男女・年代別マーケティングは「もうできない」 マルチデバイス時代の情報行動5つのタイプ、Googleが分類
Googleがテレビ、PC、スマホの3つのデバイスを利用するユーザーを対象に行動分析し、情報接触行動を5タイプに類型化した。「F1層もM1層も、もういない」という。
「『F1層』も『M1層』も、もういません」――Google日本法人は12月16日、複数のデジタルデバイスを利用しているマルチスクリーンユーザーの行動分析に基づき、情報接触行動に関する5つのタイプを発表した。男女や年代による傾向はあまり見られず、「単純な区分けは意味を成さなくなりつつある」とまとめている。
インテージのシングルソースパネル「i-SSP」を利用し、テレビ、PC、スマートフォンの3つを保有し利用している20〜60代の男女500人を対象に、それぞれのツールの使用時間や視聴・行動内容をデータで取得して分析を行った。意識的に回答するアンケートに比べ、ユーザーの先入観やバイアスが入らないのが特徴の手法だ。
情報接触行動データに基づき、同社が類型化した5タイプは以下の通り。
1.キマジメ大食らい(全体の22%)
デバイス利用時間が全体的に長く、朝起きたらすぐにテレビの電源をオン。情報番組が好きでテレビからトレンドを知るタイプ。昼間もすきま時間にスマホで最新情報をチェックし、雑誌の購読数も多い。ものを買う時は慎重派で、価格比較サイトや口コミサイトでしっかり確認。「地元」「昔なじみ」の意識が強く、人付き合いはこれ以上広げなくてもいいと感じている。接触メディアは取捨選択ではなく追加していくタイプで、情報を追うことに躍起になっている側面も。
2.ハラハチブ自由人(全体の15%)
メディア接触時間が全体的に短く、特にテレビ視聴は極端に少ない。PCの利用は夜型。ニュースや天気予報はスマホで知り、雑誌を読む習慣はほぼなし。リアルショップよりオンラインで買い物することが多く、必要なものを買うスタンスなためあまり悩まない。騒がしい空間が苦手で、SNSもあまり好まない。
3.ヒマツブシ貴族(全体の30%)
とにかく持っているデバイスは常時電源をオン。PCやスマホは調べるものではなく楽しむもの。テレビ番組ではワイドショーを好み、スマホではゲームや動画の利用時間が長く、写真や動画を撮ることも多い。衝動買いも多く、話題の商品はいち早くチェック。生活の充実感はリアルな接触で感じたいと考えているため、付き合いや交際のための支出は削れない。
4.探索ナルシスト(全体の22%)
PC利用が少なく、メインデバイスはスマホに移行。テレビでは報道番組など堅めの番組を見ることが多い。スマホからでも価格比較サイトや企業サイトを閲覧して情報収集。何かを購入する際はPCで行うことが多く、メディア間の使い分けが明確。他人にどう思われるかより「自分は自分」という意識が強い。世間的な「ブランド」とは一線を画したいため、テレビで取り上げられるとそっぽを向きがち?
5.社交的ハンター(全体の12%)
テレビよりもPCやスマホの利用時間が長い唯一のタイプ。深夜帯の利用が多く、常にアクティブに情報を収集し自分でも発信。SNSを活発に利用し、友人とのやりとりも多い。ワイドショーは見ず、よく触れるのはスポーツ番組。話のネタになるようなものを買いたい、自分が薦めたものを周りの人が買うのがうれしいなど、購買行動がコミュニケーションの一部になっている。
また、テレビ番組の視聴中にマルチスクリーンでPCやスマホを同時に開いている割合は、総視聴時間中24%にもなった。特に「社交的ハンター」に属する人はテレビ視聴時間のうち3割以上をマルチスクリーンで楽しんでいることが明らかになった。
テレビを見ながら他デバイスをどのように利用しているかをサッカーの国際試合を例に見たところ、相手チームにゴールやセーブなどのアクションがあったシーンでは検索行動、日本代表の見せ場ではメールやSNSなどの共有行動が多いことが分かった。試合を見ながら何らかのオンライン行動を行った率はどのタイプでも5割を超えたが、特に「探索ナルシスト」「社交的ハンター」に属する人は7割以上となり、率先してコミュニケーションや情報収集を行っていた。
Googleの小林伸一郎マーケットインサイト 統括部長は調査で得られたユーザー分析の知見として、(1)「PCが普及してテレビが見られなくなった」「スマートフォンの普及でPCが使われなくなった」という単純なトレードオフは見られない、(2)情報接触のツールは個人の考え方やライフスタイルで異なり、従来のように男女・年代別に分けては分析に不適切、(3)マーケティングには多メディアで複合的に訴求していくことが必要――の3点をまとめとして挙げ、以下のように述べた。
「多デバイス化によって行動の多様化はますます進んでいるが、個々人の価値観やライフスタイルに基づくものであって、従来の単純な区分けは意味をなさなくなりつつある。とはいえ類型化できなくなっているわけではなく、実際に行動データを分析すると驚くほどきれいに5つのタイプに分けることができた。タブレットの普及が進むことでまた状況は変わっていくはず。同様の調査の実施予定はまだないが、今後も注視していきたい」(小林統括部長)
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