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» 2020年09月04日 08時03分 公開

重油事故、繊維ベンチャーが救う モーリシャスに吸着材提供へネット資金調達

インド洋の島国モーリシャス沖で起きた貨物船の重油流出事故で、繊維ベンチャーのエム・テックスが自社製品の油吸着材を現地に送り、重油回収作業を支援しようと動いている。

[SankeiBiz]
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 インド洋の島国モーリシャス沖で起きた貨物船の重油流出事故で、繊維ベンチャーのエム・テックス(東京都大田区)が自社製品の油吸着材を現地に送り、重油回収作業を支援しようと動いている。多額の費用を賄うため、「クラウドファンディング(CF)」を利用して資金を調達、現地の非政府組織(NGO)と連携し、近く一定量を現地に送るめどが付いた。今回の事故は日本企業が保有する貨物船によるもので、日本の支援の在り方も問われており、支援の輪も広がりつつある。

油を吸着した「マジックファイバー」。水をはじき油分だけを吸い取ることができる(エム・テックス提供)

自衛隊も品質評価

 エム・テックスが現地に送ろうとしているのは、綿のような油吸着材「マジックファイバー」。超極細繊維「ナノファイバー」の特殊な繊維構造によって、水をはじき油分だけを吸い取ることができ、一度吸収した油を垂らさない保持力の高さが特長だ。水を吸わないため、焼却しやすく、回収した吸着材をスムーズに処分できるという。水にも浮く新素材で、わずか20グラムで約1リットルの油を吸着できる性能を持つ。

 昨年8月の豪雨で佐賀県大町町の鉄工所から約5万リットルもの油が流出した事故でも、同社は約19万枚のマジックファイバー(約1億円相当)を無償提供。現地で油回収を手がけた自衛隊からも品質を評価された。

 今回の事故でも、日本政府が8月にモーリシャスに派遣した第2次国際緊急援助隊の国際協力機構(JICA)専門家チームがマジックファイバーを現地に届けたほか、貨物船をチャーターした商船三井も購入。ただ、いずれも少量で本格採用には至っていない。

 関係者によると、現地の重油除去作業は、海面を漂流する帯状の油はほぼ回収されたというが、マングローブや草木に付着した油が再び油膜として漂い、周辺環境や漁業に深刻な影響が出ているという。同社事業企画部の竹ノ下友基部長は「現状は根本的な解決には程遠い。当社製品で貢献したい」としている。

有志中心に第2弾

 同社の試算では、1000トンの重油回収の場合、使用するマジックファイバーは約110万枚、20コンテナ分が必要。だが、1コンテナ当たりの費用は輸送費込みで約3000万円かかり、20コンテナ分だと約6億円と、ベンチャー企業にとっては重い負担だ。このため、同社はマジックファイバーをモーリシャスに提供するためのCFを立ち上げ、8月末までに募集額1000万円を上回る2400万円を集めた。現在、現地NGOと受け入れ方法などを最終調整している。

 さらに、環境保護の動きに賛同した有志らを中心に「モーリシャス緊急救援プロジェクト」と銘打った第2弾のCFもスタート、水資源保全協議会(WRCC)や理研ヘルスケアなども賛同者に名前を連ねている。竹ノ下氏は「日本企業が関わっていることに加え、日本と同じ島国として、ひとごとではないと感じ、行動したい支援者が多い」と話している。

 「モーリシャス緊急救援プロジェクト」はネット上でマジックファイバーを購入し、現地に送る仕組みで、1口550円から参加できる。

【用語解説】モーリシャス沖重油流出事故 インド洋の島国モーリシャス沖で、7月25日夜に日本の貨物船が座礁、8月6日以降、燃料の重油が1000トン以上漏れ出した。サンゴ礁やマングローブ、イルカなど現地の生態系への影響が懸念され、漁業や観光にも深刻な影響が出ている。貨物船は長鋪(ながしき)汽船(岡山県笠岡市)が保有・管理し、商船三井がチャーターしていた。

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