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» 2019年11月26日 10時37分 公開

サッポロ、品種開発でSDGsに貢献 気候変動に「育種」で挑む

サッポロビールは、ビールの主原料である大麦やポップの育種と、生産者との協働契約栽培の“2本柱”で、気候変動リスクへの対応を目指している。

[SankeiBiz]
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 国際社会が抱えるさまざまな問題について、2030年までに解決すべき共通課題を示した国連のSDGs(持続可能な開発目標)。サッポロビールは、ビールの主原料である大麦(麦芽)やポップの育種と、生産者との協働契約栽培の“2本柱”で、気候変動リスクへの対応を目指している。高島英也社長は「まさに企業理念そのもの。気候変動の影響を受ける原料の安定的な確保は、世界規模の課題だ」として、独自の強みに磨きをかけている。

サッポロビールは2006年から大麦とホップの協働契約栽培を継続している

LOXレス大麦を発見

 育種とは、期待する優れた特性を有した品種同士を交配し、さらに良質な品種を創り出すこと。地道で手間がかかる。

 気候変動が大麦に与える影響について、収穫時期の長雨による「穂発芽」や「赤かび病」などへの懸念が強まっている。穂発芽は、収穫前の穂に実った種子から芽が出る現象で、ビールの原料として使用できなくなってしまう。赤かび病はかびが原因で発生する病害で、大麦の品質を低下させてしまう。

気候変動への取り組みを語るサッポロビールの高島英也社長

 大麦の育種を行っているのは、バイオ研究開発部麦育種開発センター(群馬県太田市)。廣田直彦センター長は「原料生産者が丹精を込めて作った大麦が、病害などによって等級を落としたり、ビールの品質に影響を及ぼしたりといったことが起きないよう、育種で解決するのが私たちの使命」と話す。

 サッポロビールは、大麦の育種や研究で世界から高い評価を得ている。1981年には、欧米の優良品種をしのぐ品質の高さから“奇跡の大麦”と呼ばれた「はるな二条」を開発。また、岡山大と共同で、ビールの香りや味を劣化させる酵素を含まない大麦(LOXレス大麦)を発見した。ビール大麦との交配を根気強く繰り返すことで、「LOXレスビール大麦」の育種に成功した。約10年の歳月が流れていた。

 2015年からは、LOXレスビール大麦の「旨さ長持ち麦芽」を自社ブランド「黒ラベル」に一部使っており、好評を得ているという。

チェコのホップ救う

 一方、ホップの育種・研究は、バイオ研究開発部北海道原料研究センター(北海道上富良野町)が担っている。地球温暖化の影響について、同センターの鯉江弘一朗シニアマネジャーは「ホップの産地によっては、高温、乾燥によるストレスから収量などに影響を及ぼすおそれがある。実際、産年によって苦味成分の生産量が低下するといった影響が出始めている」と指摘する。

ビールの主原料の一つ、ホップ

 そこで、サッポロビールの親会社、サッポロホールディングスは17年7月、東京農業大と包括連携協定を締結。気候変動がもたらすリスクに産学連携で挑戦する共同研究を開始している。鯉江氏は「当社と東京農業大との共同研究で、ホップは品種によって根を張る深さに違いがあるとみられることが初めて分かった。植物全般に言えることだが、深く広がりのある根を持つほうが高温や乾燥に強いとされるので、根の発達に着目した品種の研究開発を行っている」と説明する。

 サッポロビールのホップ育種技術が、“チェコホップの危機”を救ったこともある。

 世界最高品質のホップの産地として知られている、チェコ北西部のザーツ地方では、1970年ごろからウイルスの影響でホップの品質が低下し、収量が減少する事態が発生した。サッポロビールは、現地に技術者を派遣して無報酬で技術開発と指導を行ない、89年からウイルスの影響を受けないホップ苗を作り出すことに成功。かつての品質を蘇らせることに成功した。

 こうした育種によって創り出された優良品種は、サッポロビール独自の原料調達システム「協働契約栽培」で調達される。

 協働契約栽培とは、気候変動などの影響を回避、低減するために原料の産地を世界各地に分散させつつ、(1)大麦、ホップの産地と生産者が明確であること(2)生産方法が明確であること(3)同社と生産者との間に交流があること−を条件に、生産者と一緒に良質な原料を生産し、安定的に調達する仕組みのことだ。原料生産者とともに安全・安心で良質な大麦、ホップをつくり、「選りすぐりの原料だけで、おいしいビールをつくる」ことを使命にしている。

 大麦、ホップの育種は、SDGsの17の目標のうち、目標2(飢餓をゼロに)、目標13(気候変動に具体的な対策を)、目標15(陸の豊かさも守ろう)などの達成に貢献する取り組みとされる。

 高島社長は「全社員が本業を通し、さまざまな社会課題に真摯に向き合い、その解決を積み重ねていくことは、SDGsのゴールそのもの。将来、サッポロの“世界で唯一の物語”につながっていくと考えている」と話している。

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