方針浸透のカギを握るマネジメント職――真意を伝えるために「チーム」の力を生かす:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)
真意を咀嚼し、「自分の言葉」にするとはどのようなことか。「腹に落ちると一気に動く」という現場実行力を持つヤマトグループに学ぶ。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
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会社が大きく方向転換をするようなとき、「方針を浸透させるプログラムはありますか?」という相談を受けることが多々あります。「部門に降ろした戦略がなかなか実行されない」という悩みを抱える企業が少なくないのです。
個々がバラバラに解釈する「伝言ゲーム型」
方針「浸透」の意味するところは、職場や現場のメンバーが理念や方針を自分の仕事の目的に置き換えて具体的に考えられるようになること。つまり、個々人が主体的に考えることで、日々の仕事を通じて理念や方針を実行できるようになる、ということです。
こうした方針が伝わらず、実行されないという悩みの裏には、そもそも方針の「真意」が正しく伝わっていないという問題があります。通常、多くの企業に見られる方針浸透の方法は、カスケード型になっています。方針書が作成され、方針説明会やミーティングが熱心に行なわれます。そうやってかなりの労力を費やしているにも関わらず、方針書にあるキーワードは形式的に落ちてくるものの、じつは、その真意はほとんど伝わっていません。キーワードは受け取っても、個々が自分の受け取れる範囲、自分なりの理解の範囲で解釈するために真意が抜け落ちてしまう、いわば「トップダウンによるキーワード伝言ゲーム型」なのです。
その結果、公式の方針も、個々が自分に都合よく受け取るために解釈がまちまちになった「属人的な方針」になりがちです。方針が、真意のない骨抜き状態になっていくのです。さらに、それを現場が受け取ると、方針のキーワードが単なるキャッチフレーズとなり、自分の仕事と結びつかないリアリティのないものになってしまいます。
「チーム」で真意を共有して「チーム」に伝える
では、どのようにすれば方針の真意は正しく伝わっていくのでしょうか。
文書になっているフォーマルな方針書からその真意を読み取ることは、部下にとっては思いのほか難しいものです。トップは、文書で伝えれば社員はブレなく受け取るだろうと考えるかもしれません。しかし、一方通行の伝達には、受け取れる内容に限界があります。
多くの会社を悩ませている既存の方針浸透の限界を、どのように乗り越えていけばよいのか、そのカギは「チーム」にあります。方針の真意を「チーム」で受け取る方法です。
方針の背後にある真意について、チームで話し合うことによって咀嚼し、個々が都合よくバラバラに認識するという「個人の限界」を乗り越え、全体像としての共通認識を形成していくのです。
そこでは、方針書の真意がチームで共有され、さらにその上に、自分は「こうしたい」「こうやりたい」という意志や思いがこもっていき、メンバーがた「自分の言葉」で語れるようになっていきます。それは単なるキャッチフレーズのような無機質な情報とは違います。考え抜くことを通じてエネルギーを帯びた言葉は、生き生きと訴えかけ、人を動かすのです。
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