外部からリーダーを採用するということ:ヘッドハンターから見たリアルリーダーとは?(1/2 ページ)
外部からのリーダーには、社内で育成する時間を短縮し速やかに事業を立ち上げたいなど、短期間での成果を求められる。速やかに成果を出すための重要なポイントとは?
前回は、求められるリーダーの資質は、組織のステージに応じて異なってくることについて述べました。今回はリアルリーダーを外部から採用、抜擢する場合のポイントや課題についてみていきましょう
社内で育成、抜擢をせずに、わざわざ外部からリーダー層の人材を採用するという場合には、何らかの理由があります。そもそもそういう人材が社内に存在していない、あるいは一から社内で育てている時間がないなどが考えられますが、以下に簡単にまとめておきます。
(1)新規事業を立ち上げるためのリーダー
社内で一から新規事業の人材やサービスを立ち上げる時間と手間を短縮するため、ビジネス寄りの思考が強いリーダーを採用する。
具体的なポジションとしては新規事業の事業部長やその製品やサービスを創り出す事ができる製品開発部長、あるいは事業開発部長でその業界に精通している競合他社よりヘッドハンティングしてくるケース。
(2)既存ビジネスの停滞や伸び悩みを解消できるような新風を吹き込めるリーダー
通常一定の規模の組織であれば、社内で抜擢、異動をするケースが多い。
しかし、敢えて外から人を採用する場合には、社内のしがらみがなく抜本的な改革や改善をしやすいリーダーを採用する。
具体的なポジションとしては、事業部長クラス、事業開発部長、製品開発部長など。場合によっては全くの異業種から採用することによって、新しい観点からビジネスを捉え、変革を促すケースもある。
(3)組織自体の再構築や組織変革ができるリーダー
組織が成長し、次のステージに移行するために必要な人材を採用する。
具体的なポジションとしては経営層や管理部門の強化の場合が多く、ナンバー2ともいえるCOOやCFO、あるいは管理本部長、経営企画室長、社長室長、人事部長などの補充や場合によっては入れ替え。
(4)組織の衰退縮小を阻止し事業再生、V時回復ができるリーダー
ファンドやメイン銀行などのステークホルダーから送り込まれる場合が多い。経営層(いわゆるCEO、COO、CFO)あるいは管理部門の管理本部長、人事本部長などのポジションの入れ替えや補充。
(5)次世代のリーダーあるいは次期社長及び幹部層の後継者となり得るリーダー
外資系企業やオーナー企業に多く見受けられる。社内での人材育成が難しいレベルであることから、外部からの採用あるいはプロパーの社員だけではなく、中途採用の候補者も入れることによって社内の人材活性化を図る。
具体的なポジションは管理部門〜事業部門まで多肢に渡るが、30~40代の若手中間管理職として採用。
業界の特質やその組織の状況によって求められるリーダーのスキルや経験そして人間性(パーソナリティ)は異なってきますが、上記(5)を除き、(1)〜(4)に共通して言えることは、基本的には社内で育成していく時間を短縮して速やかに事業を立ち上げたい、あるいは組織を早急に変革しなければならないなどの理由があります。従って、このリーダーたちには比較的短期間での成果を求められることになります。
速やかに成果を出すための重要なポイントとは?
外部からリーダーを採用する際には、まずベースとして即戦力となり得る業界での経験や揺ぎ無い実績、および戦略、戦術策定能力と実行力などのスキル面を見られます。それとともに自分の考えをきちんと伝えられる能力や相手の意見や思いを受け取る能力、決断力やスピード感などのヒューマンスキルも必要とされます。
しかしながら、わたしが考える最も重要なポイントは、既存の組織の人たちとのフィット感や企業カルチャーとのフィット感です。そうでなければ既存の組織に受け入れられず、結局はじき出されてしまう可能性もあります。
もちろん、現状に何らかの問題点があるからこそ、外部からリーダーを採用、抜擢するので、その組織の「今」だけで判断するのではなく、その組織のあるべき姿そして進むべき「未来」の組織とのフィット感が大事です。
特に組織変革を求められるリーダーの場合には、全員ではないにしても社内で本当に変わりたいと心から願っているキーマンやリーダー、そして現場の人たちからの支持を得られなければ真の変革を成し遂げることはできません。組織を変えていくためには、組織に深く入り込み、その組織や製品、サービスの強みを再構築、再発見し、みんなが共感できる未来を描き、進むべき方向性を示し、周りの人たちを巻き込んでいくことで成果を出すことができます。
組織はたった一人では変えることはできません。ただし、熱き志を持った本物のリーダーが組織に加わることで閉塞感が破られ、様子見の社員の人たちの意識が変わり、やる気が芽生えます。「当事者意識」を持って各自が仕事に取り組み、それぞれがシナジーを出せるような仕組みを作ることができれば、大きな波が湧き上がり、奇跡は起こります。
外部のリーダーは財務的な出血を抑えることはできたり、組織に刺激を与える起爆剤にはなれても、事業自体が活性化しない限り本当の意味での事業再生にはならないでしょう。 そういう意味で、実際に組織を変えていけるのは既存の社員たちです。その中で適切なリーダーを抜擢し、ポジションを与え、彼らの後ろ盾となりきちんとサポートすることによって変革は成し遂げられます。
従って、外からリーダーを採用する際には、本当にその組織カルチャーの中で活躍できる人物なのか?をしっかり見極める必要があります。また逆にいえば、そういう人を採用することで結果として短期間で成果を出しやすいともいえます。
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