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» 2020年08月25日 08時14分 公開

変貌する電機 2020年代の行方:日立製作所、成長の鍵はIoT基盤「ルマーダ」 (1/2)

大規模な構造改革を経て、姿を変えた電機大手。その成果を検証し、2020年代の戦略を展望する。

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日立製作所 社会課題解決をグローバル展開

 大規模な構造改革を経て、姿を変えた電機大手。その成果を検証し、2020年代の戦略を展望する。(黄金崎元)

エアコンの銅管のろう付け作業を指導するマイスター(左)と訓練生=滋賀県草津市のダイキン工業滋賀製作所

 各社が省エネ性能を競う家庭用ルームエアコン。実は冷媒が流れる銅管のろう付けという地味な作業が品質を左右する。ろう付けが不十分だと冷媒漏れが起こり、冷却機能が低下してしまうのだ。

 火炎バーナーを使う作業の善しあしは一瞬で決まる。母材に対するバーナーの距離や角度、高さなど複数の動作を最適に行うには高度な熟練技術が必要だ。この技術をいかに継承するか。世界最大の空調機器メーカー、ダイキン工業でもかつて課題となっていた。

 その解決に一役買ったのが、日立製作所のIoT(モノのインターネット)基盤「ルマーダ」だった。

 ろう付け作業者は、世界に約2000人いるが、マイスター(熟練技術者)はわずか数人。日立はルマーダの画像解析技術を用い、マイスターの動きや工具の使い方のデータを収集、解析した「ろう付け技能訓練支援システム」を構築した。新人の作業は、どこがマイスターの動きと違うのかが一目で分かるように「見える化」したのだ。

 ダイキンは滋賀製作所(滋賀県草津市)で2017年からこのシステムを導入。かつて新人がラインに入るまで3カ月かかっていたが、今では1カ月半に短縮した。さらに中国や北米などにも順次展開し、世界同一品質を目指している。

ABB事業を買収

 幅広い製品を生産・販売する総合電機メーカーだった日立のビジネスモデルは、この10年で大きく変貌を遂げた。

 現在はIoTやAI(人工知能)を活用し、社会や企業の課題を解決する付加価値の高いサービスを提供するビジネスが主力だ。ダイキンの技能継承のように、製造業のデジタル化を裏方として支援することが増えている。

 成長戦略の柱となるのが、ルマーダのグローバル展開だ。データを蓄積・分析するルマーダは、現場の生産効率向上のほかにも設備の故障予兆診断や需要予測、在庫の適正化などにも活用できる。日立は21年度にルマーダで、18年度比42%増の売上高1兆6000億円を目指している。既に活用事例は1000以上に達したが、国内が多くを占め、海外拡大が成長の鍵となる。

 7月にスイス重電大手ABBから電力変圧器や高圧直流送電(HVDC)システムで世界シェア首位とされる電力システム事業を約7500億円で買収したが、買収目的の一つがABBの顧客基盤を得ることだった。ABBは世界90カ国1万5000社に顧客基盤を持っており、このネットワークを生かし、ルマーダの海外拡大を狙っているのだ。

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