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心の師匠を持とう田中淳子のあっぱれ上司!(1/2 ページ)

マネジャーは孤独だ。部下や仲間に相談できないプレッシャーや悩みをひとり抱え込まざるを得ないときがある。そんなときに優しく話を聞き、ときに厳しく指導もしてくれるのが心の師匠だ。

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 経営者は孤独なのだそうだ。そうおっしゃる経営者に時々出会う。そういえば以前、エグゼクティブを対象としたコーチングをしている方からこんな話を聞いたことがある。「経営者にはトップならではのさまざまなプレッシャーがある。社員に言えることと言えないこともある。立場が近い役員同士もライバルだったりするため、本音を語り合うこともそうそうできない。すごく孤独なんですよ。だからボクのような外部の人間にようやく本音で話せる部分もあるのです」と。

マネジャーの孤独

 “孤独”といっても、職場で孤立しているとか誰も会話してくれなくて寂しいといった話ではない。「他者には相談できないことが多い」「胸の内に納めておくべきことがたくさんある」という意味での“孤独”だ。「何をしても反対されたり、理解を得られなかったり、場合によっては強く反発されたりもする。それでも、なんとしてでも自分の意志で事業を推進していかねばならない」という“孤独”もある。これは何も経営者に限った話ではない。言えないことのレベルに差はあっても、マネジャーにだって同じことが当てはまるだろう。

 とある部長職の人が、「部下にすべてを説明するわけにいかず、自分の胸の中で納めているさまざまなトラブルがある。嫌な話を自分のところで止めているケースも多々ある。大きく変革したいと考えて部下に説明したところで、全員が賛同してくれるものでもないが、それでも推し進めなければならない。いちメンバーだったときはもっと気楽に誰とでも腹を割って話せたけれど、今は誰と何を話すかということにも相当気を遣う」と言うのを聞いたこともある。機密の度合いの差やコトの大小の違いはあれど、ポジションが上昇すると、“孤独”もセットで付いてくるものなのだ。

 人の成長という側面から、この「マネジャーの孤独」について考えてみる。

 部下に成長が求められるのと同じように、マネジャーだって成長し続けなければならない。では、私たちが成長するのはどんなときか。1人で悶々と思い悩み、考え抜いて、何かを見出すという場合もあるが、実は他者との対話で学びが深化することも多い。

 若いころはそういう対話相手として上司や先輩がいて、こちらから近づいて行かなくてもあれこれ薫陶を授けてくれた。しかし年齢を重ね、あるいは、ポジションが上がるに従って、何かを教えてくれる人や苦言を呈してくれる人は減ってくるものだ。どんなに謙虚であっても、どんなにオープンマインドでいたとしても、厳しく本音で教え諭してくれる人は少なくなる。腹を割って相談できる相手も少なくなる。そうなったら誰を頼りにすればよいのだろう……。

社外に師匠を持つ

 実は経営者やマネジャーは“社外”に師匠を持っていることがよくある。社内は上記の事情により、あまり頼りにできない。となると、社外の人間関係の中で「尊敬する誰か」、つまり「指導を仰ぎたい誰か」を見つけるのではないだろうか。その相手は「前職でお世話になった元上司」だとか「以前一緒にプロジェクトに取り組み、とても鍛えてくれた年長者」だとか、利害関係という意味では遠く、精神的という意味ではそこそこ近い相手であることが多いようだ。

 私も社外に教えを乞える人が何人かいる。彼らとの仲は、自然発生的に生まれたというよりも、自分で意識して獲得した人間関係である。仕事で知り合った方とか、本を読んだことがきっかけで出会えた方とか、知り合いに紹介されたまったく業界違いの方とか。何か困ったことがあったとき、悩んだとき、あるいは仕事で行き詰まりを感じたとき、そういう方々と話すと頭の整理ができることがある。場合によっては、びしっと指摘してくださることもある。

「淳子さん、それはこう考えればいいんじゃないかな」

「淳子さんはそのとき、こういう風に思ってしまったのではないの?」

「ボクも若いころ同じ経験をしたけど、そのときはこう考えて判断したよ」

 こういう相手を私は“心の師匠”と呼んでいる。心の師匠がいることで、自分の考えや行動を見つめ直し、ときに軌道修正するきっかけが得られる。迷ったときに相談し、意外なアドバイスを授けられたりもする。ありがたい存在だ。

 社外の人間関係を意識するようになったのはずいぶん遅くて、40歳を過ぎたころだった。あるときふと「社内で最年長に近づいて、誰も何も言ってくれなくなった。このままでは自分がダメになる」と自覚したのだ。

 そこで、社外に目を向けてみることにした。そこには大勢のステキな方たちがいる。利害関係が薄いので、厳しいことを言うのも辞さない人もたくさんいる――ある日突然そう思い、意を決して社外に出てみた。勇気を持って色んな人に会いに行ってみた。そうやって少しずつ“マイ心の師匠”を作ったのだ。

 いざというとき彼らにちょっと会いに行って、悩みや自分の課題を話す。“正解”が欲しいわけではないけれど、話し相手がいるのは大切なことだ。そしてそこで何かを得る。

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