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» 2019年04月25日 10時52分 公開

“キャッシュレス後進国”の汚名 ポイント還元策で返上なるか

複雑な制度は分かりにくく、導入前から多くの課題が指摘されているものの、政府の対策を機にシェア拡大をねらった、キャッシュレス事業者によるサービス合戦が熱を帯びている。

[産経新聞]
産経新聞

 政府が10月の消費税増税時に実施する、キャッシュレス決済に伴うポイント還元策。複雑な制度は分かりにくく、導入前から多くの課題が指摘されているものの、政府の対策を機にシェア拡大をねらった、キャッシュレス事業者によるサービス合戦が熱を帯びている。ポイント還元策にも100社を超える事業者が登録申請を行っているという。対策の実施により“キャッシュレス後進国”の汚名は返上できるのか。

前哨戦は活況

現金払いお断りの飲食店「ギャザリング テーブル  パントリー」=平成30年5月、東京・馬喰町(酒巻俊介撮影)

 ポイント還元策は中小店舗で商品を購入する際、現金を使わずにクレジットカードなどで支払うと、5%がポイントで還元されるという施策。増税後の消費を促すことに加え、先進国の中でも低いとされるキャッシュレス決済の普及という2兎を追ったもので、増税後の10月から9カ月間実施する、政府の消費税増税対策の目玉だ。

 こうした動きを見据えて盛り上がりを見せているのが、新規参入組の決済事業者だ。10月のポイント還元策実施までにシェアを伸ばそうとサービス合戦にしのぎを削っており、LINEペイやペイペイなどは買い物の20%を還元するといった大胆な戦略に打って出ている。関係者からは「こうした流れを機に、キャッシュレス決済が一気に広がれば」と期待する声が目立つ。

効果は限定的?

 ただ、大和総研の長内智主任研究員は「呼び水効果は期待できるものの、政府の対策だけでは明確な効果は期待しにくい」と語る。政府はポイント還元策に向けて平成31年度予算に2800億円を計上したが、消費税増税によって増える負担の4兆6000億円に対して、わずか6%の規模にとどまるからだ。

 持続性も課題だ。政府のポイント還元対策は来年6月まで続けられるが、長内氏は「日本の消費者は非常に賢く、お得な期間が終了した時点で、キャッシュレスを使わなくなる可能性がある」と語る。

 店舗側への配慮も重要となってくる。キャッシュレス事業者は、キャッシュレスのサービスを提供する代わりに店舗から決済額の一定割合を手数料として受け取っている。この手数料が高いこともキャッシュレス普及の妨げになっているとされ、ポイント還元策の期間中は、事業者が加盟店から受け取る手数料率の上限を決済額の3.25%以下とした。

 しかし、ポイント還元策の終了後に手数料が引き上げられることを憂慮し、参加を見送る店舗が相次ぐようだと、キャッシュレス決済が可能な店舗は広がらず、政府の目算は外れることになる。

 「新しいキャッシュレス時代を開く大きなきっかけとしたい」。安倍晋三首相は3月20日に日本商工会議所が開いた通常会員総会で、ポイント還元策に言及し、こう挨拶した。

 ただ、そのためにはポイント還元で単にお得に買い物ができる以外に、利用者と店舗の双方が、現金を使い続けるよりもキャッシュレスに切り替えた方がよいと思える“魅力”が実感できるよう、環境を整備しておくことが不可欠といえそうだ。(経済本部 蕎麦谷里志)

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