームの現状を何となく是認し、あるいは当たり前だと認識して何ら疑問を持たずにいる、しかし実際は十分機能していないか、あるいは大きな欠陥を抱えたままでやり過ごしているケースを、意外と多く見かけるからである。組織やチームの中のメンバーは、自分たち自身のことになかなか気付かない、あるいは気付こうとしない。気付いても、半ば諦めている。企業にとって、それは不幸なことである。それを正せば得られる成果を、失っているからである。
どこにでも見受ける、十分に機能していない、あるいは欠陥を抱えるいくつかの例を挙げてみよう。ただし、「組織」として取り上げると議論の対象が広すぎて焦点を絞れなくなるおそれがあるので、組織の1部門を「チーム」として取り上げる。チームについての議論は、基本的には組織についての議論に相通ずるはずである。
大手エレクトロニクス企業A社で、情報分野に関する新規事業を統括する事業部を立ち上げた。事業計画の立案と実行を管掌する事業部と、その管轄下にあって製品を設計・製造する事業所と営業を担当する営業部門とで構成される事業体である。
ここで、30名ほどで構成される事業部に特に問題があった。aチームとしよう。新規発足なので、メンバーは関連の事業部や事業所や営業部門からかき集められた。メンバーを供出する側は、決して一流の人材を出さない。どちらかと言えば、持て余し気味の人材を供出する傾向にある。外部からは、新組織のもとに新規事業に挑戦するメンバーはやる気満々で、生きき生きとし躍動しているように見えた。しかし実態は、ほとんどがマイペース、一匹狼、唯我独尊、協調性に欠ける人材で、勝手に動き回っているにすぎなかった。
大手企業の関連会社である電子部品メーカーB社は、社内全体に活気がなかった。それもそのはず、役員はじめ管理者の多くが親会社から天下っていた。特に品質管理部門では、部課長の天下りが永く続いたため、社員はどんなに優秀でも、努力しても、係長止まりだった。構成メンバーは、やる気を失い、指示待ちが習性となっていた。bチームとしよう。
中堅の情報機器販売C社の関東支店では、支店長が全社でも名だたるやり手で、そして支店全体が活気に満ちているように見受けたが、支店構成員はベクトルが合わずバラバラだった。例えば、営業日報提出がノルマだが、提出しない者がいても咎められなかった。あるいは、受注案件フォローアップ資料で毎週フォローアップされるシステムがあったが、営業マンはその資料に案件をなかなか載せたがらなかった。
なぜなら、いったん載せると支店長のフォローアップが厳しすぎるのと、予算未達成の状況になると受注未確定案件も受注見込み案件に数えられてしまうので、営業マンはギリギリまで案件を表沙汰にしたくなったからだ。そのことが、支店内で情報を各自抱え込んで共有しない風潮を生む。はては顧客訪問といって外出し、喫茶店で時間をつぶして帰社する者がいたり、遂に顧客訪問が嫌で退社する者まで出たりする状況だった。cチームとしよう。
これらの例は典型的な例かもしれないが、基本的にそのような傾向をどこかに持ったチームが身近に数多く存在するに違いない。
なぜ、こういう事態を招くのか。上例のように、リーダーが有効なチーム創りができないことと、構成員が責任あるメンバーシップを持てない、あるいは希薄だからである。
では、どのようにチーム創りをすべきか、その中でリーダーシップやメンバーシップの醸成をどう行えばよいのか。
心理学者B.W.Tuckmanオハイオ州立大教授が唱えた、「タックマンモデル」が参考になる。それは、チームビルディング(組織進化)モデルで、チームは形成されただけで機能はせず、チームを形成していくプロセスに5段階があり(チーム終結の第5段階を除くと4段階)、チームは形成された後、混乱期などを経て、期待通り機能するようになるとする。このモデルは広く知られているが、筆者の解釈を交えて以下に解説する。
上掲の例からも分かるようにチームにはさまざまな成り立ちや、経緯があり、いきなりタックマンモデルを適用しようとしても無理がある。むしろ、失敗する可能性が大きい。モデル適用前に実行しなければならない必要条件がある。それは、チームを「メンバーたちが帰る場所」に変化させなければならない。上例のa、b、cチームいずれも、メンバーたちは居心地の悪さを感じているに違いない。彼らは、できるだけチームの中にいたくない、チームの外にいたい、と思っているはずである。
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