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» 2019年11月05日 11時30分 公開

量子計算、世界変わる 一瞬で最適解、創薬や渋滞回避……あらゆる業種で活用

量子コンピューターの開発が進む中、企業の間で活用の可能性を探る動きが広がっている。

[産経新聞]
産経新聞

 量子コンピューターの開発が進む中、企業の間で活用の可能性を探る動きが広がっている。スーパーコンピューターをはるかに上回る計算能力や膨大な選択肢の中から一瞬で最適解を導く性能には、化学品や創薬を含む素材から金融、IT、自動車まであらゆる業種の企業が注目している。

 量子コンピューターの活用で早期の実用化が期待されているのが素材開発だ。化学最大手の三菱ケミカルは、米ニューヨーク州にある米IBMの量子コンピューターを、慶応大のキャンパス(横浜市)の拠点から遠隔で利用。次世代電池の「リチウム空気電池」の開発などをテーマに挙げるが、あまり分野を絞らずに活用に向けた準備を進める方針だ。担当者は「材料設計などへの活用が期待され、研究開発を進めていく上で破壊的な技術になる可能性を秘める」と話す。

 化学大手ではJSRもIBMと慶大のプロジェクトに参加しており、半導体材料やディスプレー材料の開発に生かす考え。同じくプロジェクトに参加するみずほフィナンシャルグループと三菱UFJ銀行は、金融サービスの開発や市場取引に役立てようとしている。

 IT企業の関心も深い。メルカリは平成29年12月に設立した研究機関に量子技術の専門チームを設置。量子コンピューターの高い計算能力で東北大などとロボット技術を開発しているほか、効率的な商品配送をはじめとする自社サービスへの活用も視野に入れる。

 すでに一定の成果を収めている企業もある。OKIが子会社のプリンター工場を対象にシミュレーションした結果、部品などを製造する装置の配置を工夫することで、作業員の移動距離を平均で28%減らせた。

 自動車部品大手のデンソーは、カナダのディー・ウエーブ・システムズの量子コンピューターをクラウド経由で利用。豊田通商とともにタイで29年から行った交通情報配信サービスの実証実験で、約13万台の車の位置データから渋滞回避経路を検証したほか、自社工場内の部品搬送車の運行実験では実際に稼働率が15%向上したという。

 ただ、本格的な量子コンピューターの実現には技術的な課題も多い。計算には精密な制御が必要で、現状では多くの計算ミスが生じる。回路を大規模化すればミスを訂正できるとされるが、装置の巨大化をどう抑えるかが課題だ。超電導物質などを使うため、装置を極低温や真空といった特殊な環境に置く必要があることも実用化をはばむ。

 一方、量子コンピューターが実現すると、通信などに使われている暗号が解読され、インターネットや金融取引、安全保障などが脅かされる恐れもあり、新たな対策が求められる。

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