どこから褒めるか、どこまで褒めるか:田中淳子のあっぱれ上司!(1/3 ページ)
良いときは良い、悪いときは悪いとはっきり言う。では良くも悪くもないときは、どう言えばよいのだろうか。
若手や中堅世代に「やる気がなくなるとき」を聞くと、「何のためにするのか分からない仕事を与えられたとき」や「上司が話を聞いてくれないとき」、そして「仕事の成果に対して、いいとも悪いとも言ってもらえないとき」と言う声が多く挙がる。
「良いなら良い、悪いなら悪いって言って欲しいよね」「『あれでよかったのか』とずっと気になって、もしかするとまずかったのかなと心配にもなることもあるし」「気になって『私が提出した資料、どうなりました? 見てもらえました?』と聞きに行くと、『ああ、あれね。もうお客さんに出してOKもらったから』なんて涼しい顔して言われちゃって、『だったら、その結果を教えてくれよ』と思ったりね」「そうそう」なんて盛り上がっていく。
この話を今度は管理職の集まりでしてみると、「え? だって、いいから何も言わないんだよ」「ダメだったらダメって言うよ」という反応が返ってきたりする。部下のキモチと上司の考えは必ずしも一致しないもののようだ。
上司と部下のすれ違い
「良いなら良いとちゃんと伝えた方が部下もすっきりしますよ。『良かったよ』と言ってあげればいいじゃないですか」と提案してみても、「いや、でも褒めるってほどでもないんだよね」「できて当たり前レベルだから、特に何も言わないという部分もあるよ」と返ってくることもある。
仕事をした側は「良いなら良い、悪いなら悪い。うんともすんとも言ってもらえないとなんとなくすっきりしない」と思っているのに、仕事を指示した側は「ダメなら言うけど、期待通りだけど“できて当然レベル”でもあるし、わざわざ口に出して部下に何かを伝えるほどでもないかなと思って何も言わない」という捉え方をしているようだ(もちろん、上司も部下も全員が全員そう考えるわけではないが)。
上司サイドの「悪いときは言うよ。ダメ出しするよ」も「期待を大きく超えて何かしてくれたら、そりゃあボクだって大絶賛するけれど、まあ期待通りだからね」は、前者は“−α”にフォーカスし、後者は“+α”を見ているのだろう。でもそうなると“期待通り”、つまり“±0”の領域は、誰からも何も言われない(部下の言葉を借りれば「良いとも悪いとも言われない」)ことになってしまう。でも実は「できて当たり前」の領域にフォーカスすることこそ大事なのである。
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