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マザー・テレサに習う経営術海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(1/3 ページ)

ビジョンと行動を一致させることは極めて重要である。「気持ちの準備」「経済的準備」そして「実行する準備」によって成功はもたらされる。

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エグゼクティブブックサマリー

 この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。

3分で分かる「マザー・テレサに習う経営術」の要点

  • マザー・テレサは、8つのリーダーシップ原則を実践することで、慈善活動を世界的事業にした
  • ビジョンと行動を一致させることは極めて重要である。自分が説き進める価値観を実行に移すこと
  • 倫理的決断を迫られた時は、自分の倫理基準と目標を思い出すこと。それらと選ぶべき道を意識的に比べること
  • 成功は、「気持ちの準備」、「経済的準備」そして「実行する準備」によってもたらされる
  • 不安を受け入れること。さもなければ、不安は身のすくむほどの恐怖をあおることがある
  • 「己を律する喜びを見出し、喜びの中で己を律する」ことが出来た時、人は最高の働きをする
  • 効果的なコミュニケーションは、信頼、感情移入、明確なビジョンを必要とする
  • 会う人全員を大切に扱い、その時間、世界で最も重要な人物であると思ってもらえるようにすること
  • 優れたリーダーは定期的に静かに黙とうする時間を取り、内なる声に耳を傾けている
  • マザー・テレサの8つの原則を、宗教的教えだと思わないこと

この要約書から学べること

  • マザー・テレサが、優れたリーダーシップの8つの基本原則を使って、「神の愛の宣教者会」を世界的組織に育て上げた方法
  • この8つの基本原則を取り入れて、私生活や仕事の質を向上させ、自分の組織を成功に導く方法

本書の推薦コメント

 1990年代初め、19歳だった著者のルーマ・ボーズは、マザー・テレサとともにコルカタ(旧カルカッタ)で慈善事業に従事しました。この体験から、ボーズと共著者のルー・ファウストは、マザー・テレサが「神の愛の宣教者会」を何十億もの資金を持つ世界的組織に育てるために、熱心に実践した8つのリーダーシップ原則を特定しました。

 著者自身の企業家としての経験やマザー・テレサの人生に起こった出来事を紹介し、分かりやすい議論を展開することで、それぞれの原則が読者の私生活と仕事の両方にとってどれだけ役に立つものか示しています。マザー・テレサの独特な生き方やひたむきな献身について考えると、彼女の穏やかな心や慈善事業や高い目標は、信仰によって生まれたものであり、現代社会にはどこか無関係なことのように思えるかもしれません。しかし、それは誤った考えです。

 実際、マザー・テレサのリーダーシップの基本的信条はあらゆる階層の管理者にとって有益なものであり、それらから学ぶために聖人になる必要はありません。中には薄い本書をシンプル過ぎると感じる読者もいるかもしれませんが、そのシンプルさこそが、本書の力を大きくしている大きな要素なのです。

 「マザー・テレサ」おそらく、世界中で一番有名であり、また尊敬を集めている女性の一人ではないでしょうか? アルバニア人の敬けんなカトリックの信者の家庭に生まれ、幼い頃からインドで修道女として働きたいという夢を持っていた彼女は、インドのコルカタで自らの夢を実現し、慈善事業への従事を開始しました。その後、彼女の活動は後世の修道女に引き継がれ、全世界に広められることになりました。

 しかし、なぜ、彼女はインドで慈善事業を始めたのでしょう? インドといえば、ヒンズー教の国。彼女がコルカタで事業を興す前には、さまざまな苦難があったといわれています。しかし、そうしたことを克服し、自らのミッションを成し遂げた彼女のやり方は、もはや一宗教家の行ったノウハウではなく、「慈善事業」という事業を立派に確立させた経営者としての視点で考えることができると思います。つまり、彼女の行った手法は、現代のあらゆる経営者が自らの事業に応用していくことができるものであるといえます。

 では、その手法とはいかなるものだったのでしょうか? 本著「マザー・テレサに学ぶ経営術」の著者の一人、ルーマ・ボーズはかつてマザー・テレサととも彼女の慈善事業に取り組んだ人物であり、その手法をあますことなくその目に灼きつけてきたのではないでしょうか?

