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» 2020年07月03日 08時26分 公開

コロナ時代の災害時避難 分散型電源の普及が急務

日本で次に心配なのは、コロナ第2波と並び毎年必ずやって来る台風や豪雨ではないか。

[SankeiBiz]
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 新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が5月25日に全面解除になった。今後は、経済面でのU字回復を目指すことになる。日本で次に心配なのは、コロナ第2波と並び毎年必ずやって来る台風や豪雨ではないか。

 大都市であれ、地方都市であれ、自然災害発生時、避難所でしのがなければならなくなることがある。今回のコロナ禍での教訓として避難所が三密状態になってしまわないかと非常に心配だ。避難所で避難民を振り分ける際、個々の避難民に充てられる空間が小さ過ぎると三密となってしまう。

画像はイメージです(Getty Images)

ハザードマップ見直し

 最近、「分散型避難(マルチ避難)」という言葉が出始めている。三密を回避するための新たな避難概念である。今までの避難の概念は、大まかにいえば、地域ごとに指定された避難所に全員を集めようとするもの。これに対し、指定避難所ではなく、自宅や自家用車あるいは他の民間施設で難を逃れようとするのが分散型避難。豪雨の最中に避難所に向かい、逆に被災してしまうこともないとはいえない。分散型避難を取り入れる場合、自治体ごとに作成するハザードマップ(被害予測地図)を見直すことが急務となる。夏から秋にかけて豪雨・台風の発生が予想される中、河川氾濫を想定したハザードマップ見直しは最優先課題だ。

 分散型避難を想定したハザードマップの作成に向けて、北海道胆振東部地震(2018年9月)や、昨秋に関東を直撃した大型台風15号、19号での被災状況を思い起こしてみると、広域停電の際の避難場所における電源確保が大きな課題。停電しても通信手段を維持し続けることは、家族や友人の安否確認や、避難時での心理的安定などの観点からも大事なこと。要するに、携帯電話(スマートフォン)やタブレット、パソコンの電源をどう確保するかだ。

 それほど大規模でなくとも、小規模な電源(分散型電源)を持っておくことで、急場をしのげるようになる。分散型電源普及に向けた防災行政の取り組みは(1)分散型避難の概念を取り入れたハザードマップの策定(2)自宅避難をする人々への備蓄ガイドラインの策定(3)自宅向け分散型電源(太陽光パネルなど)の導入に係る公的支援制度の整備(4)避難所向け分散型電源の導入に係る公的支援制度の整備−などだろう。

 近年の自然災害は甚大化し、停電の復旧に数週間かかることもあった。広域停電を経験し、ライフラインとしての電気の重要性が改めて認識させられた。通信手段の大宗が携帯電話であるという実情が、それに拍車をかけた。上記(3)で分散型電源の例として太陽光パネルを挙げたのは、台風一過は必ず晴れるので、そのときに有効な発電手段になるからだ。避難場所がどこであっても、である。

太陽光発電で備えを

 分散型避難に向けたハザードマップを策定する場合、指定避難所の三密を回避する方法として、自宅避難だけでなく、指定外の施設の利用に関しても検討しておく必要がある。そういった施設が臨時の避難所としての機能を持つためには、飲食品の備蓄を確保しておくことの他に、情報の受発信機能が必須となる。そのためにも、発電手段の確保は不可欠だ。各自治体が持っておくべきは、持ち運びできる大きさの太陽光発電機や蓄電池のセット。太陽が照りさえすれば、取り急ぎの電力を確保できる。既に、緊急時というより、屋外キャンプ場などでも活用されている。とても身近なものだ。

 緊急時の電源は、緊急時に使うだけではもったいない。日頃から使っておけば、いざというときに、使用方法を迷うこともない。蓄電池にためておく電気は、太陽光発電からの電気だけでなく、通常供給される電力会社からの電気でも効果はある。太陽光パネルのような小規模電源と、その小規模電源からの電気や、電力会社からの電気をためておく蓄電池の総体が、「避難所の電化」に必要な分散型電源なのだ。


【プロフィル】石川和男 社会保障経済研究所代表

 いしかわ・かずお 東大工卒、1989年通商産業省(現経済産業省)入省。各般の経済政策、エネルギー政策、産業政策、消費者政策に携わり、2007年退官。11年9月から現職。他に日本介護ベンチャー協会顧問など。福岡県出身。

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