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» 2020年02月25日 11時30分 公開

お得感でヒットの原石掘り起こしへ KADOKAWAが文庫の電子版定額読み放題サービス本格開始

電子コミック(漫画)などで広がる定額制読み放題サービスのいわば「文字もの」版。

[産経新聞]
産経新聞

 KADOKAWAと電子書店を運営するブックウォーカーが2月、1万点を超える小説の文庫などの電子版が読み放題となる「角川文庫・ラノベ読み放題」を本格始動させた。電子コミック(漫画)などで広がる定額制読み放題サービスのいわば「文字もの」版。背景を取材すると、電子書籍を取り巻く苦境と可能性の両面が見えてきた。

 「角川文庫・ラノベ読み放題」は月額760円(税別)を支払えば、KADOKAWAが電子書店「BOOK☆WALKER」で販売する小説やライトノベルなどのうち、対象に指定された1万点以上が読み放題となるサービス。昨年12月から今年1月末までの無料期間を経て、2月から有料化された。

 読み放題対象は随時入れ追加されるが、現在、伊坂幸太郎さんの『グラスホッパー』や森見登美彦さんの『ペンギン・ハイウェイ』といった人気作家の映像化作品が並ぶ。創刊70年の歴史を誇る文庫らしく、映画とのメディアミックスの先駆けとなった森村誠一さんの名作『人間の証明』、横溝正史の金田一耕助シリーズも入っている。

 「角川文庫とライトノベルは“文字もの”系の二枚看板。強い作品を出して新たなユーザー獲得につなげたい」と、KADOKAWAの芦尚文・デジタルコンテンツ部長は話す。

 試みの背景には電子出版を取り巻く厳しい現実がある。「BOOK☆WALKER」内で、電子コミックの売り上げはここ数年、前年比2倍に迫る急成長を続けている。ただ文芸作品など「文字もの」の伸びは小さいという。実際、昨年1年間の電子出版の推定販売額(出版科学研究所調べ)も前年比23.9%増の3072億円に達したが、成長の牽引(けんいん)役は同29.5%伸びたコミックで、「文字もの」は同8.7%増にとどまる。ブックウォーカーの栗本直彦・ストア事業部長は「読むためのハードルを下げるうえで、『読み放題』は有効。コミックでは一冊ずつ売るだけでなく一話ごと売る手法も、すでにいろんな電子書店で行われている。図書館で週に何冊も本を借りて読む方々にも使っていただければうれしい」と話す。

 サービス開始から2カ月余り。今のところ読み放題の影響で単品の販売が減少することもなく、意外な効果も生まれているという。栗本さんは「“単品売り”だとヒット作や新作に人気が集中しがち。何冊でも読めるサービスだから、新作から数年前の小説まで幅広く読まれ、著者にも(利益が)還元されている」と、埋もれたヒットの原石の掘り起こしにつながる可能性を指摘する。

 「文字もの」の電子版定額制読み放題サービスにはほかに、和書だけで12万冊をそろえるアマゾンジャパンの「キンドル・アンリミテッド」やKDDIの「ブックパス」などがある。

 出版科学研究所の久保雅暖研究員は「細切れの時間に一話ごとに読める電子コミックはスマホとの相性が良い。対して電子版の“文字もの”は読むのに時間がかかることや品ぞろえがまだ少ないこともあって伸びは鈍化している。読み放題サービスは、そうした現状を打開する策の一つとして注目されているのでは」と話す。 (文化部 海老沢類)

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