 それ故に、本著に書かれている内容はまさにマザー・テレサの行ったことのすべてを網羅し、どのように実践することが経営者として大切な事であるのかということが明確に記されています。

 色々な経営術の本がある中で、他とは少々異なる視点で書かれている本であるがゆえに、参考になることは多いと思います。では、早速内容について読み進めて行きましょう。

マザー・テレサが実践した8つの原則

 1928年、後にマザー・テレサとなる18歳のアルバニア人の少女は、修道女になることを決心し、ロレット修道会に入会しました。彼女はロレット修道会からインドのコルカタにある女学院に送られそこで教師となりました。その後、貧しい人達のために尽くしたいという強い気持ちに突き動かされ、1946年に同修道会を離れ、1950年に「神の愛の宣教者会」を立ち上げました。

 この宣教者会は13人の修道女から始まりましたが、後に正規スタッフ4,000人と100万人以上のボランティアスタッフと何十億もの資金を抱える、世界的認知度の高い、5大陸134カ国で活動する世界的組織に成長しました――そして、そのすべては、ビジネス訓練など受けたこともない1人の女性のリーダーシップによって指導されていました。マザー・テレサの原動力、決断力、信念、独特な経営スタイルを研究することで、分かりやすい8つのリーダーシップ原則が見えて来ます。

 「マザー・テレサ」がどうしてその強烈なリーダーシップを発揮できたのか? その理由がここからの8つの原則によることなのでしょう。

原則1:ビジョンはシンプルに、伝える時は力強く

 若い頃、修道女としてコルカタに滞在している時、マザー・テレサの周りには絶望的な貧困にあえぐ人や重い病気を抱える人で溢れていました。そんな中、マザー・テレサは、自分の本当の生涯の仕事は、社会の重荷となり疎外されている人々を救い、彼らに献身することだと悟りました。

 1946年、マザー・テレサはわずか500ルピーを手にロレット修道会を離れ、小さな学校をスラム街に建てる活動に参加するよう、12人の修道女を説得しました。その後3年の内に、その活動は広がりを見せます。末期症状患者のためのホスピスや、ハンセン病患者のための施設を造りました。その後1950年には、「神の愛の宣教者会」は、貧しい人を助けることを目的とした、独立した修道会としてバチカン市国に正式に認められました。

 その後10年間で、同宣教者会は数多くのホスピス、児童養護施設、ハンセン病施設をインド中に設立しました。1965年、ローマ教皇パウロ6世によりマザー・テレサは他国に活動を広める許しを得ました。1997年に死去するまで、マザー・テレサはボランティアスタッフによる資金力豊かな活動を、100以上の国で統率しました。最貧困層に尽くすために立てられた同宣教者会の影響力は、彼女が生きていた時と変わらず今日も大きいままです。

 マザー・テレサの1つ目のリーダーシップ原則は、彼女の強力な個人的ビジョンに由来します。彼女の活動は、組織的なものになる以前は個人的なものでした。歴史を通して、(ビジネス、政治、人道的活動、軍隊など分野問わず)優れたリーダー達は全員、自分のビジョンを組織に持ち込む前に自らを省みます。これは、自分自身や優先順位、自分の本質的価値、そして個人的目標をしっかりと理解する上で必要なことだからです。これらは意識的に明確になる場合も、置かれた環境によって明確になる場合もあります。

 自分は「何のマザー・テレサになれるのか?」と自分に問いかけて下さい。ビジョンはシンプルにすることが大切です。そうすることで、叶えやすくなります。それと同時に、ビジョンは力強く伝えて下さい。日常会話や日々の行動の中で、情熱や信念を繰り返し一貫して示すことが重要です。仮に誰も見ていない時でも、ビジョンと一致した行動を取りましょう。効果的なリーダーシップとは、手本を示し、ビジョンを示し、組織中に素早くすみずみまでビジョンを広めることを意味します。

 自らが行うことのビジョンを明確にして、それを周囲の人間と共有できるようなシステムを作ることが大切ということでしょう。個人の目標を組織の目標として落としこむことでそれを分かりやすく伝えることができます。

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