デジタルビジネスに欠かせない3つの技術的要素:Gartner Column(1/3 ページ)
刷新されたエンタプライズ・アプリケーションは、デジタル・コアを構成する主要な技術的要素である。新しいデジタル・ビジネスモデルがデジタル経済に積極的に関与できるようになる。
前回はデジタルビジネスには何が必要か、また実現に欠かせないデジタル・コアには3つの技術的要素が必要であることを説明した。今回はこの3つの技術的側面について説明したい。(図1参照)
エンタプライズ・アプリケーションを刷新する
刷新されたエンタプライズ・アプリケーションは、デジタル・コアを構成する主要な技術的要素である。ERPや、その他のフロントオフィス・アプリケーションは特に、ポストモダンのエンタプライズ・アプリケーションにする必要がある。こうした刷新済みのアプリケーションによって、新しいデジタル・ビジネスモデルがデジタル経済に積極的に関与できるようになる。
大半の企業は、密に連携した一枚岩のバックオフィス・アプリケーションを使っている。従来型のERPや不適切なレガシー・システムなどがそうであり、こうしたシステムでは古い情報/データ機能が閉じられたビジネス・アーキテクチャに組み込まれている。それぞれの目的にあったこのアプローチは、過去のプロセス改善に対するニーズに応えるものだった。ガートナーはこれを「ITの工業化」と呼んでいる。
ITの工業化は、エンタプライズITの第2の時代であり、この時代、企業はアナログのプロセスを自動化することでサービスとソリューションの効率と効果を高めようとしていた。この時代は20年続き、企業は外部の世界に注力せず専ら社内に目を向けていた。
新しいゲーム・ルールに従うために、企業は今、デバイス/テクノロジに依存しない複数のチャネルを通して新しい革新的な製品/サービスを提供することで「顧客経験価値」を変えている。デジタル経済では、カスタマー・チャネル(コールセンター、Web、モバイル、タブレットなど)をすべて、一貫性のある集約されたバックオフィス・データ(財務データ、マスタ顧客データなど)とシームレスに統合することで、一体化されたエンド・ツー・エンド・プロセスと顧客経験価値を提供する必要がある。
「力の結節(モバイル、ソーシャル、クラウド、インフォメーション:4つのITパワー)」を構成するモバイルとソーシャルは、複数のフロントオフィス・ソリューションを使い、全顧客接点を統合することを企業に求めている。企業にはもはや、「複数の人格」を持って、対話チャネルによって振る舞いを変えている余裕はない。顧客から電話があれば、過去にあったWeb(あるいは他のデジタル・チャネル)経由の問い合わせを知らないとは言えない。
ガートナーの調査によると、デジタル・ビジネスの担い手が自分自身であると認識しているCIOはいずれも、フロントオフィス・ソリューション(Web、モバイル・アプリケーション、SMS 対話、CRM プラットフォーム、コールセンター・アプリケーションなど)には、このように高度な統合と透明性をサポートする、刷新済みでコンポーネント化されたアーキテクチャが必要であると認識していた。
「オムニチャネル」は真新しい概念ではないが、大半の企業は各デジタル・チャネルのために、顧客経験価値をバラバラにする個別のEビジネス・ソリューションを構築してきた。スピード重視で設計された、これらの孤島化したアプリケーションやプロセスは、バックオフィス・データと緩やかにしか連携していない。バックオフィスのデータ更新も一晩かけて行われたり、古いバッチ・プロセスが使われたりすることもあった。
こうして、多くの企業はデータと情報の面から、アナログとデジタルの世界へのさまざまなビジョンを描いてきた。フロントオフィス・アプリケーションの統合が必須の、完全刷新されたコアでは、標準化されたバックオフィスのシステムと機能(請求処理など)が、同一サービスを提供する幅広いデジタル・チャネルをサポートしている。これによって、顧客を全事業部、全製品にわたって一貫して洞察し、優れた顧客サービスと共通の顧客経験価値を提供できるようになる。
ガートナーが調査したある企業では、IT コアを大幅に刷新した後、最終的には全5事業部の全39製品にわたって一本化された請求処理を活用できるようになった。このためには、関連するフロントオフィス・アプリケーションをすべてコンポーネント化し、新しいSOAの一部にする必要があった。顧客接点を強調したデジタル・エンタプライズ・ビジネスモデルも導入した。これは単純明快なソリューションに見えるかもしれないが、国内の企業はまだ大半がこの地点に達していない。
新しく革新的な顧客経験価値のほかにも、刷新済みのデジタル・コアはデジタルな「ビジネス・モーメント」を増大させる。これは、企業がオムニチャネル戦略を通していつでも開拓できる機会である。ここでもやはり、このエンド・ツー・エンドのデジタル・プロセスを機能させるには、プロセスの観点から管理されたポストモダンな統合システムが必要となる。
